動画概要
憲法解説の人権パート、いよいよラストの回です
この動画では、日本国憲法の人権の章のラストとして、第36条から第40条までを一気に振り返りながら、戦前の反省や現在の判例、そして自民党憲法改正草案との違いまで、じっくり掘り下げていきます。
拷問・残虐な刑罰の禁止、迅速で公正な裁判、自白と黙秘権、遡及処罰の禁止、そして無罪になった人への補償――普段のニュースではあまり丁寧に説明されないけれど、国家権力の暴走を止める「最後のストッパー」になる部分がぎゅっと詰まっています。
ただの条文紹介ではなく、戦前の特高警察や治安維持法の歴史、実際の判例、改憲草案の文言の変化から見える「方向性」まで、ひとつひとつ噛み砕いて話しているので、教科書では味わえないリアルな“憲法の怖さとありがたさ”を感じてもらえると思います。
憲法36条:拷問と残虐な刑罰を「絶対に」禁じた意味
特高警察と治安維持法への反省から生まれた条文
憲法36条は「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」と、わざわざ「絶対に」とまで書き込んだ、かなり強い言い方の条文です。
その背景にあるのが、戦前の特別高等警察、いわゆる特高警察と治安維持法の存在です。
治安維持法のもとで、多くの人が逮捕され、思想や言論が取り締まられ、拷問によって自白が強要され、なかには虐殺にまで至った人たちもいました。
こうした国家権力の横暴への深い反省から、「二度と同じことをさせない」という意思を込めて、36条は作られています。
拷問の禁止はどう具体化されているのか
拷問については、単に憲法で「ダメです」と書いて終わりではありません。
刑法195条では、特別公務員暴行陵虐罪として、公務員が職務の中で暴行や陵虐行為をした場合に処罰する仕組みがあります。
また刑事訴訟法では、319条1項が「拷問などによる自白は証拠とできない」と定めていて、
「たとえ成果(=自白)を得ても、手続の段階で役に立たなくすることで、拷問をしても意味がないようにする」という、間接的な歯止めもかかっています。
「絶対に禁ずる」という憲法の意思が、刑事法制全体に貫かれているわけです。
死刑は「残虐な刑罰」なのか? 永山基準と判例の考え方
「残虐な刑罰」と聞いて、真っ先に思い浮かぶのが死刑制度かもしれません。
この点について、判例は「死刑そのものは憲法36条の『残虐な刑罰』には当たらない」と判断しています。
憲法が制定された時点で、死刑の存在はすでに想定されており、犯罪予防という意味での公共の福祉との関係で必要性が認められる、とされたからです。
そのうえで判例は、「火あぶり・はりつけ・さらし首・釜ゆでの刑」などを、時代や人道的見地からみて残虐な刑罰の代表例として挙げています。
また、どのような場合に死刑を選択できるのかについては、犯行の動機や態様、殺害の残虐性、被害者の人数、遺族の感情、社会的影響、犯人の年齢や前科、犯行後の反省など、さまざまな要素を総合して判断する「永山基準」が有名です。
「3人以上なら死刑」といった単純な話ではなく、あくまで複数の事情をトータルで見ている、という整理もしています。
改憲草案で消えた「絶対」の二文字
自民党の憲法改正草案では、36条は一見同じ内容に見えますが、「絶対に」の言葉が削られています。
元の条文は「絶対にこれを禁ずる」だったのに対し、草案では単に「禁止する」とだけ書かれている状態です。
わざわざ「絶対」を消す必要が本当にあるのか、というところから、動画では
「拷問や残虐な刑罰を、例外付きで認められる余地を残したいのでは?」という疑問も提示しています。
戦前の特高警察の歴史を思い出すと、この「言葉の弱まり」がどれだけ怖い意味を持つか、考えさせられるところです。
憲法37条:公平で迅速な公開裁判と、証人・弁護人に関する権利
公平な裁判所・迅速な裁判・公開裁判という三つの柱
37条1項は、刑事事件の被告人に対して「公平な裁判所の」「迅速な」「公開裁判」を受ける権利を保障しています。
司法権自体は三権分立のもとで独立していますが、それだけで自動的に裁判が公平になるわけではありません。
例えば、裁判官の身内が被害者の事件を担当すれば、冷静さを欠く可能性もあります。
そこで刑事訴訟法は、あまりに公平性を欠きそうな裁判官を外す仕組みを用意していますし、裁判官の身分保障や懲戒の制度も、裁判所法で整えられています。
判例も「構成その他において偏頗の惧れなき裁判所」という言い方で、公平性の中身を説明しています。
「迅速な裁判」は努力目標ではなく、憲法上の権利
「迅速な裁判」と聞くと、自転車ヘルメットの努力義務のような、少し緩いイメージを持ってしまうかもしれません。
ところが、実際には裁判が15年間も放置されてしまった事件をきっかけに、判例はかなり踏み込んだ判断をしました。
37条1項に基づく迅速な裁判を受ける権利は、単なる努力目標ではなく、
裁判があまりにも長期にわたって遅れた結果、被告人の利益が著しく害されるような「異常事態」の場合には、
具体的な立法がなくても、審理を打ち切るという非常救済が憲法上要請される、とまで述べています。
遅れた原因の所在や事件の複雑さ、被告人・社会の不利益などを総合的に見て判断するべきだとし、
わざと裁判を長引かせて打ち切りを狙うような行動は、もちろん許されないという整理もされています。
捜査機関だけでなく、検察側にも裁判を進める積極的な訴訟活動が求められるとした点も、重要なポイントです。
公開裁判と「大逆事件」の教訓
公開裁判は、国民が裁判を監視することで、国による不当な裁判を防ぐ役割があります。
明治期の「大逆事件」では、天皇の殺害を計画したとされた人たちが非公開で裁かれ、短期間のうちに多数が死刑に処されました。
こうした歴史から、現行憲法は82条でも裁判の公開を原則とし、
刑事裁判だけでなく、裁判全般を国民の目にさらしておくことが、権力の暴走防止につながると考えています。
証人審問権:反対尋問と証人請求、公費での証人・弁護人
37条2項は、被告人が「すべての証人に対して審問する機会」と、「公費で自己のために証人を求める権利」を保障しています。
証人も人間なので、記憶違いや思い込み、あるいはあえて重要な事実を伏せることもありえます。
そこで、被告人側から質問してその内容をチェックできる「反対尋問権」が重要になります。
この権利は、伝聞証拠の原則禁止(刑事訴訟法320条1項)という形でも具体化されており、
反対尋問の機会がない供述調書などは、原則として証拠にできない仕組みになっています。
また、証人を呼ぶ費用や弁護人の費用を公費で負担する仕組みも用意されていますが、
有罪になった場合には、証人や弁護人にかかった費用を、あとから被告人に負担させることも認められています。
お金がないから十分な防御ができない、という理不尽を避けつつ、最終的な負担のあり方は別問題として整理されている形です。
弁護人依頼権と国選弁護人の仕組み
37条3項は、刑事被告人の弁護人依頼権を保障し、自分で弁護人を依頼できないときは、国が弁護人を付ける義務を定めています。
34条が「被疑者段階から弁護人に依頼する機会」を保障しているのに対し、
37条3項は「起訴された後の被告人」について、「実際に弁護人が付くこと」まで踏み込んで保障しているのがポイントです。
いわゆる国選弁護人制度は、この条文を土台に、刑事訴訟法でさらに拡張され、被疑者段階でも一定の場合に国選弁護人を付けられるようになっています。
もっとも、「国選だからタダ」というわけではなく、有罪となった場合には費用が請求される可能性があり、
どうしても支払えない場合に限って免除されることもある、という現実的な側面も押さえています。
改憲草案37条の「刑事被告人」から「被告人」への変更
改正草案では、「刑事被告人」が単に「被告人」という表現に変わっています。
一見すると、民事にも広がるのか?と思わせる変更ですが、実務上「被告人」という言葉は刑事事件で使われ、
民事では「被告」という別の用語が用意されています。
そのため、条文の意味が今すぐ大きく変わるわけではありませんが、
わざわざ「刑事」を削る必要もないはずの箇所をあえて変えていることに、どうしても意図を勘ぐってしまうところでもあります。
憲法38条:黙秘権と自白の危険性、自白だけで有罪にできない理由
自己に不利益な供述を強要されない=黙秘権
38条1項は、「自己に不利益な供述を強要されない」として、黙秘権を保障しています。
ここでいう「供述」とは、事実や意見を述べること全般、「自白」は自分の犯罪事実を認める供述のことです。
氏名のような最低限の情報は黙秘権の対象外とされますが、それ以外については「言いたくないことは言わなくていい」という権利が認められています。
もっとも、黙っていることで捜査機関や裁判所の心証を悪くする可能性もあるため、
黙秘するタイミングや範囲については、弁護士と十分相談する必要がある、という現実的な話も出てきます。
強制された自白と、その証拠能力を否定するルール
38条2項は、強制された自白は証拠にしてはいけない、というルールを定めています。
長期の拘禁によって「早く出たいから」と嘘の自白をしてしまう危険性、
捜査側が無理やり自白を引き出そうとすること自体が重大な人権侵害であること――そうした危険を避けるための規定です。
判例では、不当に長い抑留や拘禁があったすべての場合に自白の任意性を否定するのではなく、
その長期拘禁と自白との間に因果関係があるかどうかを重視しています。
因果関係が明らかにないなら証拠として使えるが、その関係があいまいな場合は、被告人保護の観点から証拠能力を否定する、としたものもあります。
また、被疑者をだましたことで心理的強制が生じ、虚偽自白が誘発されるおそれがあるケースでは、任意性に疑いがあるとして証拠能力を認めない一方、
ポリグラフ検査の結果を告げて真実を話すよう促した事案では、任意性を疑う事情はないとして、自白の証拠能力を認めた判例も紹介しています。
自白だけでは有罪にできない――補強証拠の必要性
38条3項は、唯一の証拠が本人の自白だけである場合には、有罪として刑罰を科してはならないと定めています。
戦前は「自白は証拠の王様」とまで言われるほど、自白に依存した運用がされていましたが、
その結果、冤罪が多く生まれてしまったという痛い反省があります。
自白の任意性があったとしても、誰かをかばうなどの理由で嘘の自白が行われることもありうるため、
自白だけで有罪にできる仕組みは、冤罪を増やし、真犯人を取り逃がす危険性が高いと考えられています。
そこで、刑事訴訟法319条2項は、「公判廷における自白であると否とを問わず」補強証拠が必要だと定め、
憲法の趣旨を一歩進める形で、自白に頼りすぎない構造を作っています。
判例の解釈と改憲草案38条の「刑罰を科せられない」削除
判例は、憲法38条3項の「本人の自白」には、公判廷での自白は含まれないと解釈しています。
公判廷での自白は、裁判官の目の前で自由な状態で行われ、表情や態度も含めてチェックできるから、というのが理由です。
この解釈自体には、判決に関わった裁判官の中からも根強い反対意見があり、
「戦前の反省からすれば、公判廷の自白も含めて『自白だけで有罪はダメ』と読むのが自然ではないか」という問題提起もあります。
もっとも、現代では客観的証拠が集まりやすく、自白だけが証拠の事件での起訴自体がほとんど行われないため、
自白判例の多くは昭和20年代のもので、最近はあまり争点にならなくなっている、という現状も説明しています。
そんな中で、改憲草案38条では、3項から「刑罰を科せられない」という文言が消されています。
有罪にできないなら刑罰も科せられないはずなのに、あえてこの言葉だけを外しているところに、
動画では「国防軍審判所」のような司法の外側の仕組みを通じて、
有罪判決なしに実質的な処罰を行う余地を作る狙いがあるのではないか、という危惧を示しています。
治安維持法下の「予防拘禁」の歴史を重ねると、
一度例外の道が作られると、だんだん拡大していくのが国家権力の常だという指摘にも重みが出てきます。
憲法39条:遡及処罰の禁止と一事不再理、「適法」と「違法ではなかった」の差
後出しジャンケンを許さない「遡及処罰の禁止」
