動画概要
はじめに
今回の動画は、「生きづらさ」の正体の一つとして、多くの人の生活をじわじわ苦しめている税金の話から始まり、そこから憲法30条~35条に関わる論点まで一気に踏み込んでいく内容になっています。
10月からの物価上昇、3000品目以上の値上げ、ペットボトル飲料が平気で200円になっていくような現状の中で、「いったい誰がこんな世の中にしたのか?」という素朴な疑問を出発点にしながら、税金と憲法、そして権力と人権の関係をじっくり考えていきます。
憲法の条文をただ暗記するのではなく、「今の社会で現実にどう働いているのか」「改憲草案が出てくると何が変わり得るのか」を、できるだけ日常の感覚に近い言葉で追いかけていく構成です。
税金、税務調査、逮捕・拘束、捜索・押収、GPS捜査…一見バラバラに見えるテーマが、最終的には「権力にどこまでブレーキが効いているのか?」という一つの問いにつながっていきます。
税金と憲法30条:義務であり、ブレーキでもあるはずが…
まず取り上げるのが、納税の義務を定めた憲法30条です。条文にはシンプルに「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。」と書かれています。
学校の公民の授業などで、一度は聞いたことがある条文かもしれません。
本来であれば、「税金を取るためには法律が必要」ということは、同時に「法律に書いていない形で、勝手に税金を取られないためのブレーキ」としても機能するはずです。
ところが実際の運用を見ていると、むしろ逆に、
- 「法律さえ通してしまえば、ほぼ何でも税金として取れてしまう」
- 新しい名前の負担(社会保険料や各種の“税外負担”)がどんどん増えていく
という、加速装置のような側面すら感じられます。
国民健康保険や年金など、本来は保険制度であるはずのものも、実感としては「ほぼ税金と同じように、勝手に引かれていく負担」として受け止めている人も多いはずです。
ほとんど病院に行かなくても保険料が引かれていく現実に、「これって本当に公正なの?」と疑問を覚える人も少なくないでしょう。
世界に広がる「納税者権利憲章」と、日本だけが取り残されている現状
そこで次に焦点を当てるのが、「納税者権利憲章」という考え方です。
これは、納税者の権利と義務をわかりやすくまとめ、税務手続きや税務調査の場面で、納税者がどのように守られるのかを明示しようとする仕組みです。
世界の状況を見てみると、多くの国がこの「納税者権利憲章」を整備しており、
「税金は取られるだけのものではなく、ルールに基づいて公平に扱われるべきもの」という視点が共有されています。
一方で、日本にはこの納税者権利憲章がありません。
ドイツのように、租税基本法の中で納税者の権利が規定されている国もあるのに比べると、日本はかなり特異な立ち位置にいると言えます。
かつて日本国内でも、納税者権利憲章を作ろうという動きがありましたが、政治的な反発もあって、結局いまも実現していません。
その結果、
- 税金を取る権限については細かく法律で定められているのに
- 納税者側が守られるためのルールは、はっきりした形では整っていない
という、バランスの悪い状態が続いています。
一方で、「憲法や国税通則法などですでに納税者も保護されているのだから、わざわざ権利憲章を作らなくてもいいのではないか」という見方も存在しています。
世界中がやっているから日本も真似すべき、というほど単純な話でもなく、ここは本当に一筋縄ではいかない議論でもあります。
税務調査と「任意」のはずなのに半強制?という違和感
税金の話から自然につながっていくのが、「税務調査」の問題です。
税務調査は、原則として「任意調査」とされています。つまり、「あくまで協力をお願いする形」で行われるはずのものです。
ところが、実際の運用を見ていくと、いろいろと引っかかる点が出てきます。
- 原則としては事前通知をすることになっているが、現金商売や“怪しい”と判断された相手には事前通知なしで入れる
- 事前通知なしで行われた税務調査については、不服申し立ての対象にならない
- 税務調査に協力しないと、「何か隠しているのでは?」と見られ、再調査や強制調査に発展する可能性がある
- さらに、質問検査権に対する協力を拒否したり妨害した場合には、罰則が用意されている
書類の上では「任意」だと言われながら、実態としては「断ることがほぼ不可能に近い」という構造が見えてきます。
これは、警察の職務質問に対して「任意です」と言われながら、実際には断りにくいのとよく似ています。
国税庁の説明としては、「罰則をもって強権的に権限を行使することは考えていない」とされていますが、
お願いベースでありながら、拒否にはペナルティがぶら下がっているという意味では、ある意味で強制よりタチが悪い面もあります。
こうした仕組みを見ていくと、税務調査についても、どこかにきちんとしたブレーキをかける制度――たとえば納税者権利憲章のようなもの――が必要なのではないか、という問題意識が自然と浮かび上がってきます。
憲法31条:適正手続の保障と「法律の中身」まで問えるのか
ここから話は、税金に限らず、刑罰一般や行政手続全体にも関わる憲法31条に移っていきます。
31条は、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」と定めていて、「適正手続の保障」と呼ばれています。
この条文から導かれるのが「罪刑法定主義」です。
どのような行為が犯罪で、どんな刑罰が科されるのかは、あらかじめ法律で決まっていなければならない、という考え方です。
徳島市公安条例事件と「明確性の原則」
では、31条は単に「法律という形さえ整っていれば何でもOK」なのかというと、そうではありません。
徳島市公安条例事件の判例では、
- どの行為が犯罪になるのかがあいまいで、普通の人には判断できないような法律は
- 憲法31条に反し、無効である
と示されました。
これは、「明確性の原則」として知られています。
ここから読み取れるのは、31条が守ろうとしているのは「手続きの形」だけではなく、
その手続きを定める「法律の中身の合理性・明確さ」まで含めた適正さだ、ということです。
成田新法事件と、行政手続への広がり
さらに、成田新法事件などの判例では、「憲法31条の保障が行政手続にも及ぶ可能性」が示されています。
刑事事件に限らず、
- 運転免許の違反点数制度
- 行政処分全般
のような場面でも、「どういう行為をすれば、どのような不利益が課されるのか」が、ある程度明確に法律で定められていなければならない、という方向性です。
ただし、刑事手続と行政手続は性質が違うため、
いつでも必ず同じレベルの手続保障が必要というわけではありません。
行政処分による権利制限の重さと、その行政処分で守ろうとしている公益とのバランスを見ながら、どこまで手続を要求するかが問題になります。
憲法32条:裁判を受ける権利と改憲草案の「表現の変化」
続いて取り上げるのが憲法32条、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」という条文です。
これは、誰もが裁判所で裁判を受けることができるという意味であると同時に、
- 裁判所以外の場で「裁判のようなもの」を受けさせられない
- いわゆる「特別裁判所」から守る役割
も担っています。
終審の裁判所として最高裁判所がラスボスのように構えていて、
高裁・地裁・家裁・簡裁といった下級裁判所を含む三審制の仕組みが、裁判所法などで整えられています。
この条文について、改憲草案では、「奪はれない」という表現が「有する」に変えられています。
一見すると大差ないように思えますが、
- 「奪はれない」=絶対に奪えない権利(制限が極めて難しい)
- 「有する」=持ってはいるが、法律で制限し得る余地がにじむ
という違いが生まれます。
この変化は、「裁判なしで不利益を課す制度」を作ろうとした時に、
どこまでブレーキが効くのか、という点で大きな意味を持ちかねません。
憲法33・34条:逮捕・抑留・拘禁と弁護人とのつながり
次に見ていくのが、憲法33条と34条です。
33条は「逮捕令状主義」の根拠となる条文で、原則として裁判官が発した令状がないと逮捕できないことを定めています(現行犯は別扱い)。
34条は、逮捕された後の身体拘束、つまり抑留や拘禁の場面での人権を守るための条文です。
ここでのポイントは、
- 身体拘束されるときには、その理由を直ちに告げられなければならない
- 直ちに弁護人に依頼する権利が与えられること
- 長期の拘禁には「正当な理由」が必要であり、求めれば公開の法廷で理由を示さなければならない
という三つの柱です。
弁護人に依頼する権利について、判例は、単に「邪魔をしない」というレベルを超えて、
弁護人から助言や援助を受ける機会そのものを保障する趣旨だと解釈しています。
これが、刑事訴訟法39条の「接見交通権」として具体化されていて、被疑者・被告人は弁護人と自由に面会できることになっています。
とはいえ、捜査とのバランスもあるため、「捜査のため必要があるとき」に限り、日時・場所・時間を制限できる例外も認められています。
判例はこの「必要があるとき」をかなり絞り込み、
- 現に取り調べ中の場合
- 実況見分などに立ち会わせている場合
- すぐに取り調べを予定していて、その開始が大きく遅れるおそれがある場合
など、限定的に捉えています。
こうした配慮からわかるのは、「身体拘束は極めて強い人権侵害である」という前提です。
裁判で有罪が確定するまでは、あくまで「犯罪の疑いがある人」であって、犯罪者ではないという原則が、ここに貫かれています。
憲法34条改憲草案と、接続詞の一語が変えるもの
