動画概要
憲法19条:思想及び良心の自由とは何か
憲法19条は、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない」と定めています。この条文の核心は、私たちが心の中で何を考えても絶対に自由であるということです。たとえ社会的に許されないような過激な考えであっても、心の内にとどまっている限りは制限されません。これを「妄想は自由」とも言い換えられるでしょう。
また、歴史的な踏み絵のように、自分の内心を強制的に告白させられることも禁止されています。これが「沈黙の自由」です。思想良心の自由は、まさに100%の自由として保障されている絶対的な権利なのです。
憲法改正草案による懸念
しかし、自民党の憲法改正草案では、「思想及び良心の自由を保障する」という表現に変更されています。この「保障する」という文言は、国が自由を与える主体であるというニュアンスを持ち、公益や公の秩序を理由に制限される余地が広がる危険性があります。これにより、国が望む思想を押し付けることが可能になるのではないかという懸念が指摘されます。
憲法20条:信教の自由と政教分離
20条は、信教の自由を保障し、宗教と政治の関わりを制限する条文です。信教の自由は、心の中で信じる自由だけでなく、宗教活動や団体活動を行う自由も含まれています。戦前の国家神道の反省から、「いかなる宗教団体も国から特権を受けたり、政治上の権力を行使してはならない」と明記されています。
政教分離の重要性
国が特定宗教に肩入れすると、他の宗教への差別や圧迫につながり、信教の自由が侵害されます。これを防ぐための制度が「政教分離」です。津地鎮祭事件では、地鎮祭が慣習的行為であり、宗教的目的が弱いと判断され合憲とされました。一方、愛媛玉串料事件では、宗教的意義が強く、特定宗教を優遇する行為として違憲とされました。これらの判断基準が「目的効果基準」です。
憲法改正草案の問題点
改正草案では、「政治上の権力を行使してはならない」という文言が削除され、政教分離が弱体化する恐れがあります。また、「特定の宗教のための宗教的活動」という限定が加えられ、解釈次第で国の宗教活動が許容される余地が生まれています。さらに「社会的儀礼又は習俗的行為」を理由に、宗教活動を正当化できる抜け道も作られています。
憲法21条:表現の自由とその価値
表現の自由は、民主主義の根幹を支える権利です。この権利には2つの価値があります。1つ目は、自分らしさを発揮する「自己実現の価値」。2つ目は、国民が政治や社会に参加するための「自己統治の価値」です。SNSでの意見発信からデモや署名活動まで、あらゆる政治参加はこの権利によって支えられています。
知る権利と報道の自由
表現の自由には「知る権利」も含まれます。発信者だけでなく受け手の権利も保障されることで、表現は意味を持ちます。これに基づいて報道の自由が存在し、国民が正しい情報を得るための役割を果たします。しかし、日本のメディアは忖度や自主規制、記者クラブ制度などの問題があり、十分に「国民の知る権利」に奉仕しているとは言えない現状があります。
情報プラットフォーム法(情プラ法)の影響
2025年に施行された情プラ法は、SNS事業者に投稿削除などの義務を課す法律です。誹謗中傷や違法投稿への迅速な対応を目的としていますが、表現の自由や知る権利の侵害につながる可能性があります。とくに、誰でも匿名で削除申請できる制度や短期間での対応義務は、過剰な削除につながり、実質的な検閲や表現の萎縮を引き起こす恐れがあります。
検閲の禁止と通信の秘密
21条2項は検閲を絶対的に禁止し、通信の秘密を守ると定めています。ただし、通信の秘密については例外的に公共の福祉による制限が認められます。テロ防止のための通信傍受など、極めて限定的なケースに限られます。一方で検閲は禁止の例外を認めない強い制約であり、民主主義を守るための重要な防波堤となっています。
憲法改正草案による表現の自由の制限
改正草案では、「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動や結社」を禁止対象として明記しています。一見制限が狭まったように見えますが、実際には「目的」の時点で制限されるため、解釈次第で広範囲に表現が抑えられる危険性があります。さらに、21条の2では国に説明責任を課すとしつつ、国が説明したことに反対する活動を封じる構造が作られているとも解釈できます。
まとめ
憲法19条から21条は、私たちの思想・信仰・表現の自由を守るための極めて重要な条文です。しかし、憲法改正草案では、公益や公の秩序の名のもとにこれらの自由が制限される可能性が示唆されています。思想の自由に踏み込む危険、宗教と政治の結びつきの強化、そして表現の自由の制限。これらは、国民主権と民主主義の根幹を揺るがす改正につながりかねません。
私たちの権利を守るために、これらの議論にしっかりと目を向け、何が本当に大切なのかを考える必要があります。ぜひ皆さんの意見もコメントでお聞かせください。
動画テキスト
キャラクター | セリフ |
ゆっくり魔理沙 | うっし。 |
ゆっくり魔理沙 | 参議院選挙ももう終わっちゃったけど、 |
ゆっくり魔理沙 | またすぐ衆議院選挙あるかもしれないし、 |
ゆっくり魔理沙 | 憲法解説の続きやってくか。 |
ゆっくり霊夢 | ここまできたら選挙関係なく
最後までやるでしょ。 |
ゆっくり霊夢 | 今回は19条からだったよね? |
ゆっくり魔理沙 | そうだな。 |
ゆっくり魔理沙 | 憲法19条は、『思想及び良心の自由は、これを侵しては
ならない』と定められている。 |
ゆっくり魔理沙 | これはつまり、心の中、頭の中は100%自由、
ということだぜ。 |
ゆっくり霊夢 | どんなことを考えても自由ってこと? |
ゆっくり魔理沙 | そうだ。 |
ゆっくり霊夢 | じゃあ、 |
ゆっくり霊夢 | 上司クソむかつくから殴りたいとか |
ゆっくり霊夢 | 一般道を何も気にせずアクセル
フルスロットルで爆走したいとか |
ゆっくり霊夢 | 世界中のイケメンを集めて
逆ハーレムを作りたいとか |
ゆっくり霊夢 | 私が印刷するお金を流通させて
大金持ちになりたいとか |
ゆっくり霊夢 | 魔王になって世界征服したいとか |
ゆっくり霊夢 | でも? |
ゆっくり魔理沙 | どんなに凶悪なことや欲深いことを考えていようが、だ。 |
ゆっくり霊夢 | わお。最高か。 |
ゆっくり魔理沙 | ただし、自由なのは頭や心の中に留まる限り、
という条件がある。 |
ゆっくり魔理沙 | 頭や心の中にあるうちは、どんなことを考えていようが
他人の権利を侵害することはないが、 |
ゆっくり魔理沙 | それを口にしたり、書いたり、何らかの行動に出てしまう
と他人の権利とぶつかる可能性があるし、 |
ゆっくり魔理沙 | 19条の思想良心の自由とは
別の権利の話に広がってしまうからな。 |
ゆっくり霊夢 | まあ、思ってるだけじゃどうしようもないしね。 |
ゆっくり魔理沙 | だからこそ、『妄想』が最強なんだ。 |
ゆっくり霊夢 | でも、人がどう考えているかなんて、本人が口にしない
限り知りようがないから、侵害しようがないでしょ? |
ゆっくり魔理沙 | 霊夢は歴史を知らないな? |
ゆっくり魔理沙 | 例えば、江戸時代にはキリスト教信者を摘発するために、
キリストやマリアの絵の像を踏ませる |
ゆっくり魔理沙 | ということがあったんだぜ。 |
ゆっくり霊夢 | そんなやり方があったとは。 |
ゆっくり魔理沙 | だから、19条では、心の内を表明しない自由、
『沈黙の自由』も認められていると解釈されるし、 |
ゆっくり魔理沙 | 踏み絵のように、心の内の告白を強制
されることも禁止されていると解釈される。 |
ゆっくり霊夢 | 自分の心の中で考えていることを、そのまま
心の中にとどめ続けておけるようになっているんだね。 |
ゆっくり魔理沙 | だから、思想良心の自由は100%
絶対的に自由な権利なんだ。 |
ゆっくり魔理沙 | 普段『絶対』ってあんまり信用ならない言葉だけど、
このときだけは本当に『絶対』って言っていいと思うぜ。 |
ゆっくり霊夢 | というか、絶対自由でないと困るよ。 |
ゆっくり魔理沙 | ちなみに、沈黙の自由ってのは『自分の思想や良心に
ついて話さない自由』のことであって、 |
ゆっくり魔理沙 | たとえば『昨日なにを見たか』みたいな客観的な事実
については、証言を求められることもあるからな。 |
ゆっくり霊夢 | あくまで自分の心の内で『考えていること』だけ
が守られるってことね。 |
ゆっくり魔理沙 | ただ、この思想良心の自由も、
憲法改正草案では危うくなっている。 |
ゆっくり魔理沙 | 憲法改正草案の19条は
こうなっている。 |
ゆっくり霊夢 | はいはいはい。 |
ゆっくり霊夢 | このパターンすでに見ましたよ。 |
ゆっくり霊夢 | 19条が『保障する』って
なってるけど、 |
ゆっくり霊夢 | これはこの権利が生まれながらにあるんじゃなくて、
国が保障してあげてるって言い方で、 |
ゆっくり霊夢 | この場合は、公益とか公の秩序を理由に、
制限してくる可能性があるってことだよね? |
ゆっくり霊夢 | やだ、なにそれ怖い。 |
ゆっくり魔理沙 | 自分で言ってて怖がるなよ。 |
ゆっくり魔理沙 | 12条は、自由や権利全般に通じる話に
なるから、 |
ゆっくり魔理沙 | 基本的に霊夢のいうような
制限が入る可能性が常にあるということになる。 |
ゆっくり霊夢 | ということは、踏み絵みたいに
心の内の告白を強制される場合も出てくるってこと? |
ゆっくり魔理沙 | 国に都合の悪いことを、公益を害したり、
公の秩序を乱すことだと解釈されれば、 |
ゆっくり魔理沙 | 当然、都合が悪いことになりそうな
人間の心の内を強制的に告白させるなんて、 |
ゆっくり魔理沙 | 十分実現可能だろうな。 |
ゆっくり魔理沙 | だって、それが国民の自由及び権利に
伴っている責任と義務なんだから。 |
ゆっくり霊夢 | 公益及び公の秩序に反した人間の自由や権利は、
侵しても問題ないってことか。 |
ゆっくり魔理沙 | だから、『侵してはならない』という言い方に
するはずがないんだ。 |
ゆっくり魔理沙 | そして、19条からは『公益や公の秩序』に反しない、
国が理想とする思想を押し付けていく可能性すら見える。 |
ゆっくり霊夢 | そっかあ。 |
ゆっくり霊夢 | 公益や公の秩序に反する思想を制限していけば、