39条の前半は、行為時に適法だった行為を、後から犯罪扱いして処罰することを禁じています。
建築基準法が変わったあと、既存の建物が新基準に合わなくなっても「既存不適格」として違法とはされない、という話と根っこは同じです。
「やった時点ではセーフだったもの」を、後出しでアウトにされてしまうと、安心して社会生活が送れなくなります。
その意味で、遡及処罰の禁止は、法の安定性と予測可能性を支える重要なルールです。
一事不再理と再審制度の関係
後半の一事不再理は、同じ犯罪について二度と刑事責任を問われないという原則です。
無罪でも有罪でも、一度確定した判決を、後から「やっぱりもっと重く」と蒸し返すことを許さないことで、
二重の処罰や、国家の気分で何度も裁判にかけるような暴挙を防いでいます。
とはいえ、冤罪の可能性がある場合、そのまま放置してよいはずもありません。
そこで刑事訴訟法は、435条などで再審請求の制度を用意し、
証拠の偽造が判明した場合などには、有罪判決を見直せるようにしています。
憲法39条は「重ねて刑事上の責任を問われない」としているので、
刑が軽くなる方向のやり直し(再審)は、むしろ条文の趣旨にかなう救済だ、という整理になります。
「適法であった」と「違法ではなかった」――言葉のニュアンスの違い
改憲草案39条では、「実行の時に適法であった行為」が「違法ではなかった行為」に変えられています。
一見、意味はあまり変わらないように見えますが、
「適法」は「法にかなっている」「ちゃんとルールを守っている」といった、国が背中を押してくれるようなニュアンスを含みます。
一方、「違法ではなかった」は、合法だけでなく「脱法」のようなグレーゾーンも含み込む表現です。
ルールを守る意思はないけれど、ギリギリ違法にはならないやり方――そういったものまでひとまとめにしてしまう言い方でもあります。
責任を問われない範囲が広がるようにも見える反面、
「これは適法だ」と国がお墨付きを与えたくない、という意思も透けて見える表現です。
動画では、この文言の変化から、「国民に安心感を与えないようにしたいのではないか」という、少し意地悪な見方も紹介しています。
他の条文の改変と並べて見ていくと、国民よりも国家を優先しようとする一貫した姿勢が浮かび上がってくるように感じられます。
憲法40条:無罪になった人への刑事補償と、その現実
身体拘束と失われた時間への「補償」
40条は、身体拘束を受けたあと裁判で無罪になった人が、国に対して補償を請求できると定めています。
長期間拘束されれば、仕事を失うかもしれないし、社会的信用や人間関係にも大きな傷が残ります。
完全に元通りにすることは不可能ですが、せめて金銭的な形で償おう、というのがこの条文の狙いです。
その具体的な内容は刑事補償法で定められており、
たとえば身体拘束1日あたりの補償額には上限があり、最大でも一日12,500円ほどとされています。
「仕事をしていたらもっと稼げる」「そもそも仕事自体を失っているかもしれない」と考えると、かなり低い印象は否めません。
補償と賠償の違い、国家賠償請求のハードル
ここで大事なのが、「補償」と「賠償」の違いです。
補償は「適法な行為によって生じた損害」を埋め合わせるもので、
賠償は「故意や過失による不法行為」によって生じた損害を埋め合わせるものです。
刑事補償は前者にあたり、「国が悪いことをしたから払う」という性格ではないため、金額も抑えめになっています。
一方、国家賠償請求は、憲法17条などを根拠に、国の違法行為を前提に損害賠償を求めるものです。
刑事補償を受けても、国家賠償請求をすること自体は妨げられませんが、補償と賠償の二重取りはできないようになっています。
さらに、賠償請求を通すためには、故意・過失などをこちら側で立証しなければならず、
訴訟費用や弁護士費用、証拠収集のコストも含めると、とてつもない手間とお金がかかります。
そこまでしても、認められた賠償額は決して高くないケースが多く、「やるせなさ」を感じざるをえない現実もあります。
改憲草案40条の「書き方の温度差」
改憲草案40条は、意味の上では現行とほぼ変わりませんが、表現が
「無罪の裁判を受けた者は」から「裁判の結果無罪となった者は」に変わっています。
前者は、無罪判決を受けた人の視点に寄り添うような書き方ですが、
後者は「結果的に無罪になったんだから、まあ仕方ないよね」という、少し他人事のようなニュアンスも感じられます。
言葉の受け止め方は人それぞれですが、「国家側の言い訳」にも聞こえるこの表現は、
他の条文の改変と並べてみると、やはり気になるポイントとして浮かび上がってきます。
まとめ:人権の章のラストから見えてくる、国家と個人のせめぎ合い
36条から40条までを通して見えてくるのは、「国家がどこまで人を罰してよいのか」という限界を、一生懸命定義しようとしている姿です。
拷問や残虐な刑罰を「絶対に」禁じること。
裁判を公平・迅速・公開の場に保つこと。
自白に頼りすぎず、黙秘権を認め、自白だけで有罪にしないこと。
後出しで犯罪を作ったり、同じ犯罪で何度も裁いたりしないこと。
そして、無罪になった人に対しては、完璧でなくとも補償の道を開いておくこと。
これらはすべて、国家権力が「やりすぎない」ためのストッパーであり、
戦前の特高警察や治安維持法のような暴走を二度と繰り返さないための仕掛けです。
一方で、改憲草案を細かく見ていくと、
「絶対」という言葉を消したり、「適法」を「違法ではなかった」と言い換えたり、
「刑罰を科せられない」という強力な一文を削ったりと、
国民側に安心感を与える表現を弱めたり消したりしている部分が目立ちます。
国防軍審判所のような、司法の外側にある仕組みと組み合わせれば、
有罪判決なしに実質的な処罰が可能になる余地が生まれるのではないか――そんな不安も、現実味を持ってしまいます。
人権の章のラストにあたるこれらの条文は、普段の生活では意識する機会が少ないかもしれません。
しかし、いざ自分や身近な人が捜査や裁判の当事者になったとき、
「どこまでが国に許されていて、どこからがやりすぎなのか」を判断する最後のよりどころになります。
この動画では、単に条文の意味を解説するだけでなく、判例・歴史・改憲草案を行ったり来たりしながら、
国家と個人のせめぎ合い、そのバランスがどの方向へ傾こうとしているのかを、一緒に考えていきます。
人権の章はこれで一区切りですが、ここから先は、国会や内閣、司法など「権力の側」の章へと進んでいきます。
人権パートで見えてきた「国家の本音」が、制度の側ではどう表れているのか。
続きが気になる方は、ぜひ次の回もあわせて見てみてください。
動画テキスト
| キャラクター | セリフ |
| ゆっくり魔理沙 | さあ、いよいよ人権のところは今回でラストにしよう。 |
| ゆっくり霊夢 | あと5条だね。 |
| ゆっくり霊夢 | 張り切ってこー。 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法36条は、『公務員による拷問及び残虐な刑罰は、
絶対にこれを禁ずる』となっている。 |
| ゆっくり霊夢 | 公務員をご指名? |
| ゆっくり霊夢 | ということは、公務員じゃなかったらやってもいい
ということなの? |
| ゆっくり魔理沙 | そんなわけないだろ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 一般人がやれば刑法によって処罰されることになる。 |
| ゆっくり魔理沙 | 公務員が指名されているのは国の立場の人間だからだな。 |
| ゆっくり魔理沙 | 戦前、特高警察などによる拷問、それによる自白などが
強要されてきた。 |
| ゆっくり魔理沙 | 特高警察とは、略さずいうと、特別高等警察で、 |
| ゆっくり魔理沙 | 『国家組織の根本を危うくする行為を除去するための
警察作用』と定義されるらしいが、 |
| ゆっくり魔理沙 | 要するに、国に反する思想や言論などを取り締まるための
警察組織だ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 特高警察は、治安維持法をもとに、多くの人を逮捕
したんだけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | 中には拷問を受けたり、虐殺されたりした人もいたみたい
なんだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | そういった国家権力の横暴への反省から、
36条が生まれたと考えられる。 |
| ゆっくり霊夢 | だからこそ『絶対にこれを禁ずる』っていう強い表現に
なっているんだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | そういうことだろうな。 |
| ゆっくり魔理沙 | 『拷問』については、刑法195条において
特別公務員暴行陵虐罪として刑罰を科すことで、 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法36条の意図が
ストレートに表れているし、 |
| ゆっくり魔理沙 | 刑事訴訟法においては319条1項で拷問などに
より得られた自白は証拠とできないとして、 |
| ゆっくり魔理沙 | 成果を無駄にさせることで手続面から
間接的に36条の意図が実現されている。 |
| ゆっくり霊夢 | 憲法だけじゃなくて、法律でも防ごうなんて、
『絶対にこれを禁ずる』という強い意思を感じるね。 |
| ゆっくり霊夢 | じゃあ『残虐な刑罰』のほうは? |
| ゆっくり霊夢 | というか、そもそも『残虐な刑罰』ってどんな刑罰? |
| ゆっくり霊夢 | 日本には死刑があるよね? |
| ゆっくり霊夢 | 死刑は残虐な刑罰じゃないの? |
| ゆっくり魔理沙 | その点は今なお議論され続けている難しい問題だけど、
判例では死刑は『残虐な刑罰』ではないとされている。 |
| ゆっくり魔理沙 | 昭和23年の大法廷判決では、憲法が刑罰としての
死刑があるのを想定しており、 |
| ゆっくり魔理沙 | 死刑に犯罪予防の役割があり、公共の福祉として
必要性を承認されているとして、 |
| ゆっくり魔理沙 | 死刑そのものが直ちに『残虐な刑罰』に該当するとは
考えられないとした。 |
| ゆっくり霊夢 | 死刑で残虐じゃないとなったら、
何だったら残虐なのよ? |
| ゆっくり魔理沙 | そのやり方だな。 |
| ゆっくり魔理沙 | この判例では続けて、 |
| ゆっくり魔理沙 | 死刑に限らず、執行の方法がその時代と環境において、
人道的見地から一般に残虐性があるとされれば、 |
| ゆっくり魔理沙 | 残虐な刑罰になると言っている。 |
| ゆっくり霊夢 | なんか難しいこと言ってるなあ。 |
| ゆっくり魔理沙 | この判例では、残虐な刑罰の例を挙げてくれていて、 |
| ゆっくり魔理沙 | 火あぶり、はりつけ、さらし首、釜ゆでの刑
は残虐な刑罰に当たると言っている。 |
| ゆっくり霊夢 | まあ、確かにどれも残虐そうではあるけれども。 |
| ゆっくり霊夢 | そういえば、日本は今死刑はどうやってるの? |
| ゆっくり魔理沙 | 絞首刑だな。 |
| ゆっくり霊夢 | うえっ。私からすれば十分残虐そうだけど。 |
| ゆっくり魔理沙 | そう思うよな。 |
| ゆっくり魔理沙 | だから、当然のように絞首刑が残虐な刑罰かどうかに
言及する判例もある。 |
| ゆっくり魔理沙 | この判例ではさっきの判例の話を持ち出したうえで、 |
| ゆっくり魔理沙 | 世界の処刑のやり方と絞首刑を比べて、 |
| ゆっくり魔理沙 | 絞首刑が特別に残虐であるとする理由が見当たらない
から憲法36条に違反しないとする、 |
| ゆっくり魔理沙 | 割とあっさりした感じで絞首刑は合憲だとされている。 |
| ゆっくり霊夢 | 他と比べて特別に残虐といえる理由がいるのか。 |
| ゆっくり霊夢 | 絞首刑自体では考えないの? |