憲法34条について改憲草案を見ていくと、一見すると表現を整理しただけのように見えますが、実は大きな違いがあります。
現行憲法では、理由を直ちに告げることと、弁護人に依頼する権利を与えることが「且つ(かつ)」でつながれていて、両方とも満たされていないと拘禁できない構造になっています。
一方、草案ではここが「若しくは」「又は」といった接続詞に変えられており、
- 正当な理由がある
- 理由を直ちに告げる
- 弁護人に依頼する権利を与える
のどれか一つでも満たせばよい、という読み方が可能になってしまいます。
極端に言えば、
- 正当な理由がなくても、何かしら理由を告げさえすれば拘禁できてしまう
- 弁護人に依頼する権利を与えなくても、形式的な理由説明だけで拘束を正当化できる余地が生まれる
ということです。
さらに、拘禁理由の開示を求める権利についても、
現行憲法では「公開の法廷で示されなければならない」と義務形で書かれているのに対し、
草案では「示すことを求める権利を有する」と権利形に変えられています。
「権利を有する」と書かれてしまうと、12条の「公共の福祉」や「公益及び公の秩序」を盾に、その権利を制限する余地が生まれます。
しかも、請求できる主体が「拘禁された本人」に限定されるため、現行の刑事訴訟法のように、家族や弁護人など利害関係人が請求する仕組みは、維持しにくくなる可能性があります。
このように、接続詞一つ、表現一つの違いが、身体拘束のハードルや、国民が自分を守れる手段に大きな影響を与えかねないという点を、動画ではじっくり取り上げています。
憲法35条:住居・書類・所持品の捜索と任意捜査・強制捜査の境界
憲法35条は、「住居、書類及び所持品」に対する捜索・押収について、令状主義を定めた条文です。
勝手に家に入られたり、持ち物を調べられたりしない権利を保障していると言えます。
令状を出すには「正当な理由」が必要で、捜索する場所や押収する物の範囲も明示しなければなりません。
つまり、「なんとなく怪しいから全部調べさせて」というようなことは、本来できない仕組みになっています。
ただし、令状がなくてもできる「任意捜査」も存在します。
たとえば、警察が「捜査させてください」とお願いし、相手が自由意思で「いいですよ」と同意した場合には、
強制ではなく任意なので、憲法35条の強制的な捜索には当たらないとされています。
おとり捜査:了解がなくても任意とされたケース
任意と強制の境界線を考えるうえで、判例が取り上げているのが「おとり捜査」です。
捜査機関やその協力者が身分や意図を隠し、犯罪を実行するよう働きかけ、相手がそれに応じて犯行に出たところで検挙する、という手口です。
判例は、特定の条件のもとで、おとり捜査を任意捜査として認めています。
特に、
- 被害者のいない犯罪で、通常の捜査だけでは実態把握が難しい場合
- 相手側から積極的に犯罪を持ちかけているような事情がある場合
といった状況が重なっていました。
ここで重視されているのは、「捜査側が犯罪を作り出していないか」「相手の自由意思がどこまで残っているか」というポイントです。
逆に、捜査側が強くそそのかして犯罪を誘発しているような場面では、強制に近いと判断される可能性も出てきます。
GPS捜査:身体に触れなくても強制とされたケース
もう一つ、現代的な問題として取り上げられるのがGPS捜査です。
車両などにこっそりGPS端末を取り付けて移動を追跡するこの手法は、憲法が想定していなかった新しいタイプの捜査といえます。
最高裁判例は、GPS捜査について、
- 個人のプライバシーという重要な法的利益を侵害する
- 本人の意思に反して私的領域に入り込む行為である
として、刑事訴訟法上の「強制の処分」に当たると判断しました。
ここでは、物理的に力ずくで押さえつけるような「力の強さ」ではなく、
本人の意思を無視してどこまで私生活に踏み込むのか、という点が重視されています。
そのうえで、「特別な根拠規定がなければ許容できないほどの手段」であれば強制捜査になり、
そうでないグレーな領域の手段については、必要性・緊急性などを考慮しながら、ケースバイケースで相当性が判断される、という整理も示されています。
違法な捜査で集めた証拠はどうなるのか
捜索や押収の話と関連して気になってくるのが、「違法な捜査で集めた証拠」の扱いです。
憲法にも刑事訴訟法にも、直接はっきりとした規定がないため、ここも判例の解釈に委ねられています。
判例は、
- 捜査が違法だからといって、証拠の中身そのものが変わるわけではない
- 事件の真相解明という目的もあるので、すべて機械的に排除するのは妥当ではない
としつつも、
- 憲法35条や令状主義の精神を踏みにじるような「重大な違法」がある場合
- これを許してしまうと、将来の違法捜査を抑止できなくなるような場合
には、証拠能力を否定するという基準を示しています。
つまり、「違法なら即アウト」でも「違法でも常にOK」でもなく、
人権保障と真相解明のバランスをとりながら、ある程度の線引きをしている、というイメージです。
税務調査や行政目的の検査にも35条が及ぶという判例の視点
さらに判例は、憲法35条1項の保護が「刑事責任追及の手続きだけに限定されるわけではない」とも述べています。
所得税の徴収のための検査のような、行政目的の検査であっても、
- 住居・書類・所持品という私的領域に踏み込む以上
- 一定の人権保障の枠組みから完全に外れているとは言えない
という考え方です。
この視点から改めて税務調査を見直すと、「半強制のわりにブレーキが弱すぎないか?」という問いかけが、より重みを持ってきます。
事前通知の有無、不服申し立ての可否、質問検査権と罰則の関係など、
「本当に納税者側の防御の手段は十分か?」という視点で見直す必要性が浮かび上がってきます。
まとめ
動画全体を通して扱っているテーマは、一言でいえば「権力に対するブレーキが本当に機能しているのか?」という問いです。
納税の義務を定める憲法30条から始まり、世界の納税者権利憲章と日本の立ち遅れ、
任意のはずなのに半強制になっている税務調査、そして憲法31条~35条の適正手続・裁判を受ける権利・逮捕・拘禁・捜索押収のルールまで、ひとつながりで見ていきました。
ポイントを振り返ると、
- 憲法30条は、本来「税金をかけるための法律の要件」と同時に、「行き過ぎた課税を抑えるブレーキ」でもあるはずなのに、現実には加速装置のように使われている面がある
- 世界の多くの国には「納税者権利憲章」があり、税務手続での権利と義務がわかりやすく整理されているのに、日本にはそれがない
- 税務調査は形式上は任意だが、事前通知なしの調査や、拒否に対する罰則、不服申し立ての制限などを考えると、実質的には非常に断りづらい構造になっている
- 憲法31条は手続きの形だけでなく、法律の中身の明確性・合理性まで含めて「適正かどうか」を問う条文として機能している
- 憲法32条・34条・35条などに対する改憲草案では、「奪はれない」が「有する」になるなど、表現の小さな変化が、権利の制限を正当化しやすくする方向に働きかねない
- 任意捜査と強制捜査の境界は、「力ずくかどうか」だけでなく、「意思に反してどこまで私的領域を侵害するか」「どれほど重要な法益を侵害するか」という観点からも考えられている
- 違法捜査による証拠の扱いや、行政目的の検査への35条の準用など、判例は人権保障と真相解明のバランスを探りながら線引きを試みている
そして何より大事なのは、これらすべての問題が、「どこか遠くの専門家だけの話」ではないということだと思います。
税金も、逮捕も、捜索も、裁判も、決してドラマの中だけの出来事ではなく、
誰もが当事者になり得る、生活に直結したテーマです。
だからこそ、憲法の条文や改憲草案の言葉を、「ただの文言の違い」として流してしまうのではなく、
その一語一語が、
「自分たちの自由や生活をどこまで守ってくれるのか」
「逆に、どこまで権力の自由度を広げてしまうのか」
という観点から、一緒に考えていければと思っています。
この動画が、毎日の生活の苦しさやモヤモヤを、単なる「自己責任」や「仕方ない」で終わらせず、
社会の仕組みから捉え直していくための小さなきっかけになればうれしいです。
興味を持ってもらえたら、ぜひ本編で、条文や判例をもう少しじっくり追いかけてみてください。
動画テキスト
| キャラクター | セリフ |
| ゆっくり魔理沙 | 今回は生きづらくさせられている原因の1つであろう、
税金の話から入ることになるぜ。 |
| ゆっくり霊夢 | 10月から3000品目以上値上げされたらしいし、ますます
生活は苦しいよ。 |
| ゆっくり魔理沙 | コーラも200円になるんだってな。 |
| ゆっくり霊夢 | こんな世の中に誰がした? |
| ゆっくり魔理沙 | 世の中を変える小さいかもしれないが確実な1歩として、
憲法を勉強していってほしいね。 |
| ゆっくり霊夢 | あい。 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法30条は、『国民は、法律の定めるところにより、
納税の義務を負ふ。』として、 |
| ゆっくり魔理沙 | 納税の義務が定められている。 |
| ゆっくり霊夢 | これは有名だよね。 |
| ゆっくり霊夢 | 昔公民かなんかで習った記憶があるなあ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 本来なら、税金をかけるためには法律の定めが必要と
いうことなので、 |
| ゆっくり魔理沙 | 義務が課されるのと同時に、必要以上に課されない