最終的には国が理想とする思想が残るわけか。 |
ゆっくり霊夢 | それはさておき、憲法改正草案では
19条の2が追加されてたよね? |
ゆっくり魔理沙 | ああ。 |
ゆっくり魔理沙 | 19条が攻めの条文とするなら
19条の2は守りの条文だと私は思う。 |
ゆっくり霊夢 | どういうこと? |
ゆっくり霊夢 | 私には、個人情報の保護が憲法になった
風にしか思えないんだけど。 |
ゆっくり魔理沙 | そうだよな。 |
ゆっくり魔理沙 | 確かに、憲法改正草案のQ&Aでも、
プライバシー権の保障を憲法化したものと書かれている。 |
ゆっくり魔理沙 | プライバシー権は、現憲法には明文の規定がなく、
判例としても明確に言われたことはないが、 |
ゆっくり魔理沙 | 実質的には保障しているんじゃないか
と言われている。 |
ゆっくり魔理沙 | 以前にも話した、承諾なしに個人の容ぼうを撮影されない
自由もプライバシー権の一種だと言われているんだ。 |
ゆっくり霊夢 | 判例ではっきりしないから憲法に
入れ込むわけでしょ。 |
ゆっくり霊夢 | 権利がはっきりしていいことじゃない。 |
ゆっくり魔理沙 | そうはいうが、プライバシー権は、判例で名前こそ
いわれないけど実際は保障されてるようなものだし、 |
ゆっくり魔理沙 | 承諾なしに個人の容ぼうを撮影されない自由も
憲法13条から引っ張り出されてる。 |
ゆっくり魔理沙 | 法律改正だけで国民の権利を廃止できないようにする
ことが19条の2を定めた目的だというが、 |
ゆっくり魔理沙 | そもそも、現状でも法律改正だけで
この権利を廃止することはとても難しいと思われる。 |
ゆっくり魔理沙 | プライバシーの権利を廃止するような法律改正自体が、
現憲法に反する可能性が大きいからな。 |
ゆっくり霊夢 | と、いうことは? |
ゆっくり魔理沙 | 19条の2には別の目的があると
考えられるな。 |
ゆっくり霊夢 | でも、いったい何が目的なの? |
ゆっくり魔理沙 | 私が考えているのが、政治家などを
スキャンダルから守ることが目的だということ。 |
ゆっくり霊夢 | ほう。その心は? |
ゆっくり魔理沙 | 条文の『不当に』という部分が不明確な点だ。 |
ゆっくり魔理沙 | 『不当に』の解釈次第では、国をこの条文の
対象外としながら、 |
ゆっくり魔理沙 | 国の中枢に関わる政治家なんかのスキャンダルなんかを
公式に隠すことができる可能性がある。 |
ゆっくり霊夢 | そんな離れ業が本当にできるの? |
ゆっくり魔理沙 | 私はそう思うな。 |
ゆっくり魔理沙 | 19条の2がプライバシーの権利として独立した条文で
なく、わざわざ思想良心の自由と並べて置いてあるのは、 |
ゆっくり魔理沙 | 19条の2が思想良心の自由と何か
関係しているからだと思われる。 |
ゆっくり霊夢 | 思想とかに関係している感じとは
思えないけど。 |
ゆっくり魔理沙 | それと、不当な手段で個人情報を取得などすることを
禁じる法律は、すでに複数定められている。 |
ゆっくり魔理沙 | 個人情報保護法や、不正アクセス禁止法
とかな。 |
ゆっくり魔理沙 | もし、『不当に』が手段のことを指しているなら、
法律ですでにできていることを、 |
ゆっくり魔理沙 | わざわざ憲法にしようとしているということだ。 |
ゆっくり霊夢 | だから? |
ゆっくり魔理沙 | 今の2つの話をつなぎ合わせると、 |
ゆっくり魔理沙 | 19条2項の『不当に』とは
手段の話ではなく、 |
ゆっくり魔理沙 | 国に不利なことをしようとする意図そのものを、
『不当』と解釈することを狙っている可能性がある。 |
ゆっくり魔理沙 | つまり、国が知られるとまずい個人の情報については、
取得・保有・利用を禁じることができる、 |
ゆっくり霊夢 | そんな無茶苦茶な。 |
ゆっくり魔理沙 | そういう解釈をすれば、国の都合による理由ならば、
『不当に』にあたらないわけで、 |
ゆっくり魔理沙 | 国に都合の悪いことだけを守りながら、
国民の情報は好きにできるという、 |
ゆっくり魔理沙 | 隙のない、まさに鉄壁の守りの条文になる。 |
ゆっくり霊夢 | 無茶苦茶なこと言ってるように聞こえるけど、
私にその可能性は否定する根拠はないわ。 |
ゆっくり魔理沙 | もしかすると令和の治安維持法ができる
なんてこともあるかも? |
ゆっくり魔理沙 | というところで19条はこのあたりにして、
20条に進もう。 |
ゆっくり魔理沙 | 20条は信教の自由について定められている。 |
ゆっくり魔理沙 | 1項から具体的に見ていくと、 |
ゆっくり魔理沙 | 信教の自由は、誰に対しても保障されるものだけど、
すべての宗教団体は国から特権を受けたり、 |
ゆっくり魔理沙 | 政治上の権力を使ってはならないとしている。 |
ゆっくり霊夢 | なんかさっきの思想良心の自由と信教の自由って
似てるっていうか、 |
ゆっくり霊夢 | 宗教だって思想みたいなものだから、 |
ゆっくり霊夢 | 思想良心の自由でそもそも保障されてるんじゃないの? |
ゆっくり魔理沙 | いい気付きだな。 |
ゆっくり魔理沙 | 思想良心の自由と信教の自由の関係性をどう考えるか
という議論はあるんだけども、 |
ゆっくり魔理沙 | 通説では、信教の自由は思想良心の自由の一部
だって考えられてるんだぜ。 |
ゆっくり魔理沙 | 霊夢のいうように、 |
ゆっくり魔理沙 | 宗教を信じるっていうのも、何を信じるかっていう
内心の自由のひとつだからな。 |
ゆっくり霊夢 | じゃあなんでわざわざ20条があるのよ? |
ゆっくり魔理沙 | それはな、宗教って心の中だけじゃなくて、礼拝したり
断食したり、宗教団体に入ったり、行動もともなうだろ? |
ゆっくり魔理沙 | だから、信教の自由は信じる自由だけじゃなくて、
宗教的に行動する自由とか |
ゆっくり魔理沙 | 団体を作ったり、参加したりする宗教的結社の自由
まで含まれてるんだ。 |
ゆっくり霊夢 | 思ったより幅広い権利なんだね。 |
ゆっくり魔理沙 | それに、日本は戦前に『国家神道』っていう形で、
国と宗教がズブズブだった時代もあった。 |
ゆっくり霊夢 | 国家神道? |
ゆっくり魔理沙 | 国家神道っていうのは、もともと日本にあった
自然やご先祖様を大切にする神道を |
ゆっくり魔理沙 | 天皇を大切にするということに
すり替えたものだと思ってくれればいい。 |
ゆっくり魔理沙 | 国の都合でできた国家神道だから、
当然国家神道は優遇されるわけだけど、 |
ゆっくり魔理沙 | 国は国家神道をただの儀礼や道徳教育だ
として、宗教じゃないと言い張った。 |
ゆっくり霊夢 | どうしてそんなことを? |
ゆっくり魔理沙 | 大日本帝国にも信教の自由があって、
宗教と認めると問題があったんだ。 |
ゆっくり霊夢 | でも、条文を見ると条件付きだよね? |
ゆっくり霊夢 | 別に強引にでも広めることはできた
んじゃないの? |
ゆっくり魔理沙 | 信教の自由があるのは、
近代国家の証の一つだった。 |
ゆっくり魔理沙 | 当時の政府は、欧米列強との不平等条約を
なんとかするためにも、 |
ゆっくり魔理沙 | 日本が近代国家であるとアピール
する必要があった。 |
ゆっくり魔理沙 | だから、その体裁を守るためにも、
国家神道を宗教と認めるわけにはいかなかった。 |
ゆっくり魔理沙 | それに、強引に国が宗教を
推し進めることは、多くの敵をつくることにもなる。 |
ゆっくり魔理沙 | 国家神道を宗教と認めた上で、
強引に推し進めることもできただろうが、 |
ゆっくり魔理沙 | メリットよりデメリットのほうが
大きいと考えたんじゃないか。 |
ゆっくり霊夢 | なるほど。 |
ゆっくり魔理沙 | そういう経緯を知ったうえで
20条を見ると、よりわかりやすくなると思う。 |
ゆっくり霊夢 | そのズブズブへの反省が
『いかなる宗教団体も、国から特権を受け、 |
ゆっくり霊夢 | 又は政治上の権力を行使してはならない。』
につながっていくわけね。 |
ゆっくり魔理沙 | そういうことだろうな。 |
ゆっくり魔理沙 | ちなみに、こんな風に国と宗教を分けようとするのを
政教分離っていうんだ。 |
ゆっくり霊夢 | なんとなく聞いたことある。 |
ゆっくり魔理沙 | 政教分離については、3項にも定められているが、 |
ゆっくり魔理沙 | 1項では、特定の宗教について国と結びついて権力を
強めることを抑え込んでいる。 |
ゆっくり魔理沙 | 1つの宗教の力が強くなると、他の宗教が不利になったり
して、結果的に信教の自由を侵害することになるからな。 |
ゆっくり霊夢 | うまいことできてるね。 |
ゆっくり魔理沙 | あと、信教の自由は、思想良心の自由と違って、
行動に出てる分、 |
ゆっくり魔理沙 | 他人の権利などを侵害する可能性もあるので、
公共の福祉によって制限される可能性が出てくる。 |
ゆっくり魔理沙 | 過去に、反社会的な活動をしていたオウム真理教は、
公共の福祉を理由に、解散命令が出された。 |
ゆっくり霊夢 | むちゃくちゃやってたものね。 |
ゆっくり魔理沙 | そう。 |
ゆっくり魔理沙 | だから、判例においても、信仰の内容には触れずに、
反社会的活動の危険性に着目して解散命令を合憲とした。 |
ゆっくり魔理沙 | 解散命令といっても、法人が解散するだけで、 |
ゆっくり魔理沙 | 信者が引き続き宗教行為をすることは
法的には問題ない。 |
ゆっくり魔理沙 | まあ、解散によって法人の財産が
清算されて、今までと全く同じ、 |
ゆっくり魔理沙 | というわけにはいかないかもしれないけど、 |
ゆっくり魔理沙 | 今までやってきたことが事だから
仕方ないよなって感じだ。 |
ゆっくり霊夢 | むしろ、あれだけの事件を起こしておいて、 |
ゆっくり霊夢 | 解散させるだけで済むという、 |
ゆっくり霊夢 | 信教の自由の強さに驚いたよ。 |
ゆっくり魔理沙 | 信教の自由の強さをわかってもらったところで
2項に進むぜ。 |
ゆっくり魔理沙 | 20条2項は、 |
ゆっくり魔理沙 | 『何人も、宗教上の行為、祝典、儀式
又は行事に参加することを強制されない。』 |
ゆっくり魔理沙 | としている。 |
ゆっくり霊夢 | 宗教上の行為なんかを強制しちゃダメ、ってことね。 |
ゆっくり魔理沙 | そうそう。 |
ゆっくり魔理沙 | たとえば、本人が信じてない宗教の儀式に、