| ゆっくり魔理沙 | 判例の基本スタンスはさっきも言った通り、 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法は死刑の存在を想定していると考えているわけ
だから、 |
| ゆっくり魔理沙 | 命を奪うことそれ自体には残虐性のカウントは
動かないわけで、 |
| ゆっくり魔理沙 | 特別な残虐性がないと
残虐な刑罰と認めないのは当然の結論といえるな。 |
| ゆっくり霊夢 | 特別な残虐性って一体なんなの? |
| ゆっくり魔理沙 | ちなみに、どういった場合に死刑を適用するのかという
基準に言及した判例もあるぜ。 |
| ゆっくり霊夢 | どういう基準なの? |
| ゆっくり魔理沙 | 『犯行の罪質、動機、態様ことに殺害の手段方法の
執拗性・残虐性、 |
| ゆっくり魔理沙 | 結果の重大性ことに殺害された被害者の数、
遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、 |
| ゆっくり魔理沙 | 犯行後の情状等各般の情状を併せ考察したとき、
その罪責が誠に重大であつて、罪刑の均衡の見地からも |
| ゆっくり魔理沙 | 一般予防の見地からも極刑がやむをえないと認められる
場合には、死刑の選択も許される』といったものだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | これは、被告の名を借りて『永山基準』と呼ばれる
有名な基準となっている。 |
| ゆっくり霊夢 | なんか何人の命を奪ったかで死刑になるかどうかが
分かれるって聞いたことあるけど? |
| ゆっくり魔理沙 | 確かに、20歳以上の場合は、
被害者1人では死刑まではいかず、 |
| ゆっくり魔理沙 | 3人以上なら死刑、2人だと死刑になるかどうかの
分かれ目になるなんて言われることが多いな。 |
| ゆっくり魔理沙 | また、実際にそういう目安を元に判決が積み重ねられ、
そういう相場観がつくられたとも言われている。 |
| ゆっくり魔理沙 | ただ、被害者が1人の場合だって死刑になった例も
いくつかあるし、 |
| ゆっくり魔理沙 | 3人以上でも心神耗弱などを理由に死刑にならなかった
例もある。 |
| ゆっくり魔理沙 | 被害者の数以外の要素も考えるんだから、霊夢がいうのも
『絶対そう』と言い切れるものじゃない。 |
| ゆっくり霊夢 | そりゃそうだよね。 |
| ゆっくり魔理沙 | 参考に、法務省の資料によると、 |
| ゆっくり魔理沙 | 死刑制度を廃止すべきか残すべきかの根拠は
このようになっている。 |
| ゆっくり霊夢 | みんな色んなこと考えてるんだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | そうだな。 |
| ゆっくり魔理沙 | ただ、ざっくりまとめると、 |
| ゆっくり魔理沙 | 被害者感情VS犯人の人権の構図のそれぞれに
公共の福祉が乗っかってくる感じになっていると思う。 |
| ゆっくり魔理沙 | マネも学生時代にゼミで
このテーマで議論をしたことがあるらしいぜ。 |
| マネ | 終わりが見えない議論だったあ。 |
| ゆっくり霊夢 | 犯罪者を更生しようとするのも、再犯防止のために
刑を残した方がいいとするのも、 |
| ゆっくり霊夢 | どっちも公共の福祉と考えることができるわけか。 |
| ゆっくり魔理沙 | どっちの言い分も一理ある部分があるし、
どっちが正しいかという問題でもない。 |
| ゆっくり霊夢 | 簡単に答えを出せる問題じゃないもんね。 |
| ゆっくり魔理沙 | 一応、日本の世論的には、残す方が多いとは
言われているな。 |
| ゆっくり霊夢 | どうなるんだろう? |
| ゆっくり魔理沙 | それはそれとして、憲法改正草案では36条がどうなったか
見てみよう。 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法改正草案36条では、 |
| ゆっくり魔理沙 | 『公務員による拷問及び残虐な刑罰は、禁止する。』 |
| ゆっくり魔理沙 | となっている。 |
| ゆっくり霊夢 | どこか変わった? |
| ゆっくり霊夢 | 今の憲法36条と見比べると、 |
| ゆっくり霊夢 | あ、『絶対』が抜けてる。 |
| ゆっくり霊夢 | これは絶対意図的だよね? |
| ゆっくり魔理沙 | そうだな。 |
| ゆっくり魔理沙 | 何か狙いがないと、わざわざ抜いたりはしないだろうな。 |
| ゆっくり霊夢 | ということは、 |
| ゆっくり霊夢 | 拷問や残虐な刑罰が認められる可能性があるってこと? |
| ゆっくり魔理沙 | さすがに、それが狙いであると考えざるをえないな。 |
| ゆっくり霊夢 | 怖いよお。 |
| ゆっくり魔理沙 | 今までの憲法改正草案の内容を考えると、 |
| ゆっくり魔理沙 | 国に反する意見を発したりしようものなら、 |
| ゆっくり魔理沙 | 拷問で無理やりいうことを聞かせる、 |
| ゆっくり魔理沙 | なんて可能性もあるだろうな。 |
| ゆっくり魔理沙 | 特高警察の復活もありえない話じゃない。 |
| ゆっくり霊夢 | えげつないな。 |
| ゆっくり魔理沙 | というところで、37条に進もう。 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法37条1項は、 |
| ゆっくり魔理沙 | 『すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の
迅速な公開裁判を受ける権利を有する。』 |
| ゆっくり魔理沙 | となっている。 |
| ゆっくり霊夢 | また裁判を受ける権利? |
| ゆっくり魔理沙 | 確かに、32条が裁判を受ける権利について
定められていたな。 |
| ゆっくり魔理沙 | 36条では、一歩進んで、刑事被告人になった場合の裁判で
裁判のやり方についてまで踏み込んだ権利になっている。 |
| ゆっくり魔理沙 | ポイントは、 |
| ゆっくり魔理沙 | 『公平な裁判所』であること。 |
| ゆっくり魔理沙 | 『迅速な』裁判が受けられること。 |
| ゆっくり魔理沙 | 『公開裁判』であること、だ。 |
| ゆっくり霊夢 | 公平じゃない裁判所があるっていうの? |
| ゆっくり魔理沙 | また後々説明することになると思うが、裁判を行う権限、
つまり司法権は、 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法による制度上、法律を作る立法権や政治を行う行政権
とは独立したものとなっている。 |
| ゆっくり霊夢 | じゃあ、わざわざここで条文にした意味は? |
| ゆっくり魔理沙 | 例えば、司法権自体は独立していても、裁判を行う裁判官
が公平を欠くかもしれない。 |
| ゆっくり霊夢 | そんなことある? |
| ゆっくり魔理沙 | 例えば、裁判官の身内が被害者になっている事件の裁判を
担当することになったらどうだ? |
| ゆっくり霊夢 | ああ、ちょっと冷静な判断ができなくなるかも? |
| ゆっくり魔理沙 | だから、刑事訴訟法では、そういった公平な裁判が
できなさそうな裁判官を外せる定めがある。 |
| ゆっくり魔理沙 | もちろん、裁判を遅れさせるためにわざと外そうと
する動きをしたらダメだぜ。 |
| ゆっくり霊夢 | よくできてるなあ。 |
| ゆっくり魔理沙 | それに、裁判の内容次第で給料が減らされたりなんか
したらまともにやってられないので、 |
| ゆっくり魔理沙 | 裁判所法では、裁判官の身分を保障していたり、
真面目にやらない者を懲戒する制度もある。 |
| ゆっくり霊夢 | なるほど、裁判官個人も公平を保てるように仕組みが
作られているわけだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | ちなみに判例でも、公平な裁判所の裁判というのは、
『構成其他において偏頗の惧なき裁判所の裁判』 |
| ゆっくり魔理沙 | を意味していると言っている。 |
| ゆっくり霊夢 | ど、どういう意味? |
| ゆっくり魔理沙 | 裁判官の立場や考え方、裁判所の構成に偏りやえこ贔屓の
心配がない裁判所で裁かれるべきってことだ。 |
| ゆっくり霊夢 | そっか。 |
| ゆっくり魔理沙 | だから、裁判所のミスで被告人に不利な裁判になったから
といっても公平なる裁判所でないとはいえないし、 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法37条1項違反をいうためには、 |
| ゆっくり魔理沙 | 『構成其他において偏頗の惧なき裁判所の裁判』
でないことを被告人が主張、立証しなければならない。 |
| ゆっくり霊夢 | まあミスがあったかどうかと、
公平かどうかは関係ないしね。 |
| ゆっくり魔理沙 | 次は、迅速な裁判について。 |
| ゆっくり霊夢 | 迅速っつったってもちろん限度があるでしょうよ。 |
| ゆっくり霊夢 | 逮捕した次の日に裁判ができるわけじゃないだろうし。 |
| ゆっくり魔理沙 | その通り。 |
| ゆっくり魔理沙 | それに、事件ごとにどれくらいの時間がかかるかって
いうのはもちろん違う。 |
| ゆっくり魔理沙 | だから、どれくらいの時間がかかれば迅速性がないと
されるかは、事件ごとに考えるしかない。 |
| ゆっくり霊夢 | じゃあ、この迅速の部分は自転車ヘルメットの努力義務
みたいなもの? |
| ゆっくり魔理沙 | お前それ好きだな。 |
| ゆっくり魔理沙 | だが残念。 |
| ゆっくり魔理沙 | 実はそうじゃない。 |
| ゆっくり魔理沙 | 世の中は不思議なもので、実は裁判が15年も放置された
事件がある。 |
| ゆっくり霊夢 | 15年? |
| ゆっくり霊夢 | さすがにそこまでになるものがあるとは思ってなかった
けど、それは迅速じゃないってなったの? |
| ゆっくり魔理沙 | 結論からいうとそうだな。 |
| ゆっくり魔理沙 | この事件の判例では、裁判の迅速性についてかなり
踏み込んで判断している。 |
| ゆっくり魔理沙 | まず、37条1項の保障する迅速な裁判を受ける権利は、
基本的な人権の1つであり、 |
| ゆっくり魔理沙 | 霊夢のいうような自転車ヘルメットの努力義務のような
話ではなく、 |
| ゆっくり魔理沙 | 明らかに裁判が遅い場合は、例えこれに対処する
具体的な法律がなくても、 |
| ゆっくり魔理沙 | 被告人に対する手続きを続けることを許さず、審理を
打ち切るという非常救済手段がとられるべきことも |
| ゆっくり魔理沙 | 認めている規定であるとした。 |
| ゆっくり霊夢 | ほう。 |
| ゆっくり霊夢 | 遅すぎると打ち切りになるのか。 |
| ゆっくり魔理沙 | そして、裁判が遅すぎると、被告人は有罪無罪が未定の
まま放置され、社会的不利益を受けることになるし、 |
| ゆっくり魔理沙 | また、被告人や証人の記憶をはじめ、いろんな証拠が
微妙になっていき、 |
| ゆっくり魔理沙 | 真相を明らかにすることが難しくなってくる。 |
| ゆっくり霊夢 | そりゃそうだろうね。 |
| ゆっくり魔理沙 | ただ、『迅速な裁判』はさっきも言ったように、
具体的な事件ごとにかかる時間は違うから、 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法37条1項を活かすためには、関係する立法によって、
問題解決しようとするのが望ましいとした。 |
| ゆっくり霊夢 | まあ、『迅速な裁判』だけじゃあいまいすぎるしね。 |
| ゆっくり魔理沙 | とはいっても、法律がないといっても、迅速な裁判に
反する異常な事態が起きたときは、 |
| ゆっくり魔理沙 | 法律がないことを理由に救済できないとするのは、
37項の趣旨に沿わない。 |
| ゆっくり霊夢 | それくらい重要な権利だと考えてるってことか。 |