ブレーキとしての条文でもあると思うんだけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | 実際には、この条文を悪用?されてか、 |
| ゆっくり魔理沙 | 『法律さえ作れば税金がとれる』という、むしろ
税金徴収を加速させているような気さえするな。 |
| ゆっくり霊夢 | 最初の動画以来だけど、 |
| ゆっくり霊夢 | これもっかい出しとく? |
| ゆっくり魔理沙 | 日本では国民健康保険や年金も、税金のような感覚で
とられていく感じがあるからな。 |
| ゆっくり霊夢 | 私健康診断以外で病院なんかいかないんですけど。 |
| ゆっくり魔理沙 | 話がちょっと反れかけてしまってるが、 |
| ゆっくり魔理沙 | 実は、世界では納税を権利としてとらえて、 |
| ゆっくり魔理沙 | 納税者権利憲章を作成し、 |
| ゆっくり魔理沙 | 納税者に税務に関する権利・義務をわかりやすい言葉で
要約・説明し、周知しようとしている |
| ゆっくり魔理沙 | 国があることを知っているか? |
| ゆっくり霊夢 | なにそれ?知らない。 |
| ゆっくり魔理沙 | 知らないのも無理はない。 |
| ゆっくり魔理沙 | 日本にはないからな。 |
| ゆっくり魔理沙 | 世界の納税者権利憲章の状況はこんな感じ。 |
| ゆっくり霊夢 | ほとんどの国であるんだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | ドイツと日本で作成されてはいないが、 |
| ゆっくり魔理沙 | ドイツでは、租税基本法で納税者の権利に関する規定が
あるらしい。 |
| ゆっくり霊夢 | じゃあ、納税者の権利の定めがないのは日本だけ? |
| ゆっくり魔理沙 | そういうことになるな。 |
| ゆっくり魔理沙 | かつては日本でも納税者権利憲章を策定しようという
動きがあったが、 |
| ゆっくり魔理沙 | 自民党議員による反発があったせいか、結局今も策定
されていないままになっている。 |
| ゆっくり霊夢 | あれ? |
| ゆっくり霊夢 | この『片山さつき議員』って
この前財務大臣になった人じゃない? |
| ゆっくり魔理沙 | そうだな。 |
| ゆっくり魔理沙 | ただ、そもそも納税者の保護は
憲法で足りているとする考え方もある。 |
| ゆっくり魔理沙 | 国税通則法もあるし。 |
| ゆっくり魔理沙 | すでに納税者を守る法律は
あるわけだから、 |
| ゆっくり魔理沙 | 権利憲章をわざわざ作ったほうがいいのか
どうかは正直私にはよくわからない。 |
| ゆっくり魔理沙 | 『世界がやってるから日本もやるべき』が
必ずしもいい結果になるとも限らないしな。 |
| ゆっくり魔理沙 | 私の勉強不足もあるかもしれないけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | 一筋縄でいかない
議論であることは間違いない。 |
| ゆっくり霊夢 | 納税する立場からすれば
あったほうがよさそうではあるけど。 |
| ゆっくり魔理沙 | そりゃ払う側からすれば、
できるだけ有利な立場でいれるほうがいいわな。 |
| ゆっくり魔理沙 | ただ、気になるのは、 |
| ゆっくり魔理沙 | 税務調査の原則はさっきも言った通り、
事前通知をするわけだけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | 現金商売や怪しい相手の場合は事前通知なしでも
調査ができてしまう。 |
| ゆっくり魔理沙 | しかも、この事前通知するかどうかの
判断は税務署内で完結することができる。 |
| ゆっくり霊夢 | 令状主義みたいに裁判所とかがやらなくていいんだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | もちろん、犯罪にかかわるような場合の
強制調査をする場合には、 |
| ゆっくり魔理沙 | 令状が必要になる。 |
| ゆっくり霊夢 | ということは、普通の税務調査は任意
だから断れる? |
| ゆっくり魔理沙 | 強制じゃないなら
断れると思いたいところだけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | 実際は警察の職務質問みたいなもので、 |
| ゆっくり魔理沙 | 協力しないと疑いが深まって、
再調査や強制調査に発展など、 |
| ゆっくり魔理沙 | 状況が悪くなる可能性があるし、 |
| ゆっくり魔理沙 | そもそも、拒否すると
罰則がある。 |
| ゆっくり霊夢 | 任意とは? |
| ゆっくり魔理沙 | 国税庁の説明では、罰則をもって強権的に
権限を行使することは考えていないそうだけどな。 |
| ゆっくり霊夢 | あくまでお願いベースってことね。 |
| ゆっくり霊夢 | なんかよりタチが悪い気がする
のは私だけ? |
| ゆっくり魔理沙 | ちなみに、国税通則法には不服申し立て制度が
あるんだけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | 事前通知なしの税務調査に
対しては不服を申し立てられない。 |
| ゆっくり霊夢 | むしろそこに一番不服が多そう。 |
| ゆっくり魔理沙 | いろいろ言ったけど、
私が気になったことをシンプルにいうと、 |
| ゆっくり魔理沙 | 税務調査は半強制のわりに
ブレーキが緩すぎやしないかという点だ。 |
| ゆっくり霊夢 | やっぱりここは一発
権利憲章でも作ったほうがいいんじゃ… |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法の話に戻るけど、
この30条は憲法改正草案でも変わっていない。 |
| ゆっくり霊夢 | この条文こそもっと納税者を保護する
方向で改正してほしいよね。 |
| ゆっくり魔理沙 | では、次の31条に進もう。 |
| ゆっくり魔理沙 | 31条は法律による適正な手続きをしないと刑罰を
科せられない、ということを定めている。 |
| ゆっくり魔理沙 | いわゆる『適正手続の保障』を定めたものと
いわれているな。 |
| ゆっくり魔理沙 | そのため、国の都合による不当な人権侵害を防ぐ重要な
条文となっているんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | そりゃ法律にすら書いてないのにいきなり逮捕されたり、 |
| ゆっくり霊夢 | 裁判もなく刑務所に入れられたら、落ち着いて
生きていけないよ。 |
| ゆっくり魔理沙 | そうだよな。 |
| ゆっくり魔理沙 | 刑法の基本原則として、『罪刑法定主義』 |
| ゆっくり魔理沙 | 何が罪となって、それに対して
どういう刑罰が与えられるかは、 |
| ゆっくり魔理沙 | 法律であらかじめ定めておかないといけないという原則
があるんだけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | これは憲法31条から導かれるとされているんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | 後だしじゃんけんはさすがに卑怯すぎるもんね。 |
| ゆっくり魔理沙 | ちなみに、この条文の後32条から40条では、 |
| ゆっくり魔理沙 | 適正手続の保障を具体化した条文が並んでいる。 |
| ゆっくり霊夢 | じゃあ、31条はこのくらいなのかな? |
| ゆっくり霊夢 | 次の条文に進む? |
| ゆっくり魔理沙 | それでいいのか? |
| ゆっくり霊夢 | え?どういうこと? |
| ゆっくり魔理沙 | 31条は『法律の定める手続きによらなければ』刑罰を
課せられないとされているわけだけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | この『法律』にさえのっとっていればそれでいいのか? |
| ゆっくり魔理沙 | この法律の中身が理不尽だったらどうだ? |
| ゆっくり霊夢 | 確かに、理不尽な法律に従ったから『適正だ』と
言われても納得はしづらいよね。 |
| ゆっくり魔理沙 | そうだよな。 |
| ゆっくり魔理沙 | そこで、31条が保障しているのは、手続きだけか、
手続きを定める法律の中身まで含むのかが問題になる。 |
| ゆっくり霊夢 | そりゃ、手続きの中身まで含むでしょ。 |
| ゆっくり魔理沙 | というのが通説でもあり、判例は、 |
| ゆっくり魔理沙 | 徳島市公安条例事件において、 |
| ゆっくり魔理沙 | どんな行為が犯罪になるのか不明確な場合は、
憲法31条に反し無効とされることを示した。 |
| ゆっくり魔理沙 | つまり法律の中身も適正であることが
必要と解釈されたわけだな。 |
| ゆっくり霊夢 | 当然よね。 |
| ゆっくり魔理沙 | ちなみに、明確性は普通の人の理解で
犯罪かどうか判別できるくらいの明確さが必要だぜ。 |
| ゆっくり霊夢 | 私の理解は普通の人の理解になるのかしら? |
| ゆっくり魔理沙 | あと、他にも31条には気になることがある。 |
| ゆっくり霊夢 | まだあるの? |
| ゆっくり魔理沙 | 31条は刑罰が科せられる場合に適正な手続きを求める
条文であるように読めるが、 |
| ゆっくり魔理沙 | 文字通りに刑事事件だけに限られるのだろうか? |
| ゆっくり魔理沙 | 例えば、運転免許の違反点数の加算みたいな行政手続の
場合はどうだろう? |
| ゆっくり霊夢 | そっか。 |