無理やり参加させるのはアウトってことだな。 |
ゆっくり霊夢 | でも、宗教のラインって微妙じゃない? |
ゆっくり霊夢 | もともとは宗教上のものだったとしても、すでに生活の
一部みたいになってるものもあるじゃない? |
ゆっくり霊夢 | 初詣とかクリスマスとか。 |
ゆっくり霊夢 | たとえば、学校でそういう行事に
連れていかれるっていうのはどうなるの? |
ゆっくり魔理沙 | そうだな。 |
ゆっくり魔理沙 | そのあたりは“慣習的行事”とされることもあるけど、 |
ゆっくり魔理沙 | 本人が宗教的意味を感じて拒否してる場合は、
問題になるかもしれない。 |
ゆっくり霊夢 | そうだよね。 |
ゆっくり魔理沙 | この問題に対する判例として、
君が代起立斉唱拒否事件が挙げられると考えられる。 |
ゆっくり霊夢 | え?君が代って宗教的なの? |
ゆっくり魔理沙 | 国歌にまでなっているので難しいところだが、 |
ゆっくり魔理沙 | 君が代の『君』は天皇であり、 |
ゆっくり魔理沙 | 歌の内容は天皇をたたえるものだとして、
国家神道と関連づけられて宗教的と考える人もいる。 |
ゆっくり霊夢 | 私は何かにつけて歌われる歌っていう印象だわ。 |
ゆっくり霊夢 | そういう意味では、クリスマスみたいな
立ち位置なのかしら? |
ゆっくり魔理沙 | だから例として挙げてるんだけど? |
ゆっくり霊夢 | すいません。 |
ゆっくり魔理沙 | この事例は、公立高校の教師が卒業式の
国歌斉唱のときに、 |
ゆっくり魔理沙 | 起立する命令に従わず、起立しなかったんだ。 |
ゆっくり魔理沙 | その理由は、判例の言葉を借りると、 |
ゆっくり魔理沙 | 『日本の侵略戦争の歴史を学ぶ在日朝鮮人、
在日中国人の生徒に対し、「日の丸」や「君が代」を |
ゆっくり魔理沙 | 卒業式に組み入れて強制することは、
教師としての良心が許さないという考え』 |
ゆっくり魔理沙 | があったからだったんだ。 |
ゆっくり魔理沙 | 争点は命令が19条の思想良心の自由に反するか
どうかで20条2項を争ったわけではないんだけど、 |
ゆっくり魔理沙 | この判例の中で、学校の行事で
君が代を規律して歌うのは、 |
ゆっくり魔理沙 | 『一般的、客観的に見て、これらの式典における
慣例上の儀礼的な所作としての性質を有するものであり、 |
ゆっくり魔理沙 | かつ、そのような所作として外部からも認識されるもの』
と言ってるんだ。 |
ゆっくり魔理沙 | つまり、ただのお決まりの流れであって、
そこに特定の思想、当然宗教的な思想はなく、 |
ゆっくり魔理沙 | それは、みんなそう思ってるっていうことだと
とらえられるな。 |
ゆっくり霊夢 | まあ確かに私もまったく君が代に思想があるとか
宗教的だとか思ったことはなかったけども。 |
ゆっくり霊夢 | でも、この理屈はちょっと無理あると思うな。 |
ゆっくり霊夢 | だって、この理屈だと多くの人が宗教的だと
思ってなければ、宗教的じゃないみたいに聞こえるよ。 |
ゆっくり霊夢 | これは例えば、ブタを食べることを禁じられた
宗教の人に |
ゆっくり霊夢 | ほとんどの人はブタを食べるのは
ただの食事だと思ってるから、 |
ゆっくり霊夢 | それに宗教的な意味合いなく、
ブタを食べさせても問題ないってことだよね? |
ゆっくり魔理沙 | 極端な例だけど、まあそういうことになるかな。 |
ゆっくり霊夢 | それに、君が代を強制することで、さっき出てきた
19条のとこで出てきた踏み絵みたいな話にならない? |
ゆっくり魔理沙 | いい着眼点だな。 |
ゆっくり魔理沙 | 確かに、みんなが立っている中で、1人だけ座ってたら、 |
ゆっくり魔理沙 | 『あの人は君が代が嫌なんだ』 |
ゆっくり魔理沙 | 『変な信念持ってるんだ』 |
ゆっくり魔理沙 | とか思われる可能性がある。 |
ゆっくり霊夢 | つまり? |
ゆっくり魔理沙 | つまり、起立を強制されることで、自分の思想を
バラすことになってしまっている。 |
ゆっくり霊夢 | つ、つまり? |
ゆっくり魔理沙 | 起立を強制されることは、 |
ゆっくり魔理沙 | 踏み絵のように、19条で禁止されているとされる
『心の内の告白を強制されること』に該当する |
ゆっくり魔理沙 | と考えることもできなくはないはずだ。 |
ゆっくり霊夢 | そ、そう、それ。それが私言いたかった。 |
ゆっくり魔理沙 | ほぼ私に言わせやがって。 |
ゆっくり霊夢 | で、結局裁判はどうなったの? |
ゆっくり魔理沙 | 話そらしたな。 |
ゆっくり魔理沙 | 結論からいえば、命令は19条に反しない
とされた。 |
ゆっくり霊夢 | どうしてよ? |
ゆっくり魔理沙 | この判例には補足意見もたくさん
ついていて、 |
ゆっくり魔理沙 | 難しい問題であったことがうかがえるので
詳しくは判決文をみてほしいんだけど、 |
ゆっくり魔理沙 | ざっくりいうなら、内心自体ではなく起立しない
という行動への制限になるから、 |
ゆっくり魔理沙 | 公共の福祉による制限が認められる
余地がどうしてもあるし、 |
ゆっくり魔理沙 | 公立高校での事例だったというのも
大きいだろう。 |
ゆっくり魔理沙 | 公務員は『全体の奉仕者』だしな。 |
ゆっくり魔理沙 | 私立の学校だったら、また結果は
変わってきたのかもしれない。 |
ゆっくり霊夢 | 難しいことはわからないけども、 |
ゆっくり霊夢 | なんか『起立の強制に思想や宗教的な意味はない』
という思想を強制されているみたいに感じたわ。 |
ゆっくり魔理沙 | 確かにそう感じる人が出てきてもおかしくはないと
思うぜ。 |
ゆっくり魔理沙 | 一つ確実にいえるのは、今後もこの
君が代問題は続くだろうということかな。 |
ゆっくり霊夢 | それはそうだろうね。 |
ゆっくり魔理沙 | さてこの『何をもって宗教的な意味が
あるとするか』という問題は、 |
ゆっくり魔理沙 | 20条3項の問題にもつながっている。 |
ゆっくり魔理沙 | むしろ、こちらのほうが直接的に議論されているな。 |
ゆっくり魔理沙 | 3項は、『国及びその機関は、宗教教育その他いかなる
宗教的活動もしてはならない』としている。 |
ゆっくり魔理沙 | これは、政教分離をしようとする条文だな。 |
ゆっくり霊夢 | 1項でも政教分離って言ってなかった? |
ゆっくり魔理沙 | 1項は宗教団体側からの政教分離だったけど、 |
ゆっくり魔理沙 | 3項は国側からの政教分離について
定めている。 |
ゆっくり霊夢 | 確かに。 |
ゆっくり魔理沙 | だから、『何をもって宗教的な意味があるとするか』
という問題は、 |
ゆっくり魔理沙 | 政教分離に反するかどうかを決める境界線だとも
考えられるからな。 |
ゆっくり霊夢 | ふむふむ。 |
ゆっくり魔理沙 | この点について、有名な判例の一つが、
津地鎮祭事件だ。 |
ゆっくり魔理沙 | 津市が神道の形式で地鎮祭をやって、
そのための費用としてお金を市の公金から出したんだけど |
ゆっくり魔理沙 | 裁判所は工事の安全を願う世俗的な目的だったから合憲、
政教分離に反しないとした事例がある。 |
ゆっくり霊夢 | 目的が宗教的じゃなかったらいいのか。 |
ゆっくり魔理沙 | 一方で、愛媛県が神社に玉串料を
公費で何度も出したという事件も有名だ。 |
ゆっくり魔理沙 | これは、直接的な目的が戦没者の慰霊や
遺族の慰謝を直接の目的にしていたとしても、 |
ゆっくり魔理沙 | 宗教的な意味が強すぎるし直接的な支援になってるって
ことで、これはアウト、政教分離に反し違憲になった。 |
ゆっくり霊夢 | え?目的が大事なんじゃなかったの? |
ゆっくり魔理沙 | 地鎮祭も玉串料も、神道に関係する行為で、 |
ゆっくり魔理沙 | どちらの事例も、20条3項に
違反するかが直接争われた上で、 |
ゆっくり魔理沙 | 合憲・違憲と違う結論になったんだ。 |
ゆっくり霊夢 | どうして結論が分かれたの?
目的が違ったから? |
ゆっくり魔理沙 | 目的ももちろんだけど、
県や市がかかわった結果も気にしてるぞ。 |
ゆっくり魔理沙 | 政教分離に反して違憲かどうかを
判断する基準として、 |
ゆっくり魔理沙 | 津地鎮祭ではじめて
いわゆる『目的効果基準』といわれる |
ゆっくり魔理沙 | 基準が採用された。 |
ゆっくり魔理沙 | 目的効果基準は、
問題となった行為の、 |
ゆっくり魔理沙 | 目的が宗教的かどうか、 |
ゆっくり魔理沙 | その効果が特定の宗教が有利になるか、
または他の宗教が不利になるか |
ゆっくり魔理沙 | という目的と効果の2つの項目について判断する。 |
ゆっくり魔理沙 | どちらか一方でも引っかかると
違憲になるというものだ。 |
ゆっくり霊夢 | それで? |
ゆっくり魔理沙 | 地鎮祭の事例は、地鎮祭自体は外見上神道の宗教的行事
であることを否定できないと認めたにも関わらず |
ゆっくり魔理沙 | 目的はさっきも言ったとおり、
工事の安全を願う世俗的なもので宗教的ではない。 |
ゆっくり魔理沙 | 効果についても、初詣みたいな慣習的なもので、
特定の宗教が有利になったり不利になったりしない。 |
ゆっくり魔理沙 | だから合憲という結果になった。 |
ゆっくり魔理沙 | 一方、玉串料に関しては、 |
ゆっくり魔理沙 | 目的に関して、表向きは戦没者慰霊のため
とされていたが、 |
ゆっくり魔理沙 | 玉串料は宗教上の儀式が行われる場合に
神前に供えられるものであることなどから、 |
ゆっくり魔理沙 | 地鎮祭のように慣習化した儀式とはいえず、
目的に宗教的意義があるといわざるをえず、 |
ゆっくり魔理沙 | また、効果に関しても、 |
ゆっくり魔理沙 | 少額とはいえ、公費で継続的に支出されたことなどを
ふまえて、 |
ゆっくり魔理沙 | 神道という特定の宗教をサポートするものであり、
アウトと判断した。 |
ゆっくり魔理沙 | 結果、政教分離に反し、違憲判決を出したわけだ。 |
ゆっくり霊夢 | ここまで説明してもらって悪いんだけどさ、 |
ゆっくり霊夢 | そもそも20条3項は『いかなる宗教的活動も
してはならない』ってなってるわけだから、 |
ゆっくり霊夢 | 宗教に関わることは一切しては
ダメなんじゃないの? |
ゆっくり霊夢 | どうして目的効果基準みたいな
よくわからん基準が出てくるの? |
ゆっくり魔理沙 | シンプルにいうと、100%国と宗教を