| ゆっくり魔理沙 | なので、 |
| ゆっくり魔理沙 | ものすごく裁判が遅れた結果、迅速な裁判を定めたこと
で憲法が守ろうとした被告人の利益が、 |
| ゆっくり魔理沙 | 著しく害されると認められる異常な事態が
起こった場合は、 |
| ゆっくり魔理沙 | 被告人や社会の不利益が増大する上に
真相の発見も難しくなって、 |
| ゆっくり魔理沙 | 裁判を進めることが適切ではないから、
手続をこの段階において打ち切る、 |
| ゆっくり魔理沙 | という非常の救済手段を使うことが憲法上要請される
べきと考えられるとした。 |
| ゆっくり霊夢 | まあ15年はいくらなんでも長すぎるしね。 |
| ゆっくり霊夢 | だって生まれたばかりの赤ちゃんが中学校を卒業しちゃう
くらいの時間だよ? |
| ゆっくり魔理沙 | それはそうなんだけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | この判例では時間の長さだけを
問題としているわけじゃない。 |
| ゆっくり魔理沙 | 迅速な裁判じゃない、となるかどうかは、 |
| ゆっくり魔理沙 | 裁判が遅れた原因などを考えて、
遅れることがやむを得ないかどうか、 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法が守ろうとしている利益がどれくらい害させるか
などを総合的に判断して決められなければならないとした。 |
| ゆっくり魔理沙 | だから、 |
| ゆっくり魔理沙 | 事件が複雑で裁判が長引いた場合は迅速性に反しないし、 |
| ゆっくり魔理沙 | 遅れた原因が被告人側にあった場合には、迅速な裁判を
受ける権利を自ら放棄したといえるので、 |
| ゆっくり魔理沙 | 時間がめちゃくちゃかかろうと、迅速性に反しない。 |
| ゆっくり霊夢 | そりゃそうだよね。 |
| ゆっくり霊夢 | わざと裁判を長引かせて打ち切りになるなら、
そういうやつがいっぱい出てきちゃうもんね。 |
| ゆっくり魔理沙 | あと、裁判がはじまった以上は、被告人だけじゃなく |
| ゆっくり魔理沙 | 検察官側も積極的な訴訟活動が
要請されるとも言っている。 |
| ゆっくり霊夢 | どゆこと? |
| ゆっくり魔理沙 | つまり、どっち側も裁判を進めるように行動することが
求められるってことよ。 |
| ゆっくり魔理沙 | だから、検察官側が積極的に訴訟手続を進める行動を
とれていない場合に、 |
| ゆっくり魔理沙 | 被告人側が積極的にそういう行動をとらないことだけを
挙げて、 |
| ゆっくり魔理沙 | 被告人が迅速な裁判を受ける権利を放棄したと推定
することは許されないとしたんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | お互いに裁判を積極的に進める
行動をとる必要があるから、 |
| ゆっくり霊夢 | 被告人がそうしないだけで権利放棄したと考えるな
ってことか。 |
| ゆっくり魔理沙 | 裁判が遅れる原因が、被告人側だけに
あるわけじゃないからな。 |
| ゆっくり魔理沙 | で、公開裁判であることについては、 |
| ゆっくり魔理沙 | 国民が裁判を監視することで、国による不当な裁判を
防ぐためのものだな。 |
| ゆっくり霊夢 | なんかわからないけど有罪になってるって、他人事じゃ
ないもんね。 |
| ゆっくり魔理沙 | 実際、明治43年に天皇の殺害を計画したとされた人たち
が非公開で裁判されて大逆罪により死刑判決が下った |
| ゆっくり魔理沙 | 『大逆事件』というものもあったくらいだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | この事件は、判決後1週間のうちに
12名の刑が執行されていたらしい。 |
| ゆっくり霊夢 | ええ。 |
| ゆっくり魔理沙 | そもそも、刑事に限らず、裁判は憲法82条によって、
公開で行うことになっている。 |
| ゆっくり魔理沙 | だから、基本的に裁判は傍聴できる。 |
| ゆっくり霊夢 | ニュースでよく絵になってるやつね。 |
| ゆっくり魔理沙 | 公開裁判については、82条のときにまた話そうかな。 |
| ゆっくり魔理沙 | 続いて、憲法37条2項。 |
| ゆっくり魔理沙 | 『刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を
充分に与へられ、 |
| ゆっくり魔理沙 | 又、公費で自己のために強制的手続により
証人を求める権利を有する。』 |
| ゆっくり魔理沙 | と定められている。 |
| ゆっくり魔理沙 | 証人は、嘘の証言をしたら偽証罪になってしまうから、
基本的に正しい証言をしようとするはずだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | しかし、証人の記憶違いや思い込みなどにより、嘘で
なくとも間違った証言をしてしまう可能性があるし、 |
| ゆっくり魔理沙 | 嘘を言うことはなくとも、あえて大事なことを伏せて
証言するかもしれない。 |
| ゆっくり魔理沙 | だから、被告人には、そういう間違いなどがないか
チェックするために質問する権利があるとしている。 |
| ゆっくり魔理沙 | これを反対尋問権と呼んだりする。 |
| ゆっくり霊夢 | ツッコミを入れる権利ね。 |
| ゆっくり魔理沙 | 軽いなあ。 |
| ゆっくり魔理沙 | また、被告人は自分のために証人を強制的に呼び出す
ことができる権利があるとしている。 |
| ゆっくり魔理沙 | これを証人請求権と呼んだりする。 |
| ゆっくり霊夢 | 呼び出せるんだあ。 |
| ゆっくり魔理沙 | そして、これらの権利を合わせて証人審問権と呼ぶことも
あるみたいだな。 |
| ゆっくり霊夢 | これも、被告人の利益を守るためのものだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | その通り。 |
| ゆっくり魔理沙 | 反対尋問権については、 |
| ゆっくり魔理沙 | これを受けて刑事訴訟法320条1項で、 |
| ゆっくり魔理沙 | 裁判外での供述内容を記載した書面を原則証拠にできない
とするいわゆる伝聞証拠の禁止にあらわれている。 |
| ゆっくり霊夢 | 尋問ができない証言は証拠に
できないことになってるんだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | そして、証人請求権についてだけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | いくら憲法で保障されている権利とはいえ、誰もかれも
呼び放題ってわけではない。 |
| ゆっくり魔理沙 | 判例では、被告人側が申請する
証人すべてを呼ぶ必要はなく、 |
| ゆっくり魔理沙 | 裁判所が必要と判断した証人だけ
呼べば足りるとしている。 |
| ゆっくり霊夢 | 無駄に証人多すぎると裁判も大変になるだろうけど、
無駄に呼ばれる証人のほうも大変だしね。 |
| ゆっくり魔理沙 | また、証人は公費で呼べるとしてるけども、 |
| ゆっくり魔理沙 | それは、お金がないから証人が呼べないっていうのは、
被告人の防御の機会をなくしてしまうからであるから、 |
| ゆっくり魔理沙 | 有罪判決を受けた後にこの費用を負担させるのは
憲法違反にならない、 |
| ゆっくり魔理沙 | とするのが判例だ。 |
| ゆっくり霊夢 | とりあえずは国で出すけど、
最終的に国が負担する、とまでは言ってないってか。 |
| ゆっくり魔理沙 | ちなみに、判例が言っている内容にあたる条文は、 |
| ゆっくり魔理沙 | 刑事訴訟法181条1項と刑事訴訟費用等に関する法律
2条1号だ。 |
| ゆっくり魔理沙 | ぜひ参考にしてほしい。 |
| ゆっくり霊夢 | なんの参考にするのよ? |
| ゆっくり魔理沙 | じゃあ憲法に戻って、
続きの37条3項。 |
| ゆっくり魔理沙 | 刑事被告人の弁護人依頼権を定める条文になっている。 |
| ゆっくり霊夢 | また弁護人? |
| ゆっくり霊夢 | 確か34条でも弁護人の話出てなかった? |
| ゆっくり魔理沙 | その通り。 |
| ゆっくり魔理沙 | よく覚えてたな。 |
| ゆっくり魔理沙 | ただ、34条のほうは被疑者段階からの、つまり起訴される
前からの弁護人依頼権を保障しているのに対し、 |
| ゆっくり魔理沙 | 37条3項は主語は『刑事被告人』になっており、起訴され
た後の弁護士依頼権について保障している。 |
| ゆっくり霊夢 | なるほどね。 |
| ゆっくり霊夢 | 段階の違いみたいなのはわかったけど、 |
| ゆっくり霊夢 | 34条の保障は刑事被告人だって入ってくるでしょ? |
| ゆっくり霊夢 | だったら37条3項は必要ない気がするんだけどなあ。 |
| ゆっくり魔理沙 | それぞれ条文をみると、
保障内容の厚さも違うだろ? |
| ゆっくり魔理沙 | 34条は前の動画でもいったけど、判例で弁護人に
依頼する機会までが保障の範囲になる。 |
| ゆっくり魔理沙 | それに対して、 |
| ゆっくり魔理沙 | 37条3項では、被告人が自ら依頼できないときは国に
弁護人を付けさせる義務まで定めているんだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | つまり、34条は弁護人をつけるチャンスを保障し、
37条3項では弁護人をつけることを保障している、 |
| ゆっくり魔理沙 | と考えてもらうとわかりやすいかな。 |
| ゆっくり霊夢 | お金がないから自分を守れないっていう理不尽が
起こらないようにしてるんだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | 弁護士がつけられないと、公正な裁判を行うことが
難しいからな。 |
| ゆっくり魔理沙 | 公正な裁判じゃないとなると、国が一方的に人権侵害、
つまり刑罰を科すととらえかねられない。 |
| ゆっくり魔理沙 | 弁護士を付けさせる義務というのは、ある意味、国の
人権侵害を正当なものとするため、 |
| ゆっくり魔理沙 | つまり国のためにもなっている義務なのかもしれないな。 |
| ゆっくり霊夢 | なんにせよ、お金がなくても弁護士つけてくれるのは
助かるなあ。 |
| ゆっくり魔理沙 | この制度は、『国選弁護人』とよく言われる。 |
| ゆっくり魔理沙 | 国選弁護人は、弁護士の中から希望した者で、
条件をクリアした者が国選弁護人名簿に登録される。 |
| ゆっくり魔理沙 | そして、国選弁護人が必要になったら、基本的には
国選弁護人名簿から順番で自動的に選ばれる。 |
| ゆっくり魔理沙 | ただ、注意したいのは、憲法の条文からは勝手に国が
弁護士をつけてくれるように読めるけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | 実際には、必要的弁護事件と呼ばれる場合とか、その他
裁判所側が職権で弁護人をつけられる状況じゃない限り、 |
| ゆっくり魔理沙 | 被告人が『国選弁護人をつけてくれ』と明確な意思表示
をしないとつかないから注意してくれよな。 |
| ゆっくり霊夢 | そんな注意が活きる場面に直面することがないことを
祈りたいけども。 |
| ゆっくり魔理沙 | ちなみに、刑事訴訟法においては憲法の精神を
一歩進めて、 |
| ゆっくり魔理沙 | 被疑者にも国選弁護人をつけることが
できるようになっている。 |
| ゆっくり霊夢 | じゃあお金がなくても被疑者段階から被告人段階まで
弁護士をつけることができるわけだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | ただ、国選弁護士が国の費用でつけられるからって、
まったく払わなくていいというと、そうじゃない。 |