| ゆっくり霊夢 | 点数加算されるのも、ちゃんと法律にどういうことすると
違反になるのか書いてくれてないと、 |
| ゆっくり霊夢 | 国の気分で違反にされちゃ、おちおち車なんて
運転できないもんね。 |
| ゆっくり魔理沙 | そういうこと。 |
| ゆっくり魔理沙 | この点、成田新法事件の判例では、 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法31条の定める法定手続の保障が、行政手続きにも
及ぶ可能性があることを示した。 |
| ゆっくり霊夢 | 刑事事件以外も保障の範囲に入るんだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | ただし、刑事手続と行政手続は性質が違うから、 |
| ゆっくり魔理沙 | 行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与
えるかどうかは、 |
| ゆっくり魔理沙 | 行政処分により制限を受ける権利利益と行政処分により
達成しようとする公益を比較して考えるべきで、 |
| ゆっくり魔理沙 | 常に、そのような機会を与えることを必要とするもの
ではないとしてるけどな。 |
| ゆっくり霊夢 | まったく刑事手続と同じってわけにはいかないか。 |
| ゆっくり魔理沙 | それじゃ、この31条が憲法改正草案でどうなってる
かみてみよう。 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法改正草案の31条では、手続の前に『適正な』という
文言が追加された。 |
| ゆっくり霊夢 | 憲法の条文から『適正』であることを求めるように
なったんだから、 |
| ゆっくり霊夢 | いいことじゃない? |
| ゆっくり魔理沙 | いや、そうは単純に喜べないと思う。 |
| ゆっくり霊夢 | どうして? |
| ゆっくり魔理沙 | 今までもそうだったけど、たった1つの単語が入るだけで
解釈の仕方が変わるということは大いにある。 |
| ゆっくり魔理沙 | 今回の例でいうと、 |
| ゆっくり魔理沙 | 『適正な』が入ることによって、 |
| ゆっくり魔理沙 | 法律で定められた手続は適正であると読める。 |
| ゆっくり霊夢 | つまり? |
| ゆっくり魔理沙 | つまり、法律にさえのっとっていれば、 |
| ゆっくり魔理沙 | 現憲法下では適正かどうかが問題になった
法律に定められた手続の中身が、 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法改正草案では問題にならなくなり、 |
| ゆっくり魔理沙 | 法律に定められてさえいれば、それにのっとって
手続をすすめるのは適正な手続であるということになり、 |
| ゆっくり魔理沙 | 法律さえあれば国民を好きにできるということを
憲法上認めることになる可能性がある。 |
| ゆっくり霊夢 | 12条の『公益及び公の秩序』を根拠とした人権侵害が、
いよいよ具体的になってくるってことなのね。 |
| ゆっくり魔理沙 | 察しがいいな。 |
| ゆっくり魔理沙 | 霊夢の言う通り、 |
| ゆっくり魔理沙 | 12条をはじめとした、今まで見てきた条文たちから
考えられる狙いとも一貫性があるわけだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | あくまでも、そのように考えられる可能性がある
ってだけだがな。 |
| ゆっくり霊夢 | いや、そういう可能性があるだけで怖いよ。 |
| ゆっくり魔理沙 | というあたりで、次の32条に進もう。 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法32条は『何人も、裁判所において裁判を受ける権利
を奪はれない。』となっていて、 |
| ゆっくり魔理沙 | 裁判を受ける権利について定められている。 |
| ゆっくり霊夢 | 誰でも裁判所で裁判してもらえる権利が
あるってことだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | 逆にいえば、裁判所以外のところで裁判されることは
ないということも保障しているといえる。 |
| ゆっくり魔理沙 | このことは、昭和24年の判例でも言われているところで、 |
| ゆっくり魔理沙 | 国民は憲法や法律で定められた裁判所のみで裁判を受ける
権利があり、 |
| ゆっくり魔理沙 | 裁判所以外の機関によって裁判されないことを保障
したものといっている。 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法では76条で、最高裁判所と法律で定める
下級裁判所の存在を示し、 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法81条により、最高裁判所が終審裁判所であることを
示している。 |
| ゆっくり魔理沙 | そして、このあたりのことを具体化している
裁判所法により、 |
| ゆっくり魔理沙 | 下級裁判所は、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所
及び簡易裁判所となっている。 |
| ゆっくり霊夢 | 最高裁判所がラスボスとしてドンと構えてるのね。 |
| ゆっくり魔理沙 | ここらあたりについて詳しくは、
また司法の章に進んだときに話そうと思う。 |
| ゆっくり霊夢 | ほんとう? |
| ゆっくり魔理沙 | たぶん? |
| ゆっくり魔理沙 | ちなみに、最高裁判所がラスボスであること以外は、
立法に委ねられるとするのが判例だ。 |
| ゆっくり魔理沙 | つまり、ラスボスまでどういう流れでいきつくのかは、
法律次第ってことだな。 |
| ゆっくり魔理沙 | 日本では同じ事件について3回まで裁判を受けることが
できる三審査制を採用しているぜ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 原則として、地方裁判所や家庭裁判所から高等裁判所、
最高裁判所、という流れだ。 |
| ゆっくり霊夢 | え~、結局ラスボスの最高裁判所次第なら、
最高裁判所だけで判断したほうがよくない? |
| ゆっくり魔理沙 | まあ、その良し悪しは置いとくとして、 |
| ゆっくり魔理沙 | 現憲法下でも一審制にするのは可能だと思う。 |
| ゆっくり魔理沙 | 法律次第だしな。 |
| ゆっくり魔理沙 | ただし、法律次第だとしても立法で好き勝手できる
というわけじゃない。 |
| ゆっくり魔理沙 | 判例では、 |
| ゆっくり魔理沙 | ある種の事件について他と異なる特別の審級制度を
定めるのは、 |
| ゆっくり魔理沙 | それなりの合理的な理由が必要とされている。 |
| ゆっくり霊夢 | そういうものなのね。 |
| ゆっくり魔理沙 | 例えば、犯罪に関する裁判だったら、その結果に
よっては、自由や時間やお金、 |
| ゆっくり魔理沙 | ましてや命を国の力で奪う可能性があるし、 |
| ゆっくり魔理沙 | 他の分野の裁判でも人の人生を大きく変える
結果を生み出す可能性がある。 |
| ゆっくり魔理沙 | だとしたら、3回くらい裁判する慎重さは、人権を
守る上で大事だと思うけどな。 |
| ゆっくり魔理沙 | といったところで、32条が憲法改正草案でどう
変わっているのか見てみよう。 |
| ゆっくり霊夢 | これは私予想できるよ。 |
| ゆっくり霊夢 | 今の憲法が『裁判を受ける権利を奪はれない』と
なっていて、法律でも権利を制限できないから、 |
| ゆっくり霊夢 | 国が好き勝手するために、 |
| ゆっくり霊夢 | 『権利を保障する』か『有する』あたりに
変えてるんじゃないかな? |
| ゆっくり魔理沙 | すごいな。 |
| ゆっくり魔理沙 | 霊夢、大正解だぜ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法改正草案の32条は、 |
| ゆっくり魔理沙 | 『何人も、裁判所において裁判を受ける権利を有する』 |
| ゆっくり魔理沙 | となっている。 |
| ゆっくり霊夢 | 当たっちゃったわ。 |
| ゆっくり霊夢 | やっぱり、本気で国民を自由にコントロールしようと
してるんだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | そう思わざるを得ないよな。 |
| ゆっくり魔理沙 | 『奪はれない』だと絶対禁止を意味してるから、
制限されることはないけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | 『有する』だと、裁判を受ける権利を制限できる可能性を
否定できないから、 |
| ゆっくり魔理沙 | 裁判なしで刑罰などが下される可能性が出てくるからな。 |
| ゆっくり霊夢 | 恐ろしすぎる。 |
| ゆっくり霊夢 | そんなことが許されていいの? |
| ゆっくり魔理沙 | 残念ながら、恐怖の改正案はまだまだ続くぜ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 次、いってみよう。 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法33条は、逮捕に原則権限を有する司法官憲が発した
令状が必要なことを定めているぜ。 |