切り離すのは不可能だからだ。 |
ゆっくり魔理沙 | 日本にはいろんな宗教があり、信教の自由を
確実にするために政教分離規定を置く必要があった。 |
ゆっくり魔理沙 | 国がどれかの宗教に肩入れしてしまうと、
他の宗教を迫害したり差別したりなど、 |
ゆっくり魔理沙 | 信教の自由が守れない状態に
なる危険性が高いからな。 |
ゆっくり魔理沙 | 国家神道と結びついていた頃なんて
まさにそうだ。 |
ゆっくり魔理沙 | だから、理想としては霊夢のいうように
国が宗教とはまったく縁がない状態、 |
ゆっくり魔理沙 | あるいは、
どの宗教に対しても中立な状態が望ましくはある。 |
ゆっくり魔理沙 | ただ、政教分離はさっきもいったように、 |
ゆっくり魔理沙 | 信教の自由という国民の権利自体ではなく、 |
ゆっくり魔理沙 | 信教の自由を間接的に守るために設けられた
制度的保障にすぎない。 |
ゆっくり魔理沙 | それに、これもさっきいったように、国と宗教を完全に
分離することは実際不可能に近い。 |
ゆっくり魔理沙 | だから、政教分離の本来の目的である
『信教の自由を確実に守れるようにすること』に |
ゆっくり魔理沙 | 支障が出ないようなら、政教分離は
多少大目に見てもいいじゃない、 |
ゆっくり魔理沙 | みたいなことを判例は言っているんだ。 |
ゆっくり霊夢 | そうよね。人生ってうまくいかないものよね。 |
ゆっくり魔理沙 | その『多少大目に見る』を判断するのに
使われるのが目的効果基準ってわけよ。 |
ゆっくり霊夢 | なるほどね。 |
ゆっくり霊夢 | このあたりのことも、憲法改正草案では
変えられてしまっていそうね? |
ゆっくり魔理沙 | じゃあ、条文を見てみようか。 |
ゆっくり魔理沙 | 20条2項は変更ないので省かせて
もらってるぜ。 |
ゆっくり霊夢 | まず目につくのは、やっぱり『何人に対して~』の
部分が消されてることね。 |
ゆっくり魔理沙 | 霊夢もわかってきたな。 |
ゆっくり魔理沙 | 削除された意図を素直に考えれば、
保障されない人が出てくる、ってことだろうな。 |
ゆっくり霊夢 | またこのパターンね。 |
ゆっくり霊夢 | 『公益及び公の秩序』のために
保障されない可能性もあるのよね。 |
ゆっくり魔理沙 | そういうことだ。 |
ゆっくり魔理沙 | ただ、憲法改正草案の20条1項では、
もう1つ注目したいポイントがある。 |
ゆっくり霊夢 | え?どこどこ? |
ゆっくり魔理沙 | 『政治上の権力を行使してはならない』も
消されてるだろ。 |
ゆっくり霊夢 | ほんとだ。 |
ゆっくり魔理沙 | これは、政教分離という制度的保障を崩し、
信教の自由を侵害することにつながる可能性がある。 |
ゆっくり霊夢 | どういうこと? |
ゆっくり魔理沙 | 政教分離は、さっきも言った通り、
国が特定の宗教に肩入れしないことで、 |
ゆっくり魔理沙 | 他の宗教への干渉や圧迫を防ぎ、
それが信教の自由の保障にもなるという制度だけど、 |
ゆっくり魔理沙 | 政治上の権力が使えるということは、 |
ゆっくり魔理沙 | 政策に特定の宗教団体の意向が入るなど、 |
ゆっくり魔理沙 | 国が特定の宗教に肩入れすることになるわけだ。 |
ゆっくり魔理沙 | それどころか、ある宗教団体の政治上の権力が増せば、 |
ゆっくり魔理沙 | その宗教団体の教えに従うことが
公益及び公の秩序になりかねない。 |
ゆっくり霊夢 | そんなの、特権が与えられなくても、
特権を手に入れてるようなものじゃない? |
ゆっくり霊夢 | 信教の自由もへったくれもないよ。 |
ゆっくり魔理沙 | その通り。 |
ゆっくり魔理沙 | この20条1項は国民の権利を
まったく守らない無意味な条文になる可能性がある。 |
ゆっくり霊夢 | 怖すぎて夜しか寝れそうにないんですけど。 |
ゆっくり魔理沙 | 昼寝できなくなるのは辛いな。 |
ゆっくり霊夢 | どうしてこんな条文作ったのよ? |
ゆっくり魔理沙 | 自民党の状況を考えたら、世界平和統一家庭連合、
旧統一教会に忖度したい部分もあるんだろうけど、 |
ゆっくり魔理沙 | 身近なところで考えると、連立している
公明党の懸念を払拭したいのかな。 |
ゆっくり霊夢 | 公明党の懸念? |
ゆっくり魔理沙 | 公明党と創価学会の関係に
ついては有名な話だろ。 |
ゆっくり魔理沙 | だから、公明党のホームページには
わざわざこんなページが用意されている。 |
ゆっくり霊夢 | へえ。 |
ゆっくり霊夢 | 確かに、火のないところに煙は立たない
っていうもんね。 |
ゆっくり霊夢 | まあでも、憲法違反じゃないって
ことなんでしょ? |
ゆっくり魔理沙 | まあ、そりゃ憲法違反を認めらたら自分たちのことを
否定するになるんだからしないでしょ。 |
ゆっくり魔理沙 | 公明党の説明としては、憲法の政教分離は
国家権力に向けられているから、 |
ゆっくり魔理沙 | 宗教団体が政党を支持するのは
憲法違反にならないと主張している。 |
ゆっくり霊夢 | じゃあ、そうなんじゃないの? |
ゆっくり魔理沙 | ただ、個人的にはちょっと疑問に思ってる。 |
ゆっくり魔理沙 | 私はこのページにリンクのある
動画と参考資料に目を通したんだけど、 |
ゆっくり魔理沙 | 大筋が、政教分離原則の趣旨は
国を規制するものであり、 |
ゆっくり魔理沙 | 宗教団体が政党を支持することは
問題ないという論調なんだ。 |
ゆっくり魔理沙 | だけど、これは私には憲法の条文から
目をそらせる論理に聞こえるんだよな。 |
ゆっくり魔理沙 | だって、現憲法の20条1項にははっきりと |
ゆっくり魔理沙 | 『いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は
政治上の権力を行使してはならない。』と、 |
ゆっくり魔理沙 | 明らかに宗教団体に向けた文言になっている。 |
ゆっくり魔理沙 | だから、政教分離の趣旨が国だけを規制している
と解釈しているならそれは間違いだし、 |
ゆっくり魔理沙 | 憲法の条文から目をそらさせる
論点ずらしに思えるんだ。 |
ゆっくり霊夢 | うん、どうみても宗教団体に向けているように
私にも読めるよ。 |
ゆっくり魔理沙 | この論理の他に、表現の自由を
持ち出して、 |
ゆっくり魔理沙 | 宗教団体の政治活動を規制するのは
良くないみたいな主張もあったりするんだけど、 |
ゆっくり魔理沙 | 別に、宗教団体の政治活動を禁止したとして、 |
ゆっくり魔理沙 | そこに所属する各個人の政治活動まで
禁じるわけではないから、 |
ゆっくり魔理沙 | 問題がないと個人的には思う。 |
ゆっくり魔理沙 | むしろ、政教分離の趣旨を尊重するのではあれば、 |
ゆっくり魔理沙 | 宗教団体は政治に近づかないように
気を付けるくらいのほうが、理にかなっているはずだ。 |
ゆっくり霊夢 | そりゃ、宗教団体側から政治と
距離をとるようにしていたら、 |
ゆっくり霊夢 | 政教分離に反することはないんだからね。 |
ゆっくり魔理沙 | そして、おそらく自民党も、この弱点に
気づいているんだと思う。 |
ゆっくり魔理沙 | というのも、憲法改正草案の20条1項では、 |
ゆっくり魔理沙 | 主語が『国』になっている。 |
ゆっくり霊夢 | ほんとだ。 |
ゆっくり霊夢 | 言われるまで気づかなかったよ。 |
ゆっくり魔理沙 | ということで、憲法改正草案20条1項には
かなりの忖度がみられる。 |
ゆっくり霊夢 | しっかり自分のところが都合よくなるように
仕掛けてあるんだね。 |
ゆっくり魔理沙 | 続いて、20条3項も見ていこう。 |
ゆっくり霊夢 | なんだかえらく条文が長くなってるなあ。 |
ゆっくり霊夢 | でも、前半部分は言い方が変わってるけど
特に内容に変更はないのかな? |
ゆっくり魔理沙 | いや、実はこれが大違いだ。 |
ゆっくり魔理沙 | まず、20条3項の対象が変わっている可能性がある。 |
ゆっくり霊夢 | 対象? |
ゆっくり魔理沙 | 現憲法ではこの条文の主語は『国及びその機関』
となっている。 |
ゆっくり魔理沙 | この範囲について、実は政府は見解を出している。 |
ゆっくり霊夢 | 思ったより結構いろんなものが含まれるんだね。 |
ゆっくり霊夢 | 地方公共団体まで含まれるみたいだし。 |
ゆっくり魔理沙 | そうだ。 |
ゆっくり魔理沙 | じゃあ憲法改正草案ではどうだろうか? |
ゆっくり霊夢 | 『機関』が抜けてるよ。 |
ゆっくり魔理沙 | その通り。 |
ゆっくり魔理沙 | この文言だと『それは国ではなく国の機関の行為なので、
20条3項の適用範囲外です』 |
ゆっくり魔理沙 | という屁理屈をこねて言い逃れをする余地
を作っていると思われる。 |
ゆっくり霊夢 | そんな手が。 |
ゆっくり魔理沙 | それに、
国の機関に『天皇』が含まれているのも気になる。 |
ゆっくり魔理沙 | 国家神道を復活させる意図があるのかもしれない。 |
ゆっくり霊夢 | なんとまあ。 |
ゆっくり魔理沙 | そして、続きも似たような言い逃れの隙を
作っていると思われる。 |
ゆっくり霊夢 | 確かに『いかなる』を『特定の宗教のための』に
変えているのが不自然に感じるね。 |
ゆっくり魔理沙 | この変更によって、『特定』じゃない宗教という
例外を生み出す可能性がある。 |
ゆっくり霊夢 | 『特定じゃない』なにそれ? |
ゆっくり霊夢 | 変な日本語。 |
ゆっくり魔理沙 | 別になんでもよかったんだと思うよ。 |
ゆっくり魔理沙 | 『これは宗教的活動じゃない』より、 |
ゆっくり魔理沙 | 『特定宗教のためじゃない』のほうが
言い訳しやすいだろ。 |
ゆっくり魔理沙 | 憲法の政教分離を弱めるという意味では、
十分な役割を果たすことになると思うぜ。 |
ゆっくり霊夢 | そういうことか。 |
ゆっくり魔理沙 | 極めつけは、但し書き以降の |
ゆっくり魔理沙 | 『社会的儀礼又は習俗的行為の範囲を超えないものに
ついては、この限りではない。』の部分だな。 |
ゆっくり霊夢 | これは、裁判で出てきた地鎮祭なんかを
オッケーにしようとしてるのね。 |
ゆっくり魔理沙 | ちゃんと覚えてたか。 |
ゆっくり魔理沙 | 自民党のQ&Aを見ても、霊夢のいう
地鎮祭オッケーの意図あるのがわかる。 |
ゆっくり魔理沙 | ただ、地鎮祭の判例は、あくまで現実問題を考えて、