| ゆっくり魔理沙 | 有罪になれば、証人と同じように後から請求される
可能性はもちろんあるぜ。 |
| ゆっくり魔理沙 | とはいっても、払うお金がどうしてもないなら、
免除してもらうこともできるけどな。 |
| ゆっくり魔理沙 | もちろん、証人の分も同じだ。 |
| ゆっくり霊夢 | ない袖は振れないもんね。 |
| ゆっくり霊夢 | それにしても証人のところで言わないのは性格悪いよ。 |
| ゆっくり魔理沙 | それほどでもお。 |
| ゆっくり霊夢 | 褒めてない。 |
| ゆっくり魔理沙 | じゃあ、憲法改正草案で37条がどうなってるか
みてみよう。 |
| ゆっくり魔理沙 | 条文はこんな感じ。 |
| ゆっくり霊夢 | あれ?全然変わってない? |
| ゆっくり魔理沙 | 基本的には、漢字をなおしたくらいなんだけなんだけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | ちょっと気になるのが、 |
| ゆっくり魔理沙 | 現憲法で『刑事被告人』となっているところが
『被告人』になっているところだ。 |
| ゆっくり霊夢 | と、いうことは、刑事事件だけじゃなくて民事事件も
関係してくる? |
| ゆっくり魔理沙 | いや、定義が明確に法律で示されているわけでは
ないものの、 |
| ゆっくり魔理沙 | 刑事訴訟法では『被告人』という言葉自体が『刑事事件に
おいて公訴された人』という意味で使われいる。 |
| ゆっくり魔理沙 | 一方、民事事件の場合『被告』という言葉が民事訴訟法
においても使われているので、 |
| ゆっくり魔理沙 | 『被告人』から『刑事』が抜けたからといって、
条文の意味合いが変わるものじゃない。 |
| ゆっくり霊夢 | だったらよくない? |
| ゆっくり魔理沙 | 明確にこんなデメリットがありそう、といえるわけ
じゃないんだけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | 別にわざわざ『刑事』を抜く必要性もないんだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | だから、何か狙いがあるんじゃないか、とどうしても
勘ぐってしまうんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | それは魔理沙が変に考えすぎじゃない? |
| ゆっくり魔理沙 | だといいんだけど。 |
| ゆっくり魔理沙 | では、憲法38条に進もう。 |
| ゆっくり魔理沙 | 38条は、供述や自白について定められている。 |
| ゆっくり魔理沙 | そして、1項では『自己に不利益な供述を強要されない』
とされている。 |
| ゆっくり魔理沙 | まず、言葉の整理をしておきたいんだけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | 『供述』とは、警察官や検察官、裁判官などに
事実や意見を述べることをいう。 |
| ゆっくり魔理沙 | そして『自白』は自分の犯罪事実を認める供述のことを
いうんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | 自白は供述の一部なんだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | で、1項の話なんだけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | 自分に不利になるような供述を強要されない、つまり
『黙秘権』を保障しているんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | 言いたくないことは言わなくていいんだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | ただ、氏名なんかは黙秘権の対象外だからな。 |
| ゆっくり魔理沙 | 特別の理由もないのに、氏名も言いたくないは通用
しないぜ。 |
| ゆっくり霊夢 | なあんだ。そうなの。 |
| ゆっくり魔理沙 | ちなみに、38条1項は『無理やり言わされない』ことを
保障したものだから、 |
| ゆっくり魔理沙 | 黙秘権の説明が事前になかったくらいでは、38条1項に
違反しているとはいえない。 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法上は説明しなきゃいけない義務もないしな。 |
| ゆっくり魔理沙 | ただ、今は刑事訴訟法で義務付けられているぜ。 |
| ゆっくり霊夢 | じゃあずっと黙ってればいいじゃない? |
| ゆっくり魔理沙 | 黙ってるやつはどうしても怪しく見えて、 |
| ゆっくり魔理沙 | 捜査機関や裁判官の心証を悪くする
可能性が高いから、 |
| ゆっくり魔理沙 | 黙るポイントは弁護士とよく相談してくれ。 |
| ゆっくり霊夢 | 権利として保障はされてるけど、
デメリットもあるわけね。 |
| ゆっくり魔理沙 | 続いて、2項では無理やりさせられた自白は証拠とする
ことができないことが定められている。 |
| ゆっくり霊夢 | それは当たり前よね。 |
| ゆっくり霊夢 | 牢屋に長いこと捕まってたら、早く抜け出したくて嘘でも
自分がやったって認めたくなりそうだもの。 |
| ゆっくり魔理沙 | 霊夢がそう思うように、無理やりさせた自白は冤罪を
生み出しやすい。 |
| ゆっくり魔理沙 | それに、そもそも無理やり自白を引き出そうとすること
そのものも不当な人権侵害だと考えられる。 |
| ゆっくり魔理沙 | なので、無理やりさせられた自白は証拠としないとした
わけだな。 |
| ゆっくり霊夢 | 証拠にならないとわかっていたら、捜査側も無理やり
自白させることをしづらくなるだろうしね。 |
| ゆっくり魔理沙 | ちなみに、刑事訴訟法にはこの38条2項の
内容を受けた条文がちゃんとあるぜ。 |
| ゆっくり霊夢 | 『任意にされたものでない疑のある自白』かあ。 |
| ゆっくり霊夢 | これは、自白が任意か強制かというところで問題に
なりそうね。 |
| ゆっくり魔理沙 | いいところに気づくな。 |
| ゆっくり魔理沙 | まさにその通りで、自白の任意性が大きな問題となる。 |
| ゆっくり魔理沙 | この点、判例においては、 |
| ゆっくり魔理沙 | まず憲法38条2項の趣旨は、 |
| ゆっくり魔理沙 | 不当に長い抑留又は拘禁がある
場合すべてで自白の任意性が否定されるのではなく、 |
| ゆっくり魔理沙 | 自白とその不当に長い抑留又は拘禁の間に因果関係が
あるかどうか、 |
| ゆっくり魔理沙 | つまり、不当に長い抑留又は拘禁があったことによって
自白させられるに至ったといえるかを考えた上で、 |
| ゆっくり魔理沙 | 自白を証拠とするのかどうか判断すべきだとした。 |
| ゆっくり霊夢 | ちゃんと原因と結果の関係になっているかが
大事なわけね。 |
| ゆっくり魔理沙 | そして、自白と不当に長い抑留又は拘禁との間に因果関係
が存在しないことが明らかな場合には、 |
| ゆっくり魔理沙 | この自白を証拠とすることができるとしたんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | 因果関係が微妙な場合も証拠として採用できないの? |
| ゆっくり魔理沙 | その通り。 |
| ゆっくり魔理沙 | 因果関係の立証を被告人にさせるのは大変すぎて、 |
| ゆっくり魔理沙 | 被告人の人権保護の観点からどうなの?ってことで、
証拠能力はないとしているぜ。 |
| ゆっくり霊夢 | いろんなこと考えてるのね。 |
| ゆっくり魔理沙 | また、『強制』したといえるためには、そうした客観的
事実が必要だ。 |
| ゆっくり霊夢 | どゆこと? |
| ゆっくり魔理沙 | 例えば、単に警察官自体に対して心理的強制や
圧迫を感じていたとしても、 |
| ゆっくり魔理沙 | それで自白を『強制』したとはいえないってことだ。 |
| ゆっくり霊夢 | 確かに、警察官見てるだけで、何もしてなかったとしても
なんかドキドキするから、気持ちはわかるよ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 他にも、被疑者を騙したことで、
被疑者が心理的強制を受け、 |
| ゆっくり魔理沙 | その結果虚偽の自白が誘発されるおそれのある場合、 |
| ゆっくり魔理沙 | その自白は任意性に疑いがあるものとして証拠能力を
否定すべきとした判例もある。 |
| ゆっくり霊夢 | 『強制』っていうのは騙すのもダメなのね。 |
| ゆっくり魔理沙 | 一方で、ポリグラフ検査といわれる |
| ゆっくり魔理沙 | 質問されることについて知っているかどうかを、 |
| ゆっくり魔理沙 | 身体の反応を調べて判断するというものの結果を
告げた後で真実を話すように促した事例では、 |
| ゆっくり魔理沙 | その自白について任意性を疑う事情がない
とした判例もある。 |
| ゆっくり霊夢 | 嘘発見器って捜査で使うんだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | イメージはそうだろうけど、ポリグラフ検査はあくまで
嘘の可能性を推測する検査であって、 |
| ゆっくり魔理沙 | 嘘発見器ではないぜ。 |
| ゆっくり霊夢 | まあ、心拍とか汗とか呼吸とかで判断するだけだもんね。 |
| ゆっくり魔理沙 | ちなみに、ポリグラフ検査は任意捜査だ。 |
| ゆっくり霊夢 | 嘘の可能性があるという結果が出て、
ビビっちゃったのかな? |
| ゆっくり魔理沙 | どうだろうな。 |
| ゆっくり魔理沙 | とまあ、
自白の任意性についてこんなところにしておこう。 |
| ゆっくり魔理沙 | ところで、自白が任意だったとしても、嘘の自白の可能性
もあるよな? |
| ゆっくり霊夢 | そんなことして被疑者や被告人にメリットある? |
| ゆっくり魔理沙 | 例えば、誰かをかばうためとか。 |
| ゆっくり霊夢 | ああ。確かにドラマとかでもあったような。 |
| ゆっくり魔理沙 | それに、証拠が自白だけでも有罪にできるとなったら、 |
| ゆっくり魔理沙 | いくら強制はダメとはされてても警察は躍起になって
自白をとろうとすると思わないか? |
| ゆっくり霊夢 | それはそうかも。 |
| ゆっくり魔理沙 | さらに、もっと視野を広げると、自白だけで有罪と
できるなら、 |
| ゆっくり魔理沙 | 冤罪が増える可能性が高くなる、 |
| ゆっくり魔理沙 | つまり、その分真犯人が裁かれずに
野放し状態になる可能性も高くなってしまう。 |
| ゆっくり霊夢 | それは怖いな。 |
| ゆっくり魔理沙 | そんな事態を防ぐために、憲法38条3項では、 |
| ゆっくり魔理沙 | 唯一の証拠が本人の自白だった場合、有罪とされて
刑罰を科せられることがないと定めている。 |
| ゆっくり霊夢 | 自白以外にも証拠を見つけろってことね。 |
| ゆっくり魔理沙 | そういうこと。 |
| ゆっくり魔理沙 | このことは2項と同じく刑事訴訟法に
内容を受けた条文がある。 |
| ゆっくり魔理沙 | ちなみに、自白の内容を裏付けるための別の証拠のことを
『補強証拠』といったりもするぜ。 |
| ゆっくり霊夢 | この刑事訴訟法319条2項で『公判廷における自白であると
否とを問わず』って憲法にはない文言があるけど、 |
| ゆっくり霊夢 | なんでこんな文言が追加されてるの? |
| ゆっくり魔理沙 | これは、判例では憲法38条3項の『本人の自白』には
公判廷における自白は含まない、 |
| ゆっくり魔理沙 | となっていることを危惧されて
考えられた文言だからなんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | つまり、判例に反した内容の立法だったってこと? |