| ゆっくり魔理沙 | いわゆる『逮捕令状主義』という原則の根拠に
なっている。 |
| ゆっくり魔理沙 | もちろん、現行犯は除くけどな。 |
| ゆっくり霊夢 | ちなみに、現行犯逮捕は警察じゃない一般人でも
できるんだよね? |
| ゆっくり魔理沙 | 前にそんな話をしたな。詳しくはこちらの動画を
みてみてくれ。 |
| ゆっくり霊夢 | ところで、『司法官憲』って何者? |
| ゆっくり魔理沙 | 裁判官のことだ。 |
| ゆっくり霊夢 | だったら、なんで裁判官って言わないの? |
| ゆっくり魔理沙 | もっというと、 |
| ゆっくり魔理沙 | 司法官憲は、本来司法に関する職務を行う公務員を
指すので、裁判官のみならず、 |
| ゆっくり魔理沙 | 検察官や司法警察職員も含まれる。 |
| ゆっくり霊夢 | ますますわからないわ。 |
| ゆっくり魔理沙 | このような状態になったのにも
理由があるんだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法制定議会の審議において、 |
| ゆっくり魔理沙 | 政府は33条の司法官憲には、本来の意味通り、検察官
や司法警察職員まで含むと理解していたようなんだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | ただ、後に総司令部から『司法官憲』は裁判官に限る
という見解が伝えられたため、 |
| ゆっくり魔理沙 | 今のように『司法官憲』という文言で裁判官のみを指す
という状況になったみたいだな。 |
| ゆっくり霊夢 | 裁判官以外も令状が出せるって、
結構緩く考えていたんだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | そうだな。 |
| ゆっくり魔理沙 | この緩く考えていたことは、現行犯逮捕以外の令状主義の
例外を許さないような33条においても、 |
| ゆっくり魔理沙 | 令状を逮捕後に請求するという緊急逮捕という例外が
違憲にならないとする |
| ゆっくり魔理沙 | 遠回しな根拠になっていたりもする。 |
| ゆっくり霊夢 | 確かに、33条だけ見てると、現行犯逮捕以外は令状ないと
ダメっていう風に読めるね。 |
| ゆっくり魔理沙 | 判例では、緊急逮捕できる場合を重い罪の犯罪に限り、 |
| ゆっくり魔理沙 | さらに厳しい要件の元で、緊急でやむをえない場合にのみ
に限っているので、 |
| ゆっくり魔理沙 | 33条の趣旨に反しないから違憲じゃないとした。 |
| ゆっくり霊夢 | 33条の趣旨って何? |
| ゆっくり魔理沙 | 33条の趣旨は、逮捕に裁判官の令状を
必要とすることで、 |
| ゆっくり魔理沙 | 国が気に入らない人物だから逮捕、みたいな不当な
逮捕を防いで、 |
| ゆっくり魔理沙 | 個人の身体の自由を保障することにある。 |
| ゆっくり魔理沙 | 緊急逮捕は、確かに令状が後になってしまうけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | 令状が必要となる点では変わらないし、もろもろの
厳しい条件もあるんだから、 |
| ゆっくり魔理沙 | 国による不当な逮捕が防げてることに変わりないでしょ。 |
| ゆっくり魔理沙 | ということが言いたいんじゃないか。 |
| ゆっくり霊夢 | なるほどねえ。 |
| ゆっくり魔理沙 | ちなみに、 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法改正草案では、『権限を有する司法官憲』が
『裁判官』に変わっているくらいの変化だ。 |
| ゆっくり霊夢 | 意外と変わりないのねえ。 |
| ゆっくり魔理沙 | まあ、今までの憲法改正草案であれば、
法律を変えることで、 |
| ゆっくり魔理沙 | 国の気に入らない人物の逮捕を正当化できるので、 |
| ゆっくり魔理沙 | 33条をいじる必要性はなかったんじゃないかな。 |
| ゆっくり霊夢 | なんとまあ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 続いて34条に進もう。 |
| ゆっくり魔理沙 | 34条は逮捕された後の話。 |
| ゆっくり魔理沙 | 抑留や拘禁について人権を守るための条文になっている。 |
| ゆっくり霊夢 | そもそも『抑留』とか『拘禁』って何? |
| ゆっくり魔理沙 | 抑留とは短期的な身体拘束で、拘禁は比較的長期的な
身体拘束を意味している。 |
| ゆっくり魔理沙 | どちらにしても身体拘束のことを指してるんだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | ちなみに、抑留は刑事訴訟法の逮捕や勾引にあたり、
拘禁は勾留にあたるとされているな。 |
| ゆっくり魔理沙 | つまり、34条が受け持つ範囲は刑が確定する前の
身体拘束なんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | 今話題?の刑法改正による拘禁刑は、この34条の『拘禁』
ではないわけね。 |
| ゆっくり魔理沙 | そういうこと。 |
| ゆっくり霊夢 | じゃあ34条の最初の文は、身体拘束される場合は
その理由を伝えられて |
| ゆっくり霊夢 | さらにすぐ弁護士に依頼する権利を与えられなければ
ならないってことなんだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | そうだ。 |
| ゆっくり霊夢 | さらに続きの文は、長期の身体拘束をする場合は
正当な理由がないとダメだし、 |
| ゆっくり霊夢 | 要求すれば、その理由をすぐに本人と弁護士の出席する
公開の法廷で示さなければならないってことか。 |
| ゆっくり魔理沙 | そういうこと。 |
| ゆっくり魔理沙 | 多くの人は、法律に詳しいわけじゃない。 |
| ゆっくり魔理沙 | 一方、警察や検察は法律に詳しい上に |
| ゆっくり魔理沙 | 人を捕まえて拘束することができるという権力も
担っている。 |
| ゆっくり魔理沙 | 力量の差は歴然だわな。 |
| ゆっくり霊夢 | 一人だとなす術ないだろうね。 |
| ゆっくり魔理沙 | だから、身体拘束される場合は『弁護人』法律のプロで
ある弁護士に守ってもらえる権利を与えているわけだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 身体拘束というのはかなり強い人権侵害にあたる。 |
| ゆっくり魔理沙 | だから、理由もいえないのにするのは許されないし、 |
| ゆっくり魔理沙 | ちゃんと拘束される側が身を守れるようにしている
わけだな。 |
| ゆっくり霊夢 | ありがたやあ。 |
| ゆっくり魔理沙 | ただ、繰り返しになるし当たり前だけど、
手続にのっとって身体拘束されたなら、 |
| ゆっくり魔理沙 | 手続にのっとって身を守る必要はあるぜ。 |
| ゆっくり霊夢 | 実力で脱走はダメなのね。 |
| ゆっくり魔理沙 | それこそ犯罪者になるぜ。 |
| ゆっくり魔理沙 | ちなみに、『弁護人に依頼する権利』は、 |
| ゆっくり魔理沙 | 判例によると、 |
| ゆっくり魔理沙 | 単に被疑者が弁護人に依頼するのを国側が邪魔しない
ということにとどまらず、 |
| ゆっくり魔理沙 | 弁護人に相談し、アドバイスをもらうなど援助を受ける
機会をもつことをも保障しているとされる。 |
| ゆっくり魔理沙 | これを受けているのが刑事訴訟法39条1項に定められて
いる、いわゆる『接見交通権』だ。 |
| ゆっくり魔理沙 | これにより、被疑者や被告人は弁護人とは自由な接見、
つまり面会ができることになっている。 |
| ゆっくり霊夢 | 捕まってる間は味方が周りに1人もいないわけだから、 |
| ゆっくり霊夢 | 弁護人と話せるだけでも安心感が違いそうよね。 |
| ゆっくり魔理沙 | ただし、絶対に自由ってわけではない。 |
| ゆっくり魔理沙 | 捜査だって大事だ。 |
| ゆっくり魔理沙 | なので、刑事訴訟法39条3項では『捜査のため必要が
あるとき』に限り、 |
| ゆっくり魔理沙 | 接見の日時や場所、時間を指定することができる、 |
| ゆっくり魔理沙 | つまり、接見の自由を制限できるとしているんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | うーん。 |
| ゆっくり霊夢 | これだと、ちょっと『捜査のため必要があるとき』という
文言にかこつけて、 |
| ゆっくり霊夢 | じゃんじゃん制限されちゃいそう。 |
| ゆっくり魔理沙 | 判例では、この『捜査のために必要があるとき』とは、 |
| ゆっくり魔理沙 | 『接見等を認めると取調べの中断等により捜査に
顕著な支障が生ずる場合』に限られるとした。 |
| ゆっくり魔理沙 | そして、この『接見等を認めると取調べの中断等により
捜査に顕著な支障が生ずる場合』とは、具体的には、 |
| ゆっくり魔理沙 | 弁護人等から接見等の申出を受けた時に、 |
| ゆっくり魔理沙 | 捜査機関が現に被疑者を取調べ中である場合や実況見分、
検証等に立ち会わせている場合、 |
| ゆっくり魔理沙 | また、近いうちに取調べ等をする確実な予定があって、 |
| ゆっくり魔理沙 | 弁護人等の申出に沿った接見等を認めたのでは、 |
| ゆっくり魔理沙 | その取調べ等が予定どおり開始できなくなるおそれが