仕方なく政教分離に反しないとしたものだ。 |
ゆっくり魔理沙 | あくまでも政教分離の理想は憲法の条文通り、
国家と宗教の完全分離だ。 |
ゆっくり魔理沙 | ただ、完全分離は現実不可能に近いから、 |
ゆっくり魔理沙 | 政教分離の趣旨に反しない限度であるならば、 |
ゆっくり魔理沙 | たとえ『宗教的活動』に本来なら当てはまる行為でも、 |
ゆっくり魔理沙 | 政教分離に反せず、憲法違反でないと解釈する
ことにしよう。 |
ゆっくり魔理沙 | そして、目的効果基準によって、宗教的活動が政教分離
に反しない限度を超えていないか判断することにした。 |
ゆっくり魔理沙 | 地鎮祭の合憲は、そうして政教分離の解釈をくぐり抜けた
例外中の例外というわけだ。 |
ゆっくり魔理沙 | 憲法改正草案では、 |
ゆっくり魔理沙 | そのように判例が慎重に検討した流れを無視して、 |
ゆっくり魔理沙 | 判例で合憲だったんだから、
『憲法改正で正式にオッケーにしましょ』と |
ゆっくり魔理沙 | しようとしてるわけだ。 |
ゆっくり魔理沙 | それで問題が解決されたっていえるか? |
ゆっくり霊夢 | 確かに例外中の例外を原則にしようと
してるわけだから、結構無茶な改正しようとしてるよね。 |
ゆっくり魔理沙 | それに、どこまでを『社会的儀礼又は習俗的行為の範囲』
とするかは、解釈次第でどうとでもなる。 |
ゆっくり魔理沙 | そうなれば、政教分離なんてあってないようなもので、 |
ゆっくり魔理沙 | 信教の自由なんて搾りかす程度も
残ってくれるかどうか。 |
ゆっくり霊夢 | もしこの通り憲法改正されるとしたら、
想像以上に深刻な状態になるのかも。 |
ゆっくり魔理沙 | というところで、いよいよお待ちかね?の
表現の自由の条文、21条に進もう。 |
ゆっくり魔理沙 | 憲法21条は、1項で表現の自由を保障しており、2項で
検閲の禁止と通信の秘密について定めている。 |
ゆっくり霊夢 | 『表現の自由』って言葉はよく聞く気がするなあ。 |
ゆっくり魔理沙 | マスコミなんかは、表現の自由がもろに関わってくるから
テレビなんかでよく流されているかもしれないな。 |
ゆっくり魔理沙 | もちろん、マスコミだけじゃなくて、私たちの生活にも
深く関わってくるぜ。 |
ゆっくり霊夢 | そうなの? |
ゆっくり魔理沙 | ああ。 |
ゆっくり魔理沙 | 例えば、霊夢はSNSとかで写真なんかをアップしたり
しないか? |
ゆっくり霊夢 | するする。 |
ゆっくり霊夢 | イイことや面白いことがあったら、やっぱり他の人にも
見てもらいたい、聞いてもらいたいし、 |
ゆっくり霊夢 | それで『イイね』がたくさんついたりすると、めっちゃ
うれしくなっちゃうもの。 |
ゆっくり魔理沙 | そうだよな。 |
ゆっくり魔理沙 | 19条で思想・良心の自由が絶対保障されているとはいえ、 |
ゆっくり魔理沙 | 頭や心の中だけにしまっておくだけじゃなくて、やっぱり
他人に伝えてこそ、そのことに意味が出てくるし、 |
ゆっくり魔理沙 | 他人に共感してもらうことで、
より人生が充実してくるよな。 |
ゆっくり霊夢 | そうそう。 |
ゆっくり魔理沙 | それをちょっと専門的にいうと、表現の自由には
『自己実現の価値』がある、という言い方をする。 |
ゆっくり霊夢 | え? |
ゆっくり魔理沙 | 要は、自分の気持ちや考えを自由に伝えることで、
自分らしく生きていくことができるっていうことだ。 |
ゆっくり霊夢 | それは間違いないね。 |
ゆっくり魔理沙 | それに、人に伝えることで、自分自身の新たな一面に
気づくこともあるしな。 |
ゆっくり霊夢 | 確かに。 |
ゆっくり魔理沙 | そのような大切な意味があるこそ、 |
ゆっくり魔理沙 | 自分を自分たらしめていく自己実現を |
ゆっくり魔理沙 | ただ単に好き勝手言っていいというイメージになりそう
な『権利』という言葉じゃなくて、 |
ゆっくり魔理沙 | 『価値』という言葉で表現したのかもしれないな。 |
ゆっくり霊夢 | なんかおしゃれじゃん。 |
ゆっくり魔理沙 | だな。 |
ゆっくり魔理沙 | 自己実現の価値は大事なものだが、
あくまで個人レベルの話。 |
ゆっくり魔理沙 | 社会レベル、国レベルで見ても、よりよい社会や政治を
していくために、 |
ゆっくり魔理沙 | 表現の自由は重要な役割を果たしている。 |
ゆっくり霊夢 | ほう。 |
ゆっくり霊夢 | といいますと? |
ゆっくり魔理沙 | 普段は国会議員が政治をやっていて、
忘れがちかもしれないが、 |
ゆっくり魔理沙 | 今まで散々言ってきたように、日本は国民主権であり、 |
ゆっくり魔理沙 | 大きく見れば、国民1人1人が政治をしているわけだ。 |
ゆっくり魔理沙 | 国会議員もあくまで、選挙によって国民から政治を
委ねられているに過ぎない。 |
ゆっくり霊夢 | まあ、そうなんだろうけども、 |
ゆっくり霊夢 | 選挙で投票する以外に、政治に参加してるって
感じること、あんまりないけど? |
ゆっくり魔理沙 | 感覚的にはそうかもしれないけど、 |
ゆっくり魔理沙 | 政治に参加するって何も投票だけじゃないんだぜ。 |
ゆっくり魔理沙 | たとえば、政治についての意見をネットに書いたり、
社会問題について友達と話したり、 |
ゆっくり魔理沙 | デモや署名に参加したり…。 |
ゆっくり魔理沙 | そんな風に政治について意見を主張したり議論したり
することも、政治に参加しているといえる。 |
ゆっくり霊夢 | たしかに、文句言いたくなるときめちゃくちゃある。 |
ゆっくり魔理沙 | 政治家たちだって、そういった民意を受け止めて
政治をしていかないと、 |
ゆっくり魔理沙 | 次の選挙で当選することができなくなってしまうかも
しれないからな。 |
ゆっくり霊夢 | そっか、結局国民の信頼を得られないと選挙で投票して
もらえないもんね。 |
ゆっくり霊夢 | そうやって、意見が反映されることが、
私たちも政治参加してるってことね。 |
ゆっくり魔理沙 | そういう風に、国民みんなそれぞれが政治に参加していく
ためには、言いたいことを言える環境が必要になる。 |
ゆっくり霊夢 | 確かに。 |
ゆっくり霊夢 | 言いたいこともいえない
そんな世の中はポイズンよ。 |
ゆっくり魔理沙 | その一節は表現の自由を
わかりやすく表してくれてるんだよな。 |
ゆっくり魔理沙 | 実際にそういう意図かは知らんけども。 |
ゆっくり魔理沙 | それはさて置いて、 |
ゆっくり魔理沙 | 言いたいことが言えて国民の声が政治に反映される
ということを |
ゆっくり魔理沙 | 専門的にいうと、表現の自由には
『自己統治の価値』があるという。 |
ゆっくり霊夢 | ジコトーチ? |
ゆっくり魔理沙 | 自己統治の場合は『自己』を自分じゃなくて『国民』
に置き換えてみると意味がわかりやすいかな。 |
ゆっくり魔理沙 | つまり、国民が政治について意見を出して、
政治のことは国民みんなで決められる価値ってことだ。 |
ゆっくり魔理沙 | ここまでをまとめると、 |
ゆっくり魔理沙 | 表現の自由には、自分らしくあるための
『自己実現の価値』と |
ゆっくり魔理沙 | 国民自身がよりよい社会や政治を実現していくための
『自己統治の価値』がある。 |
ゆっくり霊夢 | 表現の自由は大事な権利なんだね。 |
ゆっくり魔理沙 | 霊夢のいう通り、表現の自由は2つの重要な価値を
支えている重要な権利なんだ。 |
ゆっくり魔理沙 | ちなみに、この2つの価値の概念は憲法学者が
持ち込んだもののようで、 |
ゆっくり魔理沙 | 判例ではこれらの価値の名前が
直接挙がったことはないが、 |
ゆっくり魔理沙 | 価値を認めていると思われる
内容はたびたび出てくる。 |
ゆっくり霊夢 | 文字が多いな。 |
ゆっくり魔理沙 | 判例はどちらかというと、自己統治の価値を重視
しているような印象があるな。 |
ゆっくり霊夢 | どうして? |
ゆっくり魔理沙 | そりゃあ、民主主義の根幹にかかわる自己統治の価値が
損なわれるようなことがあれば、 |
ゆっくり魔理沙 | 自己実現なんて言ってる場合じゃなくなるからな。 |
ゆっくり霊夢 | そっか。 |
ゆっくり霊夢 | 国民じゃない何かが国を支配するように
なると、権利なんて簡単に制限されてしまうもんね。 |
ゆっくり霊夢 | SNSもなくなってしまうかも。 |
ゆっくり霊夢 | 私の承認欲求を満たす場があ。 |
ゆっくり魔理沙 | ま、まあとにかくわかっていただけたようで
なにより。 |
ゆっくり魔理沙 | 表現の自由は、それだけ重要な価値を支えるために、
いろんな権利に派生していっている。 |
ゆっくり霊夢 | そうなの? |
ゆっくり魔理沙 | 例えば、『知る権利』 |
ゆっくり霊夢 | 知る権利はよく耳にするね。 |
ゆっくり魔理沙 | 表現の自由で伝えることの権利が保障されるとしても、
それを受け取ることが権利として保障されないと、 |
ゆっくり魔理沙 | 発信された表現が、ただの独り言になってしまって
意味をなさなくなってしまう。 |
ゆっくり霊夢 | なるほど。だから、受け取る側の権利も保障していると
するのが『知る権利』ってわけだ。 |
ゆっくり魔理沙 | そして、この『国民の知る権利に奉仕する』として、
21条で保障されているとされたのが、 |
ゆっくり魔理沙 | 報道機関による事実の『報道の自由』だ。 |
ゆっくり霊夢 | 本当に知る権利に奉仕してる? |
ゆっくり霊夢 | 最近でいえば、財務省デモも規模が大きくなるまでは
テレビなんかでは全然報道されてなかったって聞くし、 |
ゆっくり霊夢 | 参政党がメディアから排除されていた、なんて
話も聞くよ? |
ゆっくり霊夢 | それに、だいたい国がなんか大事なことを決めている
裏では芸能人の不倫とかがスクープされて、 |
ゆっくり霊夢 | そればっかり流れている気がするんだけど。 |
ゆっくり魔理沙 | 確かに、微妙なところはあるよな。 |
ゆっくり魔理沙 | 国境なき記者団というところが出している
世界報道自由度ランキングによると、 |
ゆっくり魔理沙 | 日本の順位はG7の中では最下位で、それは2017年から
2025年までずっと続いている。 |
ゆっくり霊夢 | そうだよね。自由度高くないよね。 |
ゆっくり魔理沙 | 放送法4条では、『政治的に公平であること』や
『報道は事実をまげないですること』 |