| ゆっくり魔理沙 | まあ、そういうことになるな。 |
| ゆっくり魔理沙 | まず、前提として戦前の頃は『自白は証拠の王様』と
言われるくらい、証拠として重要視されていたんだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | しかし、これまで言ってきたように、自白は無理やり
言わされたり、誰かをかばうためだったり、 |
| ゆっくり魔理沙 | とにかく嘘の危険性、そしてその結果、冤罪をつくる
可能性がとても高いものでもあった。 |
| ゆっくり霊夢 | だから、憲法38条で自白を証拠とするのに慎重になる
ようにしたわけだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | その通り。 |
| ゆっくり魔理沙 | 戦前の自白に頼りすぎていたやり方への反省があって、
戦後の憲法38条ができたんだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | そして、3項では自白のみが証拠の場合は有罪にも
できないし、刑罰も科せられないと定めたんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | なるほどそういう経緯があったのね。 |
| ゆっくり魔理沙 | そして、判例では38条3項の趣旨は、不当な干渉など
いろんな原因で本人の意思に反して |
| ゆっくり魔理沙 | 自白される場合を考えた結果、
証拠が本人の自白である場合は、 |
| ゆっくり魔理沙 | その自白を裏付ける補強証拠を必要とするものとし、 |
| ゆっくり魔理沙 | 唯一の証拠が本人の自白だけだったら、有罪にしない
としたものであるとした。 |
| ゆっくり魔理沙 | これは、真犯人が処罰を免れることがあっても、 |
| ゆっくり魔理沙 | 冤罪をつくるよりは社会的にはマシという考えに基づく
とも言ってるな。 |
| ゆっくり霊夢 | 憲法の精神、人権の保護を重視したのね。 |
| ゆっくり魔理沙 | ただ、公判廷、つまり裁判の行われる法廷の中での自白は
事情が違う。 |
| ゆっくり魔理沙 | さっきいったような不当な干渉を受けることがない
自由な状態でされるものだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | それに、裁判官の目の前でされるわけだから、 |
| ゆっくり魔理沙 | 言葉だけじゃなく顔色や態度なんかも見られるわけだし、 |
| ゆっくり魔理沙 | 気になるなら裁判官から質問もできる。 |
| ゆっくり魔理沙 | なので、裁判官は被告人の自白が証拠として役立つか
どうか判断できる。 |
| ゆっくり魔理沙 | 要するに、無理やり自白させられる心配はないし、
嘘の自白が証拠として採用される心配もほぼない。 |
| ゆっくり魔理沙 | だから、『本人の自白』は公判廷における被告人の自白
を含まないと解釈するとしたんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | 憲法が心配している事態にはならないから38条3項に
あたらないとしたんだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | この判例では他にもいろいろ理由を挙げているが、
まあそういうことだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | もちろん、公判廷における被告人の自白があった
としても、すぐに証拠にしてしまうんじゃなくて、 |
| ゆっくり魔理沙 | 担当する裁判官は、その自白の任意性や真実性について
きちんと納得できた場合のみ、 |
| ゆっくり魔理沙 | 有罪にしたり刑罰を科すことができるということを、
十分に気をつけろ、と釘を刺している。 |
| ゆっくり霊夢 | 結局裁判で嘘の自白が証拠になってしまったら
意味ないもんね。 |
| ゆっくり魔理沙 | だけど、法律を作る側は公判廷における自白だけで有罪
の判決を出すのは危険と考えたわけだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | それで、 |
| ゆっくり魔理沙 | 刑事訴訟法319条2項で『公判廷における自白であると
否とを問わず』って文言が入ることになったんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | なるほどねえ。歴史があるんだねえ。 |
| ゆっくり魔理沙 | ちなみに、裁判官の目の前で自白の任意性と真実性を
見極めるわけだから、 |
| ゆっくり魔理沙 | 『公判廷における被告人の自白』は、その自白を証拠に
採った裁判所の公判廷における被告人の自白を指す。 |
| ゆっくり魔理沙 | つまり、第一審で被告人が自白したとしても、控訴審で
その自白だけを元に有罪にすることはできないってこと。 |
| ゆっくり霊夢 | 控訴審の裁判官は自分で被告人に
質問したりしたわけじゃないもんね。 |
| ゆっくり霊夢 | さっきの判例が釘を刺していたのは
こういうことなんだね。 |
| ゆっくり霊夢 | ところで、判例に反して319条2項ができたわけだよね? |
| ゆっくり霊夢 | そのあと判例は変わったの? |
| ゆっくり魔理沙 | いや、実は判例は変わってないぜ。 |
| ゆっくり霊夢 | え?なんで? |
| ゆっくり魔理沙 | 刑事訴訟法319条2項は憲法より厳しいだけで、憲法に
違反しているわけじゃない。 |
| ゆっくり霊夢 | まあ、そういうことになるのかな? |
| ゆっくり魔理沙 | だから、判例の考え方のままでも、
319条2項と矛盾しない、 |
| ゆっくり魔理沙 | だから判例を変える必要がないと言っている。 |
| ゆっくり霊夢 | いやいや、やっぱり |
| ゆっくり霊夢 | そもそも、憲法38条3項の『本人の自白』に公判廷の
被告人の自白を含まないとするのはおかしいんじゃない? |
| ゆっくり霊夢 | だって、自白を重視する反省から
38条3項ができたわけでしょ? |
| ゆっくり霊夢 | だったら、公判廷の中だろうが外だろうが、自白だけで
有罪にするのはダメって考えるのが自然じゃない? |
| ゆっくり魔理沙 | それはおっしゃる通りで、
公判廷の自白は含まないとする判例には |
| ゆっくり魔理沙 | 判決にかかわった裁判官からも根強い反対意見がある。 |
| ゆっくり霊夢 | でしょうね。 |
| ゆっくり魔理沙 | でもな、もうこの判例もほとんど意味をなさないんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | そうなの?どうして? |
| ゆっくり霊夢 | あ、刑事訴訟法319条2項があるからか、 |
| ゆっくり魔理沙 | それもあるんだけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | 捜査能力が高くなって、だいたい客観的証拠っていうのが
つかめるようになったし、 |
| ゆっくり魔理沙 | 自白以外に証拠がない場合はそもそも検察が起訴しない。 |
| ゆっくり魔理沙 | だから、自白関連が問題となった判例の多くは
昭和20年代までで、 |
| ゆっくり魔理沙 | それ以降はほとんど見られなくなった。 |
| ゆっくり霊夢 | そういえば、日本の裁判の有罪率が高いのは、 |
| ゆっくり霊夢 | 有罪になりそうなものしか起訴しないからだって
聞いたことあるわ。 |
| ゆっくり魔理沙 | とはいっても、検察がそういう風に慎重にするのは、
憲法38条3項があるからだともいえるし、 |
| ゆっくり魔理沙 | さっきの判例の良し悪しはさておき、
重要な条文であることには違いないぜ。 |
| ゆっくり魔理沙 | といったところで、憲法改正草案では38条がどうなってる
かみてみようか。 |
| ゆっくり霊夢 | 基本的には変わってないように見えるけど。 |
| ゆっくり霊夢 | あ。 |
| ゆっくり霊夢 | よく見たら3項の『刑罰を科せられない』がなくなってる。 |
| ゆっくり魔理沙 | よく気付いたな。 |
| ゆっくり霊夢 | でも、有罪にならなければ、
刑罰なんて科せられないでしょ? |
| ゆっくり魔理沙 | それができるとしたら? |
| ゆっくり霊夢 | できるの? |
| ゆっくり魔理沙 | 断言はできないけど、できる可能性があるんだろうな。 |
| ゆっくり魔理沙 | じゃないと、わざわざ文言を消す理由がない。 |
| ゆっくり霊夢 | でもどうやって? |
| ゆっくり魔理沙 | 可能性として考えられるのは、 |
| ゆっくり魔理沙 | 『国防軍審判所』だ。 |
| ゆっくり霊夢 | なにそれ? |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法改正草案の9条の2の5項を見返してほしい。 |
| ゆっくり魔理沙 | 国防軍に審判所を置くことが明記されている。 |
| ゆっくり霊夢 | 軍の裁判所ってことね? |
| ゆっくり魔理沙 | 『裁判を行う』といっているから、
中身はそうなんだろう。 |
| ゆっくり霊夢 | 中身は? |
| ゆっくり魔理沙 | 先取りで申し訳ないけど、憲法改正草案76条2項は
特別裁判所は設置できないとされている。 |
| ゆっくり魔理沙 | 特別裁判所とは |
| ゆっくり魔理沙 | 特定の地域や身分にある人もしくは特別の事件について
通常裁判所とは別に設置される裁判所のことだ。 |
| ゆっくり霊夢 | あれ? |
| ゆっくり霊夢 | 国防軍審判所は、軍人なんかを裁判するところって
話だよね? |
| ゆっくり霊夢 | その定義でいくと国防軍審判所って特別裁判所だと
思うんだけど、違うの? |
| ゆっくり魔理沙 | そう思うのが普通だよな。 |
| ゆっくり魔理沙 | ただ、 |
| ゆっくり魔理沙 | 9条の2の5項には『被告人が裁判所へ上訴する権利』
とあって、審判所は裁判所とは明確に区別されている。 |
| ゆっくり魔理沙 | 名前もわざわざ『審判所』となっているしな。 |
| ゆっくり霊夢 | つまり、 |
| ゆっくり霊夢 | 国防軍審判所は裁判所じゃないってことか。 |
| ゆっくり魔理沙 | そういうことになるんだろうな。 |
| ゆっくり魔理沙 | だから、今まで見てきたような手続保障の数々が適用
されるかは不明瞭だ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 司法権の管轄外でもあるわけだしな。 |
| ゆっくり魔理沙 | そして、歴史的に見れば、戦前には治安維持法に、 |
| ゆっくり魔理沙 | 実際に罪を問うことなく実質的な刑罰を科す
『予防拘禁』なるものがあった。 |
| ゆっくり魔理沙 | 言ってしまえば、まだ犯罪をしていない段階で
『危険だ』と判断されただけで身柄を拘束されたんだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 条文にもあるように、私有財産制を否定する組織を結社
したり、あるいは加入したり、 |
| ゆっくり魔理沙 | それどころか、それらをするための
協議の段階でも罪とされたんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | でも当時の法律で罪とされたんだから、
有罪ってことじゃないの? |
| ゆっくり魔理沙 | 形としてはそういうことになるな。 |
| ゆっくり魔理沙 | 当時は治安維持法っていう法律があったから、
それに違反すれば犯罪扱いされた。 |
| ゆっくり霊夢 | じゃあ正しい処罰だったってこと? |
| ゆっくり魔理沙 | いや、 |
| ゆっくり魔理沙 | 法律で決めたからって、