ある場合などのことをいうんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | 現にやっていたり、予定が狂うくらいじゃないと、
捜査のために必要っていえないんだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | たとえ、『捜査のために必要があるとき』という要件を
満たしたとしても、 |
| ゆっくり魔理沙 | 捜査機関は弁護士と協議してできる限り速やかな接見等
のための日時を指定し、 |
| ゆっくり魔理沙 | 被疑者が弁護士等と防御の準備をすることができる
ような措置をとらなければならない、 |
| ゆっくり魔理沙 | とも判例は言っている。 |
| ゆっくり魔理沙 | それだけ、たとえ何らかの罪を犯したと思われる人間の
身体拘束だけれども |
| ゆっくり魔理沙 | その人権侵害の度合いは大きい、ということだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 裁判で有罪が確定するまでは、
犯罪者ではないわけだしな。 |
| ゆっくり霊夢 | 世間的には捕まった段階で、
犯罪者みたいな扱いになることが多いけどね。 |
| ゆっくり魔理沙 | そういう風潮は確かにあるな。 |
| ゆっくり魔理沙 | だけど、そう考えてしまうのはいろんな原因が入り
混じっているから、 |
| ゆっくり魔理沙 | いくら法的には逮捕されたからといって犯罪者じゃ
ないよと説明したところで、 |
| ゆっくり魔理沙 | その風潮がなくなることはないだろうな。 |
| ゆっくり霊夢 | 清く正しく美しく生きていこう。 |
| ゆっくり魔理沙 | せいぜい頑張ってくれ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法34条の続きを見てみると、 |
| ゆっくり魔理沙 | 『何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず』とある。 |
| ゆっくり魔理沙 | つまり、比較的長期的な身体拘束の場合は正当な理由
が必要だということになる。 |
| ゆっくり魔理沙 | 刑事訴訟法60条1項では、勾留の要件として、 |
| ゆっくり魔理沙 | 『被告人が罪を犯したことを疑うに足りる
相当な理由がある場合』で、 |
| ゆっくり魔理沙 | 被告人が住所不定、 |
| ゆっくり魔理沙 | 被告人が証拠を隠滅すると疑うに足りる相当な理由が
あるとき、 |
| ゆっくり魔理沙 | 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由
があるとき、 |
| ゆっくり魔理沙 | のいずれかに該当することが必要であると定めている。 |
| ゆっくり霊夢 | これが『正当な理由』になるってことか。 |
| ゆっくり魔理沙 | そういうことだな。 |
| ゆっくり魔理沙 | もちろん、要件が揃っているからといって、必ずしも
勾留されるわけではない。 |
| ゆっくり魔理沙 | 60条1項も勾留『できる』となっていて、 |
| ゆっくり魔理沙 | 勾留が必要かどうかの判断は裁判所に委ねられている。 |
| ゆっくり霊夢 | 身体拘束は強い人権の制限になるから
慎重になっているわけね。 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法34条ではさらに、『要求があれば、その理由は、
直ちに本人及びその弁護人の出席する |
| ゆっくり魔理沙 | 公開の法廷で示されなければならない』となっている。 |
| ゆっくり霊夢 | 堂々と言える理由じゃないなら
身体拘束なんてするなってことか。 |
| ゆっくり魔理沙 | 34条では3つのことを言っているが、どれも権力側が
不当に個人を身体拘束することに |
| ゆっくり魔理沙 | ブレーキをかける内容であるといえるな。 |
| ゆっくり魔理沙 | さて、では34条は憲法改正草案ではどうなっている
だろうか? |
| ゆっくり霊夢 | 33条もほとんど変わりなかったし、
34条も変わってないんじゃないの? |
| ゆっくり霊夢 | ここを変えなくても好き勝手されることに変わりは
なさそうだし。 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法改正草案の34条は、現憲法の内容を項分けしている。 |
| ゆっくり魔理沙 | 1項は、 |
| ゆっくり魔理沙 | 『何人も、正当な理由がなく、若しくは理由を直ちに
告げられることなく、 |
| ゆっくり魔理沙 | 又は直ちに弁護人に依頼する権利を与えられることなく、
抑留され、又は拘禁されない。』 |
| ゆっくり魔理沙 | となっている。 |
| ゆっくり霊夢 | うん?なんか変わった。 |
| ゆっくり魔理沙 | 変わったぜ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 見た目は地味な変化だけど、そこから導かれる結果は
大きく変わってしまうものになっている。 |
| ゆっくり霊夢 | わからないなあ。 |
| ゆっくり魔理沙 | じゃあ、比較してみよう。 |
| ゆっくり霊夢 | うーん? |
| ゆっくり霊夢 | 抑留にも『正当な理由』が必要になった? |
| ゆっくり魔理沙 | 確かにそうともいえるけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | 接続詞に注目してくれ。 |
| ゆっくり霊夢 | そういえば、現憲法であった『且つ』がなくなってるね。 |
| ゆっくり魔理沙 | そうなんだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 現憲法では、『理由を直ちに告げられ、『且つ』直ちに
弁護士に依頼する権利を与へられなければ、』 |
| ゆっくり魔理沙 | 抑留や拘禁はされないという風になっているわけだけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | 『且つ』という接続詞は、その前後に書かれている条件
をどちらも満たす必要があることを意味している。 |
| ゆっくり魔理沙 | つまり、抑留や拘禁をするためには、理由を直ちに
告げることと、弁護士に依頼する権利を与えること、 |
| ゆっくり魔理沙 | これら両方が行われてはじめて可能になる
ということになる。 |
| ゆっくり霊夢 | はえー。 |
| ゆっくり魔理沙 | 一方、憲法改正草案に出てくる『若しくは』は、 |
| ゆっくり魔理沙 | 前後に書かれている条件のうち、どちらか1つを満たせば
よいということを意味している。 |
| ゆっくり魔理沙 | さらに、これに続く『又は』は、
いろんな意味を含む言葉だけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | ここでは『若しくは』と同じような意味あい使われていて |
| ゆっくり魔理沙 | 前の文に続いて満たせばよい条件を追加している。 |
| ゆっくり魔理沙 | つまり、 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法改正草案の場合は、 |
| ゆっくり魔理沙 | 正当な理由がある、 |
| ゆっくり魔理沙 | 理由を直ちに告げる、 |
| ゆっくり魔理沙 | 直ちに弁護士に依頼する権利を与える、 |
| ゆっくり魔理沙 | いずれか1つの条件が満たされれば、抑留や拘禁ができる
ということを定めていることになる。 |
| ゆっくり霊夢 | え? |
| ゆっくり霊夢 | ということは、正当な理由がなくても、 |
| ゆっくり霊夢 | とりあえず理由を告げさえすれば、
拘禁してもいいってこと? |
| ゆっくり霊夢 | 身体拘束のハードル下がってるじゃん。 |
| ゆっくり魔理沙 | それどころか、 |
| ゆっくり魔理沙 | 弁護士に依頼する権利も与える必要もないわけだから、 |
| ゆっくり魔理沙 | 捕まったら自分を守る手段すら持てないことになる。 |
| ゆっくり霊夢 | 怖すぎる。 |
| ゆっくり魔理沙 | だから言っただろ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 見た目は地味な変化だけど、そこから導かれる結果は
大きく変わってしまうって。 |
| ゆっくり魔理沙 | そして2項は、 |
| ゆっくり魔理沙 | 『拘禁された者は、拘禁の理由を直ちに本人及びその
弁護人の出席する公開の法廷で示すことを求める |
| ゆっくり魔理沙 | 権利を有する』となっている。 |
| ゆっくり魔理沙 | この部分は、現憲法では『公開の法廷で示されなければ
ならない』となっているよな。 |
| ゆっくり霊夢 | このパターンは絶対しなければならない、から
制限可能な場合をつくるやつだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 権利は『公益及び公の秩序』に反してはならないわけ
だから、 |
| ゆっくり魔理沙 | まあ、そういうことだよな。 |
| ゆっくり魔理沙 | しかも、この権利は『拘禁された者』に限定されている。 |
| ゆっくり魔理沙 | 現憲法では、誰が求めるなんて限定はないし、 |
| ゆっくり魔理沙 | 刑事訴訟法82条2項では、拘禁された本人以外にも、 |