ゆっくり魔理沙 | 『意見が対立している問題については、できるだけ多くの
角度から論点を明らかにすること』 |
ゆっくり魔理沙 | といった、放送事業者が従うべき指針が
示されてはいるが、 |
ゆっくり魔理沙 | 放送法3条では、基本的に番組に
誰からも干渉や規律されないとしているし、 |
ゆっくり魔理沙 | 明確な判例こそないものの、 |
ゆっくり魔理沙 | 報道の自由にはどの情報を報道するのか、しないのか
メディア自体が決める自由を含むと言われている。 |
ゆっくり魔理沙 | だから、誰かに都合の悪い報道をしないというのも、
メディア自体が自主的に選択したのなら、 |
ゆっくり魔理沙 | それは報道の自由の範囲内という
見方もできる。 |
ゆっくり霊夢 | でも、報道の自由は好き勝手していい自由じゃないよね? |
ゆっくり霊夢 | さっき『国民の知る権利に奉仕する』って言ってたもん。 |
ゆっくり魔理沙 | その通り。 |
ゆっくり魔理沙 | 報道の自由は、国民の知る権利に奉仕するとされる
からこそ認められている権利だ。 |
ゆっくり魔理沙 | 今の日本のメディアは、記者クラブ制度、
政府関係者などを担当する番記者の存在、 |
ゆっくり魔理沙 | 報道機関内での忖度や自主規制、役人の天下りなどなど、 |
ゆっくり魔理沙 | 結局、国に不都合な情報は報道されないような仕組みが
出来上がってしまっていて、 |
ゆっくり魔理沙 | 現実には、とても国民の知る権利に
奉仕しているとは思えない。 |
ゆっくり霊夢 | そんなだから『マスゴミ』なんて言われちゃうのよ。 |
ゆっくり魔理沙 | こらこら、口が悪いぜ。 |
ゆっくり魔理沙 | 国民の知る権利に奉仕していない』という声が大きく
なれば、 |
ゆっくり魔理沙 | メディアにも大きな変化が訪れるかもしれないな。 |
ゆっくり魔理沙 | ちなみに、報道の自由を守るための前提として、取材の
自由というのもある。 |
ゆっくり霊夢 | 報道するためには取材が必要だもんね。 |
ゆっくり魔理沙 | ただ、判例では『憲法二一条の精神に照らし、十分尊重
に値いするもの』とはしたものの、 |
ゆっくり魔理沙 | 権利として憲法上保障されるとは言われなかった。 |
ゆっくり霊夢 | なんか難しい言い回し。 |
ゆっくり魔理沙 | ちなみに続きなんだけど、 |
ゆっくり魔理沙 | 知る権利も判例上では明確に憲法上の権利とは
明言されてないぜ。 |
ゆっくり霊夢 | え?そうなの? |
ゆっくり魔理沙 | 知る権利をもうちょっと詳しくみると、 |
ゆっくり魔理沙 | 表現の受け手として知る権利に加えて、 |
ゆっくり魔理沙 | 国や自治体に対して情報の開示を請求するという
積極的な知る権利、 |
ゆっくり魔理沙 | 『情報請求権』なるものがあると解釈される場合がある。 |
ゆっくり霊夢 | なんか自治体への開示請求の約半分が黒塗りや非開示に
なっているってニュース記事見たことあるような。。。 |
ゆっくり魔理沙 | 表現の受け手としての知る権利については、さっきの
『国民の知る権利に奉仕する』など、 |
ゆっくり魔理沙 | 憲法上の権利とは明言されないまでも、尊重されている
ことは見受けられる。 |
ゆっくり魔理沙 | しかし、積極的な知る権利については、
判例では、憲法の話は避け、 |
ゆっくり魔理沙 | 情報公開法などの制度の中で開示請求できるか
判断されるに留まっている。 |
ゆっくり霊夢 | なんでそんな感じなの? |
ゆっくり魔理沙 | 1番は憲法上に明文規定がないからだろうな。 |
ゆっくり魔理沙 | 明文規定がないと、どんなにあって
当然と思う権利だろうと、 |
ゆっくり魔理沙 | 『解釈でひねり出す』という形をとらざるをえなくなる。 |
ゆっくり魔理沙 | 基本的に判例は、明文規定がない権利を認めるのは
慎重な傾向がある。 |
ゆっくり霊夢 | 解釈も行き過ぎるとなんでもありになるから、 |
ゆっくり霊夢 | そうならないように我慢というか、
コントロールしてるのかな。 |
ゆっくり霊夢 | 判例はのちのちの裁判にも影響するし。 |
ゆっくり魔理沙 | そうだろうな。 |
ゆっくり魔理沙 | さて、表現の自由はこれまで話してきたように重要な
権利ではあるけれども、 |
ゆっくり魔理沙 | 他人の権利を侵害するなど、公共の福祉に反する場合は
当然制限を受けることになる。 |
ゆっくり魔理沙 | 条文に公共の福祉の制限について
定められてはいないが、 |
ゆっくり魔理沙 | そのような定めがなくとも、公共の福祉の制限が
かかることは判例で明言されている。 |
ゆっくり霊夢 | 絶対的に自由なのは、自分の中におさまっている場合
だけだもんね。 |
ゆっくり魔理沙 | その通り。 |
ゆっくり魔理沙 | ただ、表現の自由には民主主義の根幹となる
自己統治の価値があり、 |
ゆっくり魔理沙 | この自己統治の価値を脅かすような制限には、 |
ゆっくり魔理沙 | 厳しい審査が入ってくる。 |
ゆっくり霊夢 | 政治とかの意見交換に関係しそうなら制限は、
違憲になりやすいってことね。 |
ゆっくり霊夢 | でも、最近SNS規制法が施行されたって聞いたよ? |
ゆっくり霊夢 | 言論統制だなんて言われてるけど、これは憲法違反なん
じゃないの? |
ゆっくり魔理沙 | 『情プラ法』のことだな。 |
ゆっくり霊夢 | 情プラ法? |
ゆっくり魔理沙 | 通称、情報プラットフォーム法、 |
ゆっくり魔理沙 | 正式名称は『特定電気通信による情報の流通によって発生
する権利侵害等への対処に関する法律』だ。 |
ゆっくり霊夢 | 長い長い。 |
ゆっくり霊夢 | 結局どういう法律なの? |
ゆっくり魔理沙 | ざっくりいうと、YouTubeとか、TiktokとかXとか、 |
ゆっくり魔理沙 | 多くの人が使うSNSの運営者に、誹謗中傷とか犯罪に
関わるような |
ゆっくり魔理沙 | よろしくない投稿をできるだけ早く削除したり、運営状況
を報告する、などといった義務を課し、 |
ゆっくり魔理沙 | 一方で、投稿を削除された発信者への損害賠償の責任を
制限しようとする法律だ。 |
ゆっくり霊夢 | 悪意のある投稿で傷つく人がいるのは事実だし、
いい法律なんじゃないの? |
ゆっくり魔理沙 | そういう一面があるのは否定できない。 |
ゆっくり魔理沙 | ただ、この法律は表現の自由との兼ね合いで問題もあると
思うし、個人的に奇妙に思う点もある。 |
ゆっくり霊夢 | どういうこと? |
ゆっくり魔理沙 | まず、間違いなく知る権利は侵害される。 |
ゆっくり魔理沙 | ある人がわざわざ外部に発信していることなのだから、
何らかを伝えたくてなされたものである以上、 |
ゆっくり魔理沙 | 私らにはその投稿誹謗中傷の可能性のある投稿も含めて、
知る権利があると思う。 |
ゆっくり魔理沙 | 受け手にとっては『あ~こういうこと言っちゃう人なん
だな』という判断材料にもなりうるし。 |
ゆっくり霊夢 | 確かに、発信する人についての判断材料は減ってしまう
かもしれないね。 |
ゆっくり霊夢 | でも、誹謗中傷を苦にして亡くなってしまった人も
いるんだし、 |
ゆっくり霊夢 | そういう投稿を削除するのも致し方ないんじゃないの? |
ゆっくり魔理沙 | 確かに、誹謗中傷された人に対しての権利侵害も重要
だとはもちろん思う。 |
ゆっくり魔理沙 | だけど、今それについては発信者情報の開示請求がやり
やすくなっていて、 |
ゆっくり魔理沙 | 権利侵害の対応もしやすくなっている。 |
ゆっくり魔理沙 | むしろ、ただ削除されるよりも、はっきりと名誉毀損など
争ったほうが、 |
ゆっくり魔理沙 | 投稿の真偽についてもはっきりさせやすいから、被害者の
名誉回復につながりやすいと思う。 |
ゆっくり魔理沙 | つまり、『削除しろ』とするのはやりすぎじゃないか?
ってことだ。 |
ゆっくり霊夢 | そう言われるとそうなのかも? |
ゆっくり魔理沙 | さらに、情プラ法では、『私、権利侵害されてる』って
申し出を受け付けるようにする義務を |
ゆっくり魔理沙 | SNSプラットフォームに課してるんだけど、 |
ゆっくり魔理沙 | この申し出は、誰でも、しかもおそらく匿名でできるよう
に求められている。 |
ゆっくり霊夢 | え?ってことは、自分の権利侵害じゃなかったとしても、
権利侵害されてるって申し出られるってことじゃ。 |
ゆっくり魔理沙 | そういうことになるな。 |
ゆっくり魔理沙 | 総務省のガイドラインを確認すると、 |
ゆっくり魔理沙 | かなり申し出がやりやすい環境を用意することが
求められていることがわかる。 |
ゆっくり魔理沙 | しかもしかも、申し出があった場合、専門の調査員が
調査を行わなければならず、 |
ゆっくり魔理沙 | その上、7日以内に、申し出者に対して、投稿を削除する
かどうかの判断を報告しなければならないんだ。 |
ゆっくり霊夢 | 7日?結構ゆとりない? |
ゆっくり魔理沙 | 考えてみろ。 |
ゆっくり魔理沙 | こういう申し出が1日に数件におさまるとは
限らないだろ。 |
ゆっくり魔理沙 | 何なら、匿名で申し出られるとしたら、意図的に大量の
申し出を出せる可能性だってあるだろ? |
ゆっくり魔理沙 | なんせ、そのSNSにアカウントがなくても、この申し出は
可能なんだから。 |
ゆっくり霊夢 | だとしたら、調査とか間に合わなくなるんじゃ。 |
ゆっくり魔理沙 | そうだろ。 |
ゆっくり魔理沙 | この申し出から調査、報告、削除の流れに関しては、
きちんとされていなければ、 |
ゆっくり魔理沙 | 総務大臣からハッパをかけることができるし、 |
ゆっくり魔理沙 | それでも従わない場合は拘禁刑や罰金に処されることも
ありうる。 |
ゆっくり霊夢 | それじゃ、調査はそこそこに、『時間ないから、権利侵害
っぽいし、とりあえず削除しとくか』 |
ゆっくり霊夢 | ってことにならない? |
ゆっくり魔理沙 | そう、そこが言論統制、表現の自由の侵害じゃないかと
懸念されているところだ。 |
ゆっくり魔理沙 | 刑事裁判では、被告人の権利を考えて、 |
ゆっくり魔理沙 | 『疑わしきは罰せず』という原則が存在するが、 |
ゆっくり魔理沙 | 情プラ法では逆に、 |
ゆっくり魔理沙 | 『疑わしきは即削除』になりやすい構造ができている。 |
ゆっくり霊夢 | なんか怖く感じてきたな。 |
ゆっくり霊夢 | そういえば、なんか奇妙な点があるって言ってたよね?