どんな処罰でも正当化されるわけじゃない。 |
| ゆっくり魔理沙 | 現代の憲法の考え方からすれば、思想を持っただけで
逮捕とか、話し合っただけで懲役とか、 |
| ゆっくり魔理沙 | 完全にアウトだろ? |
| ゆっくり魔理沙 | 思想良心の自由、結社の自由、表現の自由、適正手続
全部まるごと無視してる。 |
| ゆっくり霊夢 | 確かに。 |
| ゆっくり魔理沙 | 適正手続のところでも法律であればなんでも従わないと
いけないわけじゃなくて、 |
| ゆっくり魔理沙 | 法律の中身も憲法的に正しいかどうかチェックされる。 |
| ゆっくり魔理沙 | いろいろまるごと無視してる治安維持法は、 |
| ゆっくり魔理沙 | 今の憲法で見れば完全に違憲だ。 |
| ゆっくり魔理沙 | だから、形としては犯罪とされるけど、中身は犯罪でなく
不当な人権侵害であるといえる。 |
| ゆっくり魔理沙 | つまり、予防拘禁は有罪じゃないのに刑罰を科されている
状態であるといえる。 |
| ゆっくり魔理沙 | そして、国防軍審判所でも同じことが起こる可能性が
あるということを私は言いたいんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | ややこしいなあ。 |
| ゆっくり霊夢 | でも、憲法改正草案が現実の憲法になるとしたら、 |
| ゆっくり霊夢 | 憲法が変わることになるから、
普通に犯罪になるんでないの? |
| ゆっくり魔理沙 | 霊夢の言うとおり、 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法が変わればその憲法の世界での法律が
つくられるから、そこで犯罪をつくることは可能だ。 |
| ゆっくり霊夢 | じゃあやっぱ普通に犯罪になるってことよね? |
| ゆっくり魔理沙 | それはそうなんだけど、ポイントはそこじゃない。 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法は犯罪を決めるものではなく、
国家がやっていい処罰の限界、 |
| ゆっくり魔理沙 | つまり、不当でない人権侵害を決めて、国家権力の暴走
にブレーキをかけるストッパーが役割だ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 現憲法38条3項の『刑罰を科せられない』は
まさにそのストッパーだった。 |
| ゆっくり霊夢 | でも憲法改正草案では消えてる。 |
| ゆっくり魔理沙 | そうだな。だから、問題は国家がどこまで罰していいかの
限界が緩むことにあるんだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | そして、その緩んだ部分を利用して、国防軍審判所の
ような裁判所ではない機関で |
| ゆっくり魔理沙 | 有罪判決なしの処罰が可能になる余地が出てくる
のがポイントなんだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 『刑罰を科せれらない』という文言、強力な
ストッパーが消されていることで、 |
| ゆっくり魔理沙 | 本来の裁判手続だったら自白だけが証拠では
有罪にできないところ、 |
| ゆっくり魔理沙 | 国防軍審判所みたいな司法の外側の仕組みを使えば、 |
| ゆっくり魔理沙 | やり方次第で有罪にしなくても刑罰を科せる余地が
生まれてしまうんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | 結局憲法変わったら有罪にしちゃうのかあって思ったけど |
| ゆっくり霊夢 | 問題は犯罪かどうかでなくて、国家権力の暴走への
ブレーキがぶっ壊れちゃうってことなのね。 |
| ゆっくり魔理沙 | あくまで可能性があるだけだとは思うんだけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | 国家権力は一度例外の道を作るとそこから拡大するのが
歴史の常だからな。 |
| ゆっくり魔理沙 | 治安維持法も、最初は危険人物だからという理由で
予防拘禁からはじまって、 |
| ゆっくり魔理沙 | 最終的には思想自体を取り締まり、
重い刑罰まで科されるようになった。 |
| ゆっくり霊夢 | 憲法改正草案の『刑罰を科せられない』という文言を
消したのは、 |
| ゆっくり霊夢 | 例外への道の入り口になっちゃうってことなのね? |
| ゆっくり魔理沙 | おそらくだけど、そういうことになるんだろうと思う。 |
| ゆっくり魔理沙 | つい、長く語りすぎたな。 |
| ゆっくり魔理沙 | そろそろ次の条文へ進もう。 |
| ゆっくり魔理沙 | 39条は、実行時に適法だった行為または
既に無罪とされた行為は刑事上の責任を問われない、 |
| ゆっくり魔理沙 | そして、同じ犯罪について重ねて刑事上の責任を
問われない、 |
| ゆっくり魔理沙 | いわゆる遡及処罰の禁止や一事不再理を定めた条文だ。 |
| ゆっくり霊夢 | 日本語で話して。 |
| ゆっくり魔理沙 | 話してるわ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 遡及処罰の禁止は実行時に合法だった行為を、後から
罰することができないとする原則だ。 |
| ゆっくり霊夢 | それ条文の最初のほうでそのまま言ってるわね。 |
| ゆっくり魔理沙 | これは、後だしじゃんけん的に犯罪にすることを
防ぐ狙いがある。 |
| ゆっくり霊夢 | やったとき問題なかったのに、後から犯罪になったので
逮捕、 |
| ゆっくり霊夢 | だと何もできなくなっちゃうものね。やりすぎよ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 身近な例ってわけじゃないけど、建築当時に法律の基準に
違反する建築なら違法建築物件、 |
| ゆっくり魔理沙 | 後から基準が変わって法律の基準に反するようになった
場合、既存不適格物件で違法にはならないって |
| ゆっくり魔理沙 | 以前話したことあったよな。 |
| ゆっくり魔理沙 | これも、後から過去にさかのぼって違法にしない
という根っこの部分は同じだ。 |
| ゆっくり霊夢 | そういえばマネも買った家で快適に過ごせてるって。 |
| ゆっくり魔理沙 | それは今どうでもいい。 |
| ゆっくり霊夢 | 冷たいなあ。 |
| ゆっくり魔理沙 | ちなみに、この遡及処罰の禁止から、犯罪と処罰に
ついてはあらかじめ法律で定めておかなければならない、 |
| ゆっくり魔理沙 | とする罪刑法定主義という原則が導かれる。 |
| ゆっくり霊夢 | そりゃ後から処罰できないとなると、当然そういう
ことになるよね。 |
| ゆっくり魔理沙 | で、一事不再理っていうのは、一度決まった確定した判決
を後から蒸し返さないっていう原則だ。 |
| ゆっくり霊夢 | 無罪だったらいいけど、有罪だったら嫌だなあ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 条文では、有罪だった場合でも、同一の犯罪について
終わった裁判を再度蒸し返さないとすることで、 |
| ゆっくり魔理沙 | もう一度裁判にかけられて、
刑罰の上乗せや二重で刑罰を受けることを防げる。 |
| ゆっくり霊夢 | これも、一度決まったことを後からあれこれいうなって
いうことを定めているわけだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | そういうことになるな。 |
| ゆっくり霊夢 | でもさ、もし冤罪だったら? |
| ゆっくり霊夢 | それでも蒸し返せないの? |
| ゆっくり霊夢 | もう助からないの? |
| ゆっくり魔理沙 | いや、そんな無実の罪で処罰を受けている人のために
刑事訴訟法は再審という救済措置を定めている。 |
| ゆっくり魔理沙 | 主に435条に定めてあるんだけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | 証拠が偽造だったりした場合をはじめ、435条の各号に
書かれているようなことがあった場合に、 |
| ゆっくり魔理沙 | 有罪判決を受けてしまった人の利益のために、
再審請求することができる。 |
| ゆっくり霊夢 | でも、やり直すってことは蒸し返すんだから、憲法に
違反するんじゃないの? |
| ゆっくり魔理沙 | 『蒸し返す』って言い方が悪かったかな。 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法の条文に戻ると、
『重ねて刑事上の責任を問はれない』となっているので、 |
| ゆっくり魔理沙 | 別に、有罪になった人の責任が減る方向ならばまったく
問題ない。 |
| ゆっくり魔理沙 | というのも、39条が担っているのは、 |
| ゆっくり魔理沙 | 国が『刑罰が足りなくてムカつくからもう一回裁判
やり直す』 |
| ゆっくり魔理沙 | みたいな暴挙をさせないことだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | つまり、私が言った『蒸し返す』の意味は処罰を重くする
裁判のやり直しということだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 再審請求はむしろ国民を守る結果につながるから、 |
| ゆっくり魔理沙 | 39条としても望ましいことになるんだぜ。 |
| ゆっくり霊夢 | そういうことかあ。 |
| ゆっくり魔理沙 | というところで、憲法改正草案で39条がどうなってるか
見てみよう。 |
| ゆっくり霊夢 | どれどれ。 |
| ゆっくり霊夢 | うーん。 |
| ゆっくり霊夢 | 意味は変わらないようだけど『違法ではなかった行為』に
変わってるのはなんか引っかかるなあ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 良い目の付け所だと思う。 |
| ゆっくり魔理沙 | 『適法であつた』と『違法ではなかった』 |
| ゆっくり魔理沙 | 言い方の違いと言われればそれまでかもしれないけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法改正草案では意図的に文言を変えたんだと私は思う。 |
| ゆっくり霊夢 | つまり、意味が違う、と? |
| ゆっくり魔理沙 | そうだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 例えとしてよくないかもしれないが、あぶないお薬や
葉っぱで、 |
| ゆっくり魔理沙 | 『脱法』みたいな言い方を聞いたことがないか? |
| ゆっくり霊夢 | あるある。 |
| ゆっくり魔理沙 | 合法が法を守っていること。 |
| ゆっくり魔理沙 | 違法が法を破っていること。 |
| ゆっくり魔理沙 | じゃあ脱法ってなんだ? |
| ゆっくり霊夢 | 確かに。言われてみればなんとなくのニュアンスで
受け取ってるけど、明確に意味考えたことないな。 |
| ゆっくり魔理沙 | よく言われているのは、法に触れない方法で法が禁止
していることを行うこと、だ。 |
| ゆっくり霊夢 | とんちかな? |
| ゆっくり魔理沙 | 例えば、法の目的としては禁止したいものだけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | 具体的な法律を見たら適用範囲から外れる、とかな。 |
| ゆっくり霊夢 | そんなことできるの?いまいちピンとこないなあ。 |
| ゆっくり魔理沙 | そうだなあ。 |
| ゆっくり魔理沙 | さっきのあぶないお薬や葉っぱの話だけど、実はそれぞれ
成分なんかが法律で定義されているんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | ほんとだ。 |