| ゆっくり魔理沙 | 『勾留されている被告人の弁護人、法定代理人、保佐人、
配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人も』 |
| ゆっくり魔理沙 | 勾留の理由の開示を請求することができるとしている。 |
| ゆっくり霊夢 | しれっとめちゃくちゃ厳しくなってる。 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法改正草案だと憲法で拘禁された者に限定
されるから、 |
| ゆっくり魔理沙 | 刑事訴訟法82条2項のような請求者の範囲が広がるような
法律も削除されるだろうな。 |
| ゆっくり霊夢 | 31条や32条もあいまって、もう国民は国が思うがまま
なのがどんどん具体化されていっているね。 |
| ゆっくり魔理沙 | 国が気に入らない人間は、とりあえず理由をつけて
拘束しておく、 |
| ゆっくり魔理沙 | ということがまかり通ることになるだろうな。 |
| ゆっくり霊夢 | もう溜息しかでない。 |
| ゆっくり魔理沙 | さて、気を取り直して35条に進もうか。 |
| ゆっくり霊夢 | どう取り直したらいいんだろうか。 |
| ゆっくり魔理沙 | 35条1項は、家や物の捜査についての令状主義について
定められている。 |
| ゆっくり魔理沙 | いくら国家権力であっても、勝手に人の家に入って調べる
ことはできないし、 |
| ゆっくり魔理沙 | 書類や所持品について、
調べたり押収を受けることはない。 |
| ゆっくり魔理沙 | 何人もそういう権利を持っていると。 |
| ゆっくり魔理沙 | この条文は、生活の平穏やプライバシー、財産を守る
ものだといえるな。 |
| ゆっくり霊夢 | 『何かあるかも?』程度の疑いでは
調べることはできないんだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | そう。 |
| ゆっくり魔理沙 | 令状も、正当な理由に基づかないとダメだし、 |
| ゆっくり魔理沙 | さらに捜索する場所や押収する物を
明示してなければならない。 |
| ゆっくり魔理沙 | つまり、かなり濃厚な疑いがないと、
調べることができないってことだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | ただし、33条による逮捕があった場合は別。 |
| ゆっくり魔理沙 | すでに身体の自由を制限するほどの根拠を持っているの
だから、 |
| ゆっくり魔理沙 | 財産などの権利は当然制限されるってわけだ。 |
| ゆっくり霊夢 | じゃあ捜索とかって、令状がなきゃまったくできないの? |
| ゆっくり魔理沙 | そんなことはないぜ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 警察が『捜査させて』とお願いして、 |
| ゆっくり魔理沙 | 捜索される側が自由意思で『いいですよ』と同意して
捜査する場合は、 |
| ゆっくり魔理沙 | 無理やり強制していない『任意』なので問題ない。 |
| ゆっくり魔理沙 | 刑事訴訟法197条では、『強制の処分は、この法律に特別
の定のある場合でなければ、これをすることができない』 |
| ゆっくり魔理沙 | として、暗に任意の捜査を認めている。 |
| ゆっくり霊夢 | 特別の定? |
| ゆっくり魔理沙 | ざっくりいうと令状をとれってことな。 |
| ゆっくり霊夢 | なるほど。 |
| ゆっくり霊夢 | でも、どこまでが任意捜査なんだろう? |
| ゆっくり霊夢 | ドラマで見たことあるような
潜入捜査なんかは、 |
| ゆっくり霊夢 | こっそり潜入するから意味があるわけで、 |
| ゆっくり霊夢 | 相手に許可を求めてたら
意味ないでしょ? |
| ゆっくり霊夢 | なんか任意か強制かの境界線はもめそうだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | 気づいちゃった? |
| ゆっくり魔理沙 | 確かに難しいところだよな。 |
| ゆっくり魔理沙 | ここでは任意と強制の境界線の判例として
2つほど取り上げるな。 |
| ゆっくり魔理沙 | 1つ目はおとり捜査。 |
| ゆっくり霊夢 | 警察が犯罪者の仲間みたいなフリして捜査するやつ? |
| ゆっくり霊夢 | まさに潜入捜査だ。 |
| ゆっくり魔理沙 | まあ、そうだな。 |
| ゆっくり魔理沙 | 判例的には、『捜査機関又はその依頼を受けた
捜査協力者が、その身分や意図を相手方に秘して |
| ゆっくり魔理沙 | 犯罪を実行するように働き掛け,相手方がこれに応じて
犯罪の実行に出たところで |
| ゆっくり魔理沙 | 現行犯逮捕等により検挙するもの』
と定義づけられているな。 |
| ゆっくり魔理沙 | だから、警察自らじゃなく、協力者がいる場合もある。 |
| ゆっくり魔理沙 | で、結論から入ってしまうけど、特定の場合には、
おとり捜査は任意捜査であるとした判例がある。 |
| ゆっくり霊夢 | 相手に了解をとってなくても
任意になるんだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 直接の被害者がない犯罪の捜査で、普通に捜査するだけ
じゃしっぽをつかめない場合、 |
| ゆっくり魔理沙 | 怪しいと思われるやつにおとり捜査をするのは、
任意捜査であるとしたんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | どうして了解をとってないのに
任意捜査といえるの? |
| ゆっくり魔理沙 | この判例で明確に理由は述べられてないけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | 被害者がいない犯罪だったら
証拠がとりづらいのと、 |
| ゆっくり魔理沙 | 犯罪を実際するかどうかは自由意思
って考えたのかもしれないな。 |
| ゆっくり魔理沙 | この判例の事例の場合、被告人がおとり捜査の協力者に
薬物の買い手を紹介してほしい旨の |
| ゆっくり魔理沙 | 電話したことに対応して誘導がはじまったことから、 |
| ゆっくり魔理沙 | 被告人の自由意思ととらえやすいのもあっただろうな。 |
| ゆっくり霊夢 | むしろやる気満々じゃないの。 |
| ゆっくり魔理沙 | もし、捜査側が積極的に犯罪をするように
働きかけるようなことがあった場合には、 |
| ゆっくり魔理沙 | おそらく強制捜査と判断されることも
出てくるんじゃないかな。 |
| ゆっくり霊夢 | 2つ目は? |
| ゆっくり魔理沙 | GPS捜査。 |
| ゆっくり霊夢 | これは昭和前半に作られた
憲法は想定してないだろうなあ。 |
| ゆっくり魔理沙 | だから、判決文を見てもかなり困ったであろうことが
感じられる。 |
| ゆっくり魔理沙 | 順に話していくけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | GPS捜査は、公権力による私的領域への侵入を伴うもの
だといい、 |
| ゆっくり魔理沙 | そして、憲法35条の保障の対象は『住居,書類及び
所持品』に限らず、 |
| ゆっくり魔理沙 | これらに準ずる私的領域に『侵入』されることのない
権利が含まれると解釈した。 |
| ゆっくり霊夢 | プライバシーを守るためね。 |
| ゆっくり魔理沙 | そう。 |
| ゆっくり魔理沙 | 続けて、個人のプライバシーの侵害を可能とする機械を
所持品にこっそり取り付けることによって、 |
| ゆっくり魔理沙 | 普通、そんなものつけられたくないと考えられる個人の
意思に反してその私的領域に侵入するGPS捜査は、 |
| ゆっくり魔理沙 | 個人の意思を制圧して憲法の保障する重要な法的利益を
侵害するものとして、 |
| ゆっくり魔理沙 | 刑事訴訟法上の『強制の処分』に当たるとした。 |
| ゆっくり霊夢 | GPSは無理やり捜査するって感じじゃないけど、
強制になるんだ? |
| ゆっくり魔理沙 | そうなんだ。 |
| ゆっくり魔理沙 | おとり捜査と違って、対象の意思に
反していることが大きいだろうな。 |
| ゆっくり魔理沙 | このGPS捜査の判例では過去の判例を挙げているん
だけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | この過去の判例では、
強制の捜査といえるための強制手段とは、 |
| ゆっくり魔理沙 | 物理的に力ずくで、というものを意味するのではなく、 |
| ゆっくり魔理沙 | 個人の意思を制圧し、身体、住居、財産などに制約を
加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、 |
| ゆっくり魔理沙 | 特別の根拠規定がなければ許すことが相当でないような
手段を意味するとし、 |
| ゆっくり魔理沙 | この程度にあたらないならば、任意捜査で多少手を
出しても許される場合があるとした。 |
| ゆっくり魔理沙 | ただ、そうであっても、何らかの法益を侵害又は侵害する
おそれがあるんだから、 |
| ゆっくり魔理沙 | その多少が許されるかどうかは、
必要性や緊急性などを考えて、 |
| ゆっくり魔理沙 | ケースバイケースで相当と認められる限度において
許されるとしたんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | 力ずくかどうかが問題なんじゃなくて、 |