いったい何? |
ゆっくり魔理沙 | 選挙の候補者について優遇されている点だ。 |
ゆっくり魔理沙 | 情プラ法はSNSプラットフォームが投稿を削除した場合の
削除された相手への損害賠償について、 |
ゆっくり魔理沙 | 条件を満たせば免責する内容の規定を置いているが、 |
ゆっくり魔理沙 | その条件の1つとして、 |
ゆっくり魔理沙 | 通常、削除に同意するかどうかの照会に対して、7日間
返事がなければ免責なのに対し、 |
ゆっくり魔理沙 | 選挙の候補者については2日間とかなり短くなっている。 |
ゆっくり霊夢 | え、なんで選挙の候補者だけ? |
ゆっくり魔理沙 | そう思うよな。 |
ゆっくり魔理沙 | 選挙候補者に有利に働く条文は、
今にはじまったものじゃなくて、 |
ゆっくり魔理沙 | 平成25年に公職選挙法が改正されたことに伴って
改正されたものだ。 |
ゆっくり魔理沙 | 私の個人的感覚にはなるんだけど、自ら世間の矢面に立つ
ことを選んだ選挙候補者よりも、 |
ゆっくり魔理沙 | 一般人のほうが保護の必要性は高いはずだ。 |
ゆっくり霊夢 | 政治家って批判されるのが仕事
みたいなところあるもんね。 |
ゆっくり魔理沙 | だから、選挙候補者の保護が一般よりもレベルが下がる
ことはあっても、 |
ゆっくり魔理沙 | 上がるというのは、かなりの奇妙で、私は違和感がある。 |
ゆっくり霊夢 | そうだよ。ふつう逆だよ。 |
ゆっくり魔理沙 | 法律を変えるには、国会議員である必要があるので、 |
ゆっくり魔理沙 | 邪推すれば、現職からの選挙候補者が自分に都合の悪い
SNSの投稿を削除できるようにした、 |
ゆっくり魔理沙 | と考えることもできる。 |
ゆっくり霊夢 | なるほどね。 |
ゆっくり霊夢 | これって、さっき言ってた、ジコトーチの価値を下げる
ような可能性のある法律だよね。 |
ゆっくり霊夢 | と、いうことは表現の自由の侵害で、やっぱり憲法違反
なんじゃないの? |
ゆっくり魔理沙 | そこがこの法律の巧妙なところだ。 |
ゆっくり霊夢 | と、いうと? |
ゆっくり魔理沙 | 考えてもみろ。 |
ゆっくり魔理沙 | この法律によると、 |
ゆっくり魔理沙 | 削除するのは誰だった? |
ゆっくり霊夢 | SNSプラットフォーム。 |
ゆっくり魔理沙 | 削除する基準を決めるのは? |
ゆっくり霊夢 | うーん、SNSプラットフォーム? |
ゆっくり魔理沙 | 国は関与してた? |
ゆっくり霊夢 | 法律とガイドラインはあるけども、実際削除にかかわる
のはSNSだけなのか。 |
ゆっくり魔理沙 | そういうことだ。 |
ゆっくり魔理沙 | 国としては、あくまでSNS側の自主的な規制だ
と言い張る余地を残している。 |
ゆっくり魔理沙 | それに、表現の自由の価値が高いといえど、他人との
権利の衝突の可能性がある以上、 |
ゆっくり魔理沙 | 公共の福祉による制限が入る隙間はあるし、 |
ゆっくり魔理沙 | 違憲とされる可能性はどうしても低くなってしまう
だろうな。 |
ゆっくり霊夢 | そうなのかあ、でも、このままだとなんかやられたい
放題されてるようで嫌だなあ。 |
ゆっくり霊夢 | 。。。 |
ゆっくり霊夢 | あ、 |
ゆっくり霊夢 | 検閲は?憲法21条2項に
『検閲は、これをしてはならない』ってあるよ? |
ゆっくり霊夢 | 『してはならない』ってことは絶対禁止ってことだよね? |
ゆっくり魔理沙 | いいところに目をつけたな。 |
ゆっくり魔理沙 | 霊夢の言う通り、21条2項の『検閲』は、判例でも、 |
ゆっくり魔理沙 | 『表現の自由に対する最も厳しい制約となるもの』
なので |
ゆっくり魔理沙 | 『公共の福祉を理由とする例外の許容』『をも認めない
趣旨を明らかにしたもの』と言及されている。 |
ゆっくり霊夢 | じゃあ、情プラ法が『検閲』にあたれば憲法違反と
なるんだね? |
ゆっくり魔理沙 | そういうことだな。 |
ゆっくり霊夢 | ところでさ。 |
ゆっくり霊夢 | 検閲って何? |
ゆっくり魔理沙 | 検閲を知らずに出してきたんかい。 |
ゆっくり霊夢 | なんとなくなんか調べること
っていうのはわかるよ。 |
ゆっくり魔理沙 | 確かに一般的にはそういう感じの意味なんだけど、 |
ゆっくり魔理沙 | 憲法21条2項の『検閲』の定義については、ちゃんと判例
で言ってくれていて、 |
ゆっくり魔理沙 | 『行政権が主体となつて、思想内容等の表現物を対象
とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、 |
ゆっくり魔理沙 | 対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、
発表前にその内容を審査した上、 |
ゆっくり魔理沙 | 不適当と認めるものの発表
を禁止することを、その特質として備えるものを指す』 |
ゆっくり魔理沙 | とした。 |
ゆっくり霊夢 | 行政権が主体? |
ゆっくり霊夢 | ということは、さっき出たSNSプラットフォームが
自主的にって言い訳が効いてくるのか。 |
ゆっくり魔理沙 | しかも、『発表前にその内容を審査』とあるが、 |
ゆっくり魔理沙 | 情プラ法の場合は、すでに投稿された内容に対して
誰かの申し出、調査、削除となるから、 |
ゆっくり魔理沙 | その点でも検閲の定義から外れるな。 |
ゆっくり霊夢 | じゃあ結局検閲も認められないってこと? |
ゆっくり魔理沙 | うーん、ちょっと遠回しで弱い理屈に
なるかもしれないけど、 |
ゆっくり魔理沙 | 情プラ法は今まで伝えてきたように、SNSプラット
フォームを厳しく縛り、 |
ゆっくり魔理沙 | 権利侵害と思われる投稿を
削除させようとするものだ。 |
ゆっくり魔理沙 | そして、この影響で、 |
ゆっくり魔理沙 | 発信側に『削除されないような内容にしなきゃ』という
『表現の萎縮』が起きることが考えられる。 |
ゆっくり霊夢 | そりゃせっかくの発信が削除されるのは
嫌だよ。 |
ゆっくり霊夢 | YouTubeの動画みたいに、
収益も関係してくるならなおさら。 |
ゆっくり魔理沙 | これは、形こそ判例の検閲の定義からは外れる
部分もあるけど、 |
ゆっくり魔理沙 | 中身は投稿前から発信内容を制限するという、
実質『検閲』に近いものとなる。 |
ゆっくり霊夢 | おお。 |
ゆっくり魔理沙 | 実際は裁判にならないとどうなるかはわからないが、
情プラ法が憲法違反の可能性は、 |
ゆっくり魔理沙 | まったくのゼロとはいえないんじゃないか。 |
ゆっくり霊夢 | 最近は話題としては落ち着いたけど、 |
ゆっくり霊夢 | 投稿を削除された発信者が
国を訴えるなんてことありそうだよね。 |
ゆっくり霊夢 | ってそんなことできるのかな? |
ゆっくり魔理沙 | マイナンバー以前の住基ネットの時代、 |
ゆっくり魔理沙 | これに接続されたことなどにより精神的損害を
被ったとして各市に損害賠償を請求した事例もある。 |
ゆっくり魔理沙 | 霊夢のいうような訴えも、 |
ゆっくり魔理沙 | 難しいとは思うが可能だと思うぜ。 |
ゆっくり魔理沙 | すでに長くなってしまってるんだけど、
あともう少しだから、 |
ゆっくり魔理沙 | 続きで、
21条2項の『通信の秘密』について話していこうか。 |
ゆっくり霊夢 | 『通信の秘密は、これを侵してはならない』って
ところね。 |
ゆっくり魔理沙 | そうだ。 |
ゆっくり魔理沙 | 霊夢はLINEとかの個人的なやりとりを誰かに見られても
大丈夫な人? |
ゆっくり霊夢 | いや、大丈夫じゃないよ。 |
ゆっくり霊夢 | っていうか、大丈夫な人なんているの? |
ゆっくり魔理沙 | そんな怪しいやりとりしてるの? |
ゆっくり霊夢 | 別に怪しいやりとりしてるわけじゃないけど、 |
ゆっくり霊夢 | 誰かに見られてると思うと、なんか気持ち悪いじゃない。 |
ゆっくり霊夢 | 仲良い人とやりとりしてるからこそ、本音でやりとりする
けど、誰かに見られていると思ってたら、 |
ゆっくり霊夢 | 本音でやりとりできないよ。 |
ゆっくり魔理沙 | そうだよな。 |
ゆっくり魔理沙 | 『通信』もまた自分の考えや気持ちを他人に伝える
手段だから言ってみれば、表現の一種でもあるんだぜ? |
ゆっくり魔理沙 | 誰かに見られている、聞かれている
なんてことがあると、 |
ゆっくり魔理沙 | 霊夢みたいに本音が話せなくなる
ということは、 |
ゆっくり魔理沙 | 表現の自由が制限されているといえないか? |
ゆっくり霊夢 | 確かに。 |
ゆっくり魔理沙 | なので、表現の自由を定めている21条に通信の秘密は
定められている、とする見解もある。 |
ゆっくり霊夢 | ということは、違う見解もあるの? |
ゆっくり魔理沙 | そういうことなんだけど、重要なのはそこじゃない。 |
ゆっくり霊夢 | じゃ何が大事っていうのよ? |
ゆっくり魔理沙 | 大事なのは、『通信の秘密』は、原則侵してはならないん
だけど、 |
ゆっくり魔理沙 | 例外的に公共の福祉の制限を受けるってことだ? |
ゆっくり霊夢 | え?どうして? |
ゆっくり霊夢 | 検閲と同じように、『侵してはならない』って言ってる
よね? |
ゆっくり霊夢 | これは絶対ダメってことじゃないの? |
ゆっくり魔理沙 | それを言われたら痛いんだけど、 |
ゆっくり魔理沙 | 検閲の禁止と通信の秘密では、
守りたいものが違う。 |
ゆっくり霊夢 | と、いいますと? |
ゆっくり魔理沙 | ざっくりいえば、検閲は表現の内容自体に対する制限に
なるのに対し、 |
ゆっくり魔理沙 | 通信の秘密は、内容自体よりも、プライバシーを守る
ことに重きを置かれている。 |
ゆっくり霊夢 | だからなんだっていうのよ? |
ゆっくり魔理沙 | 憲法が一番危惧しているのは、国家権力が好き勝手できる
ようにならないか、 |
ゆっくり魔理沙 | つまり、民主主義が崩されないかどうかだ。 |
ゆっくり霊夢 | 判例も自己統治の価値を重要視してる
かもって言ってたもんね。 |
ゆっくり魔理沙 | そうそう。 |
ゆっくり魔理沙 | 霊夢の仕事の愚痴のLINEが見られたところで、
国の政治には何の影響もないが、 |
ゆっくり魔理沙 | 政治の専門家が、国の政治に対しての批判を本として
出版しようとしたときに、 |
ゆっくり魔理沙 | 政府が『それはうちに都合悪いから出版しちゃダメ』
としたら、 |
ゆっくり魔理沙 | それは、政府への批判を許さない言論統制になるだろ? |
ゆっくり霊夢 | うう、た、確かに? |
ゆっくり魔理沙 | それに、通信の秘密は『誰かに見られてる聞かれてる
かもしれない』ってだけで、 |
ゆっくり魔理沙 | お前がそれを気にせずに愚痴を言い続ける
ことが直接制限されているわけではない。 |
ゆっくり霊夢 | もう愚痴って決めつけられてる。 |