| ゆっくり霊夢 | こんなに細かく定められてるんだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | ただ、この法律をはじめとする
関連の法律が規制したいのは、 |
| ゆっくり魔理沙 | 体によくなかったり、他人危害を加えるような変化が
起こるようなものだろ? |
| ゆっくり霊夢 | まあそうだよね。 |
| ゆっくり魔理沙 | だけど、法律として具体的な成分などを
定義しなければならないために、 |
| ゆっくり魔理沙 | 効果としては、さっきいったような危険なものだった
としても、 |
| ゆっくり魔理沙 | 法律に定められていない成分を使ったりすることで、 |
| ゆっくり魔理沙 | 法の目的としては規制したいものだけど、
厳密に法に照らすと、 |
| ゆっくり魔理沙 | 規制の範囲から外れるものをつくることができる。 |
| ゆっくり霊夢 | それが脱法のそれってことだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | ルールを守る意思はないけど、ルールに違反してない
状態、いわばグレーゾーンってわけだな。 |
| ゆっくり魔理沙 | で、憲法改正草案の文言の話に戻るんだけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | 現憲法にいう『適法であつた』は合法と
とらえていいだろう。 |
| ゆっくり魔理沙 | じゃあ脱法は『適法であつた』の中に入る? |
| ゆっくり霊夢 | イメージ的に入らないんじゃないかなあ。 |
| ゆっくり魔理沙 | うん、私もそう思う。 |
| ゆっくり魔理沙 | それじゃあ、『違法でなかった』はどう? |
| ゆっくり霊夢 | 合法はもちろんだけど、脱法も違法じゃないから
入ってくると思うね。 |
| ゆっくり魔理沙 | 私も同意見だ。 |
| ゆっくり霊夢 | って考えると、やっぱり意味が違うのか。 |
| ゆっくり霊夢 | ああ、 |
| ゆっくり霊夢 | でも39条は刑事上の責任を問わないって条文なんだから、 |
| ゆっくり霊夢 | 私たちにとっては、責任を問われない範囲が
広がるわけだよね? |
| ゆっくり霊夢 | だったらいいことじゃない? |
| ゆっくり魔理沙 | そうなんだよな。 |
| ゆっくり魔理沙 | そこが悩みどころなんだよ。 |
| ゆっくり霊夢 | 何を悩むところがあるのよ? |
| ゆっくり魔理沙 | 今からいうのは、私のだいぶ偏った見方だし、 |
| ゆっくり魔理沙 | 万一私の考えた通りだったとしても、
だから何?って話なんだけど、 |
| ゆっくり霊夢 | 予防線をこれでもかと張るわね。いいから言いなさいよ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 私は、『違法ではなかった』に文言を変えた意図は、 |
| ゆっくり魔理沙 | 合法だというお墨付きを、国が与えるようなことを
できるだけしたくないんじゃないかなって思うんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | どういうこと? |
| ゆっくり魔理沙 | 『適法であつた』というと、国が法に適っている、法に
きちんと従っていると認めたような言い方だ。 |
| ゆっくり霊夢 | まあ、確かに? |
| ゆっくり魔理沙 | だけど『違法でなかった』はグレーゾーンも含んだ、
つまり適法というお墨付きを与えない言い方なんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | 言われてみればそうかも? |
| ゆっくり魔理沙 | 要するに、憲法改正草案ではこういう細かい部分でも
国民にお墨付きを与えない、安心感を与えない、 |
| ゆっくり魔理沙 | 国民に少しでも味方をしたくないんだなあと感じるんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | なるほどなあ。 |
| ゆっくり霊夢 | もしそうだったとしても、
確かにどうなるかはわからないね。 |
| ゆっくり魔理沙 | なんにもないのかもしれないんだけど、今まで見てきた
条文も踏まえて、 |
| ゆっくり魔理沙 | 筋が通ってるというか怖いほど一貫性があるなあ
と感じさせられてしまう。 |
| ゆっくり霊夢 | 国民を支配しようという意思を感じてしまうわけね。 |
| ゆっくり魔理沙 | 私の思い過ごしだといいんだけど。 |
| ゆっくり魔理沙 | じゃあ今回の最後の条文、40条に進もう。 |
| ゆっくり魔理沙 | 40条は身体拘束を受けた後、裁判で無罪になった場合
国に補償を求めることができると定めている。 |
| ゆっくり霊夢 | 失った時間は戻らないから、お金でももらわないと
やってられないよね。 |
| ゆっくり魔理沙 | 時間だけじゃなくて、社会的信用も失うし、自分だけ
じゃなくて、家族や親戚にも迷惑がかかるかもしれない。 |
| ゆっくり霊夢 | 確かに。 |
| ゆっくり魔理沙 | なんにせよ、お金以外で償いようがないから、
補償を請求できるようになっているわけだな。 |
| ゆっくり霊夢 | 言わなくても補償してくれるわけじゃなくて、
言わないと補償してくれないのね。 |
| ゆっくり魔理沙 | 残念ながらな。 |
| ゆっくり魔理沙 | そして、補償については刑事補償法に詳しく
定められている。 |
| ゆっくり魔理沙 | 補償の要件などが書かれているが、中でも驚かされる
のがその内容だ。 |
| ゆっくり霊夢 | え? |
| ゆっくり霊夢 | 一日最大で12500円なの? |
| ゆっくり霊夢 | 安すぎじゃない? |
| ゆっくり霊夢 | 仕事してたらもっともらえる人も多いだろうし、そもそも
その仕事すら失っちゃう可能性もあるわけでしょ? |
| ゆっくり魔理沙 | そう思うのも無理はないが、刑事補償は『補償』であって
賠償ではない。 |
| ゆっくり霊夢 | どう違うの? |
| ゆっくり魔理沙 | 補償は適法な行為によって生じた損害を補うもので、 |
| ゆっくり魔理沙 | 賠償は不法行為、つまり故意や過失によって
権利を奪ったり損害を出した場合に損害を補うものだ。 |
| ゆっくり霊夢 | つまり、補償は別に悪いことはしてないけど補うという
形だから少ないのね。 |
| ゆっくり魔理沙 | そういうことになるな。 |
| ゆっくり霊夢 | だったら国家賠償請求したらいいじゃない? |
| ゆっくり魔理沙 | 確かに、刑事補償法は国家賠償請求を
妨げないから、請求することができる。 |
| ゆっくり魔理沙 | ただ、さっきも言った通り、補償と賠償では
意味が違う、 |
| ゆっくり魔理沙 | つまり、原因に対するとらえ方が
変わるからであろうか、 |
| ゆっくり魔理沙 | 補償と賠償は二重取り
できないようになっている。 |
| ゆっくり霊夢 | そっか。 |
| ゆっくり霊夢 | 原因が適法だから補償なのに、
賠償請求が通るということは原因が不法だからか。 |
| ゆっくり魔理沙 | それと、賠償請求を認めさせるのは
ハードルが高い。 |
| ゆっくり魔理沙 | 故意や過失などを訴える側が
証明しないといけないからな。 |
| ゆっくり魔理沙 | しかも、憲法17条のところでも言った通り、賠償請求が
認められたとしても、賠償額は低いことが多いんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | なんかやるせないわね。 |
| ゆっくり魔理沙 | そうだな。 |
| ゆっくり魔理沙 | もっといってしまうと、
国家賠償請求するのもタダじゃない。 |
| ゆっくり魔理沙 | 訴訟の手数料や弁護士費用、
証拠を集める費用など、 |
| ゆっくり魔理沙 | かなりの費用がかかる。 |
| ゆっくり魔理沙 | 時間も何年単位でかかるだろうしな。 |
| ゆっくり霊夢 | 補償に納得できないときは
国家賠償請求もできるけど、 |
| ゆっくり霊夢 | とてつもない覚悟と先立つものが必要ってことね。 |
| ゆっくり魔理沙 | では、憲法改正草案では
40条がどうなってるかみてみよう。 |
| ゆっくり霊夢 | ちょっと文言の感じは違うけど、意味は同じか。 |
| ゆっくり魔理沙 | 確かにそうだが、私はちょっと言い方が引っかかる。 |
| ゆっくり魔理沙 | とらえ方の問題かもしれないが、 |
| ゆっくり魔理沙 | 現憲法は『無罪の裁判を受けた』という国民目線のような
書き方なのに対して、 |
| ゆっくり魔理沙 | 改正草案では『裁判の結果無罪となった』となっていて、 |
| ゆっくり魔理沙 | 結果的にそうなったから仕方ないじゃん、 |
| ゆっくり魔理沙 | という国目線の他人事というか、
言い訳っぽさを感じるんだよなあ。 |
| ゆっくり霊夢 | こればっかりは人によるんだろうけど、 |
| ゆっくり霊夢 | 言われてみたらなんかそんな気配があるような気がする。 |
| ゆっくり魔理沙 | 簡単に引っ張られるやつだなあ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 今回はかなり長くなってしまったな。 |
| ゆっくり霊夢 | ほんとだよ。疲れちゃった。 |
| ゆっくり霊夢 | でも、これで人権の章は終わりなんだよね? |
| ゆっくり魔理沙 | その通り。 |
| ゆっくり魔理沙 | 次回からは国会の章に入っていくぜ。 |
| ゆっくり魔理沙 | おそらく、人権の章よりはサクサク進めると思う。 |
| ゆっくり魔理沙 | たぶん。 |
| ゆっくり霊夢 | まあやってみないとわからないよね。 |
| ゆっくり魔理沙 | ところで、このチャンネルの登録者が3000人を超えた
らしいぜ。 |
| ゆっくり霊夢 | すごい。 |
| ゆっくり魔理沙 | 4年以上かけての、だからかなりのスローペースだとは
思うんだけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | 見てくれる人に感謝だな。 |
| ゆっくり霊夢 | 投稿ペースまちまちなのは申し訳ないと思ってるけど、 |
| ゆっくり霊夢 | 頑張って投稿していくから、これからも見てね。 |
| ゆっくり霊夢 | 最後までご視聴ありがとうございました。 |
| ゆっくり魔理沙 | それではまた次回! |
| ゆっくり霊夢 | それではまた次回! |
編集後記
やっとここまできたかって感じです。
当初はここまで時間かかるとは思ってなかったんですけどね、自分が使える時間が少なすぎることと、若いころと同じようにはいかないんだなと、老いを感じて悲しくなってしまいます。
実は、今年はいろいろあった年で、家を買ったり、仕事にも大きな変化があったりと、まあそのうちどこかでお伝えしようと思ってます。
人生って何があるかわからないものです。
さて、今回動画を作ってて思ったのが、自民党憲法改正草案は結構細かいところまでつめて言い方ひとつにしても考えられていることです。
今までの動画を見てもらってもわかると思うんですが、ちょっとした言い回しの違いとかで、いろいろ国民にとって不利になる可能性を秘めてます。
今世界情勢なんかもあるのか、また憲法改正の話題がちらちらニュースでも聞かれるようになってます。
改正するにしてもしないにしても、私たち国民がちゃんと監視していかないといけませんね。
サムネイル、憲法解説はいつもどの部分を表現するかで迷ってしまいますね。
今回の動画、今これを書いてる時点でアップからおよそ半日くらいですが、他の動画以上に伸びが悪いですね(笑)
動画の長さが一番長くなってしまったのもあるので、それも関係しているのでしょう。
作ったかいがないなあ(笑)
だけど、このテーマは伝えるべきだと思って好きでやっているので、たとえ見られなくても最後まで走り切りたいと思います。