| ゆっくり霊夢 | 意思に反するかどうかや、
権利侵害の程度が問題なんだね。 |
| ゆっくり魔理沙 | GPSの捜査は、当たり前だけど手を出したわけじゃない。 |
| ゆっくり魔理沙 | だけど、普通嫌だと考えるであろう個人の意思を
無視してやろうとしているわけだし、 |
| ゆっくり魔理沙 | 個人のプライバシーという
重要な法益を侵害することになる。 |
| ゆっくり魔理沙 | だから、この過去の判例を元に考えると、
『強制の処分』だよ。 |
| ゆっくり魔理沙 | ということがいいたくてこの過去の判例を挙げた
わけだな。 |
| ゆっくり霊夢 | なるほどねえ。 |
| ゆっくり魔理沙 | この続きの判決文にGPS捜査のやっかい性が
うかがえるんだけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | GPS捜査は強制の処分である以上、令状が必要になる
はずなんだけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | GPS捜査はどうしても必要な範囲以上の
情報をとりすぎてしまって、 |
| ゆっくり魔理沙 | 国家権力から個人の人権を守るという裁判官による
令状請求の審査を必要としている趣旨を |
| ゆっくり魔理沙 | 満たせない可能性があるし、 |
| ゆっくり魔理沙 | GPSはこっそりつけるから意味があるのに、
事前に令状を見せてしまっては、 |
| ゆっくり魔理沙 | 容疑者が怪しい動きをするはずもなく、捜査にならない。 |
| ゆっくり霊夢 | 絶対便利だけど、
法律的にはほんとやっかいだなあ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 最終的に、 |
| ゆっくり魔理沙 | 個人の人権を守ることと、捜査の成果をあげることの
両方を考えながら、 |
| ゆっくり魔理沙 | とれそうな手段はいろいろ考えられるけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | どのような手段にするかは、立法府がまず考えるのが
望ましいと判例では言っているんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | 今の刑事訴訟法の枠じゃなかなか
いいやりようがないんだね。 |
| ゆっくり霊夢 | そういえばちょっと気になったんだけどさ、 |
| ゆっくり霊夢 | 本来令状をとらないといけない捜査で、令状とらずに
手に入れた証拠ってどうなるの? |
| ゆっくり霊夢 | 証拠として使えない? |
| ゆっくり魔理沙 | 実は、それに関しては憲法や刑事訴訟法には規定が
ないんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | ええ、そうなの? |
| ゆっくり霊夢 | 気になるところだろうに。 |
| ゆっくり魔理沙 | だから、違法な捜査による証拠については、
刑事訴訟法の解釈が必要と判例ではいっている。 |
| ゆっくり魔理沙 | そして、その判例によると、 |
| ゆっくり魔理沙 | 捜査が違法だからって、証拠の姿形が変わるわけ
じゃないし、事件の真相を探ることも大事だから、 |
| ゆっくり魔理沙 | すぐに証拠能力を否定するのはよろしくないと
言っている。 |
| ゆっくり霊夢 | そりゃ捜査が違法だからって、証拠自体が消えてなくなる
わけでもないしね。 |
| ゆっくり霊夢 | でも、なんだかすっきりとしないなあ。 |
| ゆっくり霊夢 | 違法な捜査でも証拠になるんなら、 |
| ゆっくり霊夢 | 違法とわかってても証拠を
とりにいったほうが得じゃない? |
| ゆっくり魔理沙 | もちろん、判例もそのままじゃ済まさない。 |
| ゆっくり魔理沙 | 人権を守ることも大事なので、 |
| ゆっくり魔理沙 | 憲法35条や刑事訴訟法の令状主義の精神をないがしろ
にするような重大な違法があって、 |
| ゆっくり魔理沙 | このまま証拠として使えるということが、 |
| ゆっくり魔理沙 | 将来の違法な捜査の抑制を考えると相当でない
と認められる場合には、 |
| ゆっくり魔理沙 | その証拠能力が否定されるとしているんだ。 |
| ゆっくり霊夢 | 証拠能力が否定される場面はなんとなく
少なそうね。 |
| ゆっくり魔理沙 | どうだろうな。 |
| ゆっくり魔理沙 | さすがに、意図的に違法な捜査で証拠を
集めようとしたら、証拠能力は否定されると思うぜ。 |
| ゆっくり魔理沙 | ちなみに、判例によれば、憲法35条1項は刑事責任を追及
する手続きに関しての条文だけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | それ以外の目的の場合、例えば所得税徴収のための検査
みたいな場合だからといって、 |
| ゆっくり魔理沙 | それだけで35条1項の対象にならない
とするのは相当でないとした。 |
| ゆっくり霊夢 | 31条のときも、似たようなこと言ってたね。 |
| ゆっくり魔理沙 | こんなところで35条2項を見てみよう。 |
| ゆっくり霊夢 | 『各別の令状』ってどういうこと? |
| ゆっくり魔理沙 | それは、捜索と押収について、別々の許可をとらないと
いけないということを意味している。 |
| ゆっくり魔理沙 | 条文を素直に読むと、別々の令状をとらないといけない
ように読めるが、 |
| ゆっくり魔理沙 | 別に一つの令状であっても問題ない。 |
| ゆっくり魔理沙 | このことは判例で説明されている。 |
| ゆっくり霊夢 | 捜索の許可をとったからといって、
そのまま押収することはできないのか。 |
| ゆっくり霊夢 | 徹底してるな。 |
| ゆっくり魔理沙 | 捜査だけされるのと、持っていかれてしまうのでは、 |
| ゆっくり魔理沙 | 権利の侵害度合いが違うしな。 |
| ゆっくり霊夢 | それはごもっとも。 |
| ゆっくり魔理沙 | といったところで、35条は憲法改正草案では
どうなっているかみていこうか。 |
| ゆっくり魔理沙 | 条文をみてもらうと、大きな変化はなく、 |
| ゆっくり魔理沙 | 1項の『侵されない』が『受けない』 |
| ゆっくり魔理沙 | 2項の『権限を有する司法官憲』が『裁判官』に
変わったくらいだ。 |
| ゆっくり霊夢 | 『受けない』に変わったのは不穏な空気残してるけど、 |
| ゆっくり霊夢 | 今まで散々言ってきたところだから、
同じ話の繰り返しになっちゃうね。 |
| ゆっくり魔理沙 | ようやく次回で人権のところ終われそうな
めどが立ったな。 |
| ゆっくり霊夢 | ほんと長かったねえ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 人権のところでほぼほぼ4か月かかったからな。 |
| ゆっくり魔理沙 | 余談だけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | いつも判例調べるとき、検索から裁判所のページが
出てきてくれるんだけど、 |
| ゆっくり魔理沙 | 最近裁判所のホームページがリニューアルされて各判例
のアドレスも変わったみたいで、 |
| ゆっくり魔理沙 | どの判例を検索しても『ページがありません』状態に
なって、いっとき大変だったわ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 今はちゃんと表示されるようになってるけどな。 |
| ゆっくり霊夢 | そういう苦労もあるんだねえ。 |
| ゆっくり魔理沙 | 今は首相が変わったから、憲法改正の可能性も高まって、 |
| ゆっくり魔理沙 | いよいよ改正草案が現実の憲法になる、 |
| ゆっくり魔理沙 | というときもくるのかもしれないな。 |
| ゆっくり霊夢 | 改正するにしても、中身はもっと見直してほしいけどね。 |
| ゆっくり霊夢 | 最後までご視聴ありがとうございました。 |
| ゆっくり魔理沙 | それではまた次回! |
| ゆっくり霊夢 | それではまた次回! |
編集後記
前回の動画からめちゃくちゃ時間かかったと思ってたんですが、見返してみたら、1か月で動画アップできていました(一般的には時間かかってると思うけど。。)。
今回の動画をアップするまでには自分の生活でも変化がありまして、約5年間仕事していた仕事先をやめ(契約的には業務委託なので契約解除)、11月から新たな仕事先で仕事をすることになりました。
といっても、10月から細々とはそこで仕事していたんですけどね。
今までの仕事にプラスして働いていたので、時間的にはかなり厳しかったのですが、仕事終わってから地道に台本作りから動画作成までちょこちょこやったおかげで、1か月で作成できたんだと思います。
今でようやく全体の3分の1くらいまで来ましたが、人権のところ抜けたら楽になるのかしら?
それはそれとして、今回の動画のテーマも濃厚で、サムネイルをつくるの苦労しました。
どのテーマをサムネイルにしたら見てもらいやすくなるのか?
もう全然わかりませんね。
A/Bテストでもしたらいいのでしょうが、結局自己満足ではじめたことなので、それよりも次の動画の作成に力を注ぎたいと思います。
もう一つのチャンネルのほうも、もう放置して1年近くなるので、早くリニューアルして再開したいなあ、とか考えてます。
そのためには圧倒的に時間が足りない。
なんとか時間を捻出しないと。