ゆっくり魔理沙 | それに対して、検閲は表現の内容自体そのものを審査して
事前に発信自体をやめさせてしまうことだ。 |
ゆっくり魔理沙 | だから、検閲は絶対的に禁止なんだ。 |
ゆっくり霊夢 | じゃあ、私のしょうもないLINEは見られてもいい
ってこと? |
ゆっくり魔理沙 | そうは言ってないだろ。 |
ゆっくり魔理沙 | 通信の秘密は、表現の自由からも、プライバシーの観点
からも、強く守られるべきだと思う。 |
ゆっくり魔理沙 | ただ、安全のために、どうしても通信の秘密を破った
ほうがいい場合も出てくる。 |
ゆっくり霊夢 | どんな場合よ? |
ゆっくり魔理沙 | 例えば、テロを行おうとしている団体がいたとして、 |
ゆっくり魔理沙 | ただ警察は実態や証拠がつかめず、その存在や計画を
確かめるためには、 |
ゆっくり魔理沙 | メンバー同士の連絡を盗み聞くしかないような場合、
これを認めないと国の安全にかかわるだろ? |
ゆっくり霊夢 | 確かに。私の口の悪い愚痴を聞かないでって
言ってる場合じゃないね。 |
ゆっくり魔理沙 | だろ? |
ゆっくり魔理沙 | 自分で口悪いってわかってるなら、自制してほしい
ところだけど、 |
ゆっくり霊夢 | なんかいった? |
ゆっくり魔理沙 | いや、 |
ゆっくり魔理沙 | だ、だから憲法の文言は、絶対許さない感じを出してる
けど、それぞれの権利を守る目的の違いから、 |
ゆっくり魔理沙 | 通信の秘密に関しては、多少我慢してもらって、 |
ゆっくり魔理沙 | 公共の福祉による制限を例外的に受ける場合がある。 |
ゆっくり霊夢 | まあ、仕方ないのか。 |
ゆっくり魔理沙 | もちろん、憲法の文言は『絶対』を想定していると
思われるから、 |
ゆっくり魔理沙 | 例外が認められるのは極々例外的な場面に限定される。 |
ゆっくり魔理沙 | 例えば、通信傍受法では、重大な犯罪に関する通信
が行われると疑うに足りる状況があること、 |
ゆっくり魔理沙 | 裁判官の令状を事前に取得すること、 |
ゆっくり魔理沙 | 通信事業者の立ち合いなど、 |
ゆっくり魔理沙 | 厳格な要件の元でのみ、
通信傍受は可能となるとされている。 |
ゆっくり霊夢 | 通信の秘密を絶対守るのが、
難しいってことはわかったよ。 |
ゆっくり霊夢 | 凶悪犯罪組織が捕まえられないとなると、
身の危険があるかもだもんね。 |
ゆっくり魔理沙 | ちなみに、通信の秘密について、憲法上の文言では、
『侵してはならない』と |
ゆっくり魔理沙 | 何もしないという不作為を求められているような
書き方をされているが、 |
ゆっくり魔理沙 | 解釈上は、国が通信の秘密を守るために、法律を作るなど
の積極的な行動、作為までも |
ゆっくり魔理沙 | 義務化されていると考えられている。 |
ゆっくり魔理沙 | 電気通信事業法は、国が通信の秘密のために
積極的に働きかけている例といえるな。 |
ゆっくり霊夢 | 言われてみれば、携帯会社とかは民間だから、国が法律
作ってくれないと、 |
ゆっくり霊夢 | 通信内容見放題になっちゃうかもしれないもんね。 |
ゆっくり魔理沙 | 郵便や、電話など、昔は国がサービス運用していたから
国の不作為で通信の秘密は守られていたが、 |
ゆっくり魔理沙 | 時代の変化だよな。 |
ゆっくり魔理沙 | じゃあ最後に、憲法改正草案では21条は
どうなっているのか見ていこうか? |
ゆっくり霊夢 | こんな重要な権利は絶対手が加えれてるよ。 |
ゆっくり魔理沙 | どうかな。 |
ゆっくり魔理沙 | 条文を見てみよう。 |
ゆっくり霊夢 | あれ?思ったほど変わってないか。 |
ゆっくり霊夢 | いや、 |
ゆっくり霊夢 | なんか増えてるなあ。 |
ゆっくり魔理沙 | そうなんだ。 |
ゆっくり魔理沙 | しかもこれが結構えげつないことだと
思うんだ。 |
ゆっくり魔理沙 | 自民党の意図がQ&Aに書かれているので
そちらを見てみよう。 |
ゆっくり霊夢 | 確かに、オウムはきちんと対応できたら、
あそこまで被害は拡大しなかったかもね。 |
ゆっくり魔理沙 | それはそうなのかもしれないが、問題はそこじゃない。 |
ゆっくり魔理沙 | まず、公益や公の秩序に『反する』より、
『害することを目的とした』のほうが、 |
ゆっくり魔理沙 | 権利制限の範囲が狭いと読めるような
書き方がされているな。 |
ゆっくり霊夢 | よかった。私にもそう読めるよ。 |
ゆっくり魔理沙 | 果たして本当にそうだろうか? |
ゆっくり霊夢 | どういうこと? |
ゆっくり魔理沙 | だって、『害することを目的とした』だと、 |
ゆっくり魔理沙 | 実際に害しているかどうかは関係なく、 |
ゆっくり魔理沙 | 目的を持ってした時点で制限対象になる
ってことだぜ。 |
ゆっくり魔理沙 | つまり、範囲を厳しく限定どころか、 |
ゆっくり魔理沙 | 制限範囲を拡大しているといえなくないか? |
ゆっくり霊夢 | ほんとだ。 |
ゆっくり霊夢 | これ嘘じゃん。 |
ゆっくり魔理沙 | それに、禁止する対象を『活動』と『結社』に
限っているというが、 |
ゆっくり魔理沙 | 『活動』って言葉は、かなり意味の広い言葉だ。 |
ゆっくり魔理沙 | 出版活動、表現活動と、
ほぼなんでも『活動』ということができる。 |
ゆっくり魔理沙 | これが本当に対象を『限っている』といえるのかどうか。 |
ゆっくり霊夢 | 私なんかが読んだら、それっぽく
書かれてるから、うまく騙されちゃうところだったよ。 |
ゆっくり魔理沙 | 『公益及び公の秩序』を国の方針と考えるならば、 |
ゆっくり魔理沙 | 増税反対を訴えた時点で
『活動』とされかねないし、 |
ゆっくり魔理沙 | 財務省デモなんて、 |
ゆっくり魔理沙 | 『○月○日にデモします』 |
ゆっくり魔理沙 | と集まるように情報発信するだけで
『活動』にも『結社』にもあてはまるかもしれない。 |
ゆっくり霊夢 | これこそが令和の治安維持法だったか。 |
ゆっくり魔理沙 | この新しく追加された21条2項は、 |
ゆっくり魔理沙 | 『公益及び公の秩序』の解釈次第で、
いくらでも表現の自由を制限できる条文となる |
ゆっくり魔理沙 | 危険性を秘めてるんだ。 |
ゆっくり魔理沙 | しかも、制限範囲が拡大されているので、 |
ゆっくり魔理沙 | 危険性は他の権利の条文の比じゃないぜ。 |
ゆっくり霊夢 | 恐ろしすぎるでしょ。 |
ゆっくり魔理沙 | あと、憲法改正草案の21条には、 |
ゆっくり魔理沙 | 新設で21条の2ができている。 |
ゆっくり魔理沙 | これは、国の行為について説明する責任を
国に課すような規定になっている。 |
ゆっくり霊夢 | なんだ。 |
ゆっくり霊夢 | ちゃんと説明責任を果たそうとしてる
まともな条文じゃない。 |
ゆっくり魔理沙 | この条文だけみるとそうだな。 |
ゆっくり魔理沙 | 自民党も国民の知る権利に資する、と
説明してるしな。 |
ゆっくり魔理沙 | ただ、これをさっきの21条2項と
合わせて考えると、 |
ゆっくり魔理沙 | 国民は国の説明することについて
反対する活動や結社をすることはできないし、 |
ゆっくり魔理沙 | たとえ説明が不十分だったとしても、 |
ゆっくり魔理沙 | 国が『説明した』といえば国民は
受け入れる以外に選択肢がない。 |
ゆっくり霊夢 | でも、それだったらわざわざ憲法上の責務なんかに
しないで、勝手に説明したらいいじゃない? |
ゆっくり魔理沙 | これは、私の完全なる憶測なんだけど、 |
ゆっくり魔理沙 | おそらく民主国家としての体裁を
保ちたいんじゃないかな。 |
ゆっくり魔理沙 | 形も中身も独裁国家になってしまったら、
外国からヤバい国扱いされてしまって、 |
ゆっくり魔理沙 | 外交に支障が出るかもしれない。 |
ゆっくり魔理沙 | だから、民主国家としての体裁を保ちつつ
中身は好き勝手できるように条文の言葉を選んでいる。 |
ゆっくり魔理沙 | そして、この説明責任のように、民主国家
わかりやすくアピールできる条文を入れている。 |
ゆっくり魔理沙 | まるで、 |
ゆっくり魔理沙 | 近代国家であることを世界に
アピールするために |
ゆっくり魔理沙 | 大日本帝国憲法で信教の自由を保障した
ときのように。 |
ゆっくり霊夢 | そういわれると、妙に納得してしまう自分がいる。 |
ゆっくり魔理沙 | もちろん、『公益及び公の秩序』を
どう解釈するか次第だけどな。 |
ゆっくり霊夢 | 信じるか信じないかはあなた次第ってか。 |
ゆっくり魔理沙 | そういう可能性もありうる、
ということは知ってもらいたいな。 |
ゆっくり魔理沙 | もっと手短にいくつもりだったけど、ついつい熱くなって
しまったぜ。 |
ゆっくり霊夢 | 3条だけだったけど、
濃厚な内容だった。 |
ゆっくり魔理沙 | 国民の権利の中でも
もっとも重要といえるところだったからな。 |
ゆっくり魔理沙 | これをみてくれているあなたも
どう思ったか気軽にコメントしてくれると嬉しいぜ。 |
ゆっくり霊夢 | 最後までご視聴ありがとうございました。 |
ゆっくり魔理沙 | それではまた次回! |
ゆっくり霊夢 | それではまた次回! |
編集後記
SNS規制法については、ずっときちんと勉強したいと思ってました。
YouTubeとか見てると、憲法違反だなんだって言われているけど、果たして本当にそうなのかと自分で確かめたかったですしね。
このために憲法解説をはじめたと言っても過言ではないかもしれません。
情プラ法は結構複雑というか、条文の文章量が多いし、用語がややこしい法律なので、読み込むのが結構大変でした。
それにしても、やっぱりうまく作ってますよね。
憲法違反と言われるのをちゃんと回避する逃げ道をつくりつつ、消したい投稿は削除しやすいようにする。
公職の候補者等だけ扱いを別にしているのを見たときは驚きましたね。
だって、公職の候補者で批判投稿を苦に自殺する人なんて聞いたことないですから。
当然ですよね。
政治家なんて、自ら批判の海に飛び込むようなもの。
一般の人と違って規制が緩くなることはあっても、逆に厳しくなってるなんて。
明らかにおかしい制度です。
自分が知らないうちに、いろんな部分で、こうして有力政党や政治家らにとって有利な法律が出来上がってるんでしょうね。
SNS規制法の話で、ここまで言及しているものは自分は見たことなかったので、自分で勉強してみてよかったと思います。
今回の動画は、たった3条という少ない解説になってますが、それぞれが重要な条文なので、めちゃくちゃ動画時間長くなってしまいました。
人権のところが終われば、もうちょっとシンプルな編集にできるのかな?
まだまだ5分の1程度終わった段階で、先は長いですが頑張ろうと思います。

サムネイルは、インパクトが強そうな「妄想が最強」を取り入れたものにしましたが、表現の自由のほうがよくいわれるので、そちらを軸にしたほうがよかったかな~って少し反省してます。