動画概要
はじめに
今回の動画では、日本国憲法のうち「22条から25条」までを扱います。テーマは、日々の暮らしに直結する自由と権利――居住・移転の自由、職業選択の自由、外国への移住や国籍離脱に関する自由、学問の自由と大学の自治、婚姻と家族の在り方、生存権(健康で文化的な最低限度の生活)まで。一見むずかしそうな条文も、歴史的な背景や具体例に照らしていくと、今の生活に「どのように効いているのか」「どんな限界や注意点があるのか」が立体的に見えてきます。さらに、憲法改正草案での書きぶりの違いによって生じうる影響も、整理していきます。
22条1項:居住・移転の自由と職業選択の自由
まずは22条1項。ここには「どこに住むか」「どこへ移るか」「どんな仕事を選ぶか」という、人生の骨格を決める自由がまとまっています。いまは当たり前の前提に見えても、歴史を振り返れば、身分や職業で住む場所や従事する仕事が固定され、自由な選択が許されなかった時代がありました。だからこそ、憲法は個人の尊厳を起点に、住まいと仕事に関する選択を基本的人権として確かに押さえています。
居住の自由と移転の自由は「ワンセット」
住む場所を選べるだけでは足りません。新しく住みたい場所が見つかったときに自由に移り住めないなら、居住の自由は空洞化します。都会か田舎か、戸建てかマンションか、賃貸か持ち家か――小さな選択の積み重ねが生活の質と人生の形を変えていくからこそ、移動を含めた自由が守られる必要があります。
職業選択の自由は「選ぶ自由」+「従事する自由」
職業選択の自由は、職業名を選ぶ瞬間だけでは終わりません。選んだ職業の仕事を実際に行う自由までを包み込んで理解するのがポイントです。ただし、ここに登場するのが「公共の福祉」という調整原理。医療や航空のように、高度な専門性と安全性が不可欠な分野では、資格や免許という入口の制限、行為のルール、監督の仕組みが必要になります。経済的自由は、思想・表現といった精神的自由に比べて、他者の安全や社会全体の秩序に直結しやすいため、制度的な調整の要請が強くなりやすい、という点が大切です。
「公共の福祉」が書き込まれている理由
条文にあえて「公共の福祉に反しない限り」と入っているのは、職業の世界が現実に多くの人の生命・身体・財産に影響するからです。無資格で手術が許される社会を想像すると、なぜ一定の制限が必要かは直感的に理解できます。自由の価値を守るために、自由の運用を整える――そんな発想です。
22条2項:外国への移住と国籍離脱の自由
22条2項は、外国への移住と国籍離脱に関する自由を掲げています。ここで中心になるのは「出ていく自由」。もちろん、行き先の国の入国許可までが憲法で約束されるわけではありませんし、無国籍を生まないための枠組みは国籍法などの立法側で調整されます。重要なのは、ここでも「公共の福祉」との調整が常に前提にあることです。
改正草案に目を向けると
憲法改正草案では、22条1項から「公共の福祉」の文言が見直される構成や、2項の主語が「何人も」から「国民」へと狭まる構成が話題に上ることがあります。主語を狭めると、来日外国人の移動や出国の扱いが制度的にどうなるのか、という新たな論点が生まれます。条文の一部だけを切り取るのではなく、ほかの条文に置かれた制限原理(たとえば「公益及び公の秩序」)とセットで読む総合的な視点が欠かせません。
23条:学問の自由と大学の自治
23条は「学問の自由」をシンプルに保障します。けれども、その中身は奥深いものです。一般に、研究する自由・成果を発表する自由・教授する自由という三つの要素が語られ、これを実質的に守る仕組みとして「大学の自治」という考え方が置かれています。
なぜ大学の自治が必要なのか
研究内容そのものに政府が直接介入しなくても、人事や施設管理、予算配分などの間接的なルートで学問の自由が萎縮する危険は常にあります。だからこそ、大学が自律的に人事・組織運営やキャンパスの秩序維持を決められる余地を確保し、不当な外圧から学問を守るのが「大学の自治」です。もちろん、大学が治外法権になるわけではありません。公共の福祉との調整や、学問の自由と関係のない領域では、一般のルールが適用されます。射程はあくまで「学問の自由を実質的に守るため」に限られる点が肝心です。
研究・発表・教授、それぞれの自由
研究の自由は「何をどう研究するか」を自ら決める権利。とはいえ、人体実験のように人間の尊厳を傷つける方法は許されません。研究成果の発表が重視されるのは、知の蓄積が次の研究を生み、社会に還元されるから。教授の自由は、大学などの高等教育機関で、自らの見解に基づき講義・教育する自由を指します。ただし、小中高の段階では、基礎的学力の確保や教育課程の目的から一定の制約が設けられます。目的の違いに応じた自由の設計だと考えると腑に落ちます。
24条:婚姻と家族――個人の尊厳と平等を軸に
24条は、婚姻は当事者の合意のみによって成立し、夫婦が同等の権利を有し、相互に協力して家族生活を維持することを基本とします。戦前の家制度では戸主が強い権限を持ち、婚姻にも家の同意が必要でした。戦後、個人の尊厳と両性の本質的平等を中核に据えて民法が改められたのは、過去の反省の延長線上にあります。
近年の動きと条文の粘り強さ
ここ十数年でも、婚外子の相続分や再婚禁止期間などで違憲判断と法改正が進んだ一方、夫婦同姓規定は合憲とされつつ、選択的夫婦別姓の導入は立法府での議論に委ねられています。つまり、憲法は「方向」を示し、具体の制度は法律でチューニングする――この役割分担が続いている、と理解すると全体像がつかみやすいはずです。
改正草案で見えてくる論点
改正草案に目を移すと、合意「のみ」の削除など、婚姻の成立条件に含みを残すような書きぶりや、射程が夫婦から家族全体へ広がる構成が検討されます。「配偶者の選択」「住居の選定」といった、現行憲法が個人の具体的選択として明記してきた要素が薄れると、家族の在り方への公的関与や扶養義務の広がり方に実質的な影響が出る可能性があります。家族が互いに助け合う価値それ自体は多くの人が共有しますが、それを憲法上の義務として強く位置づけるなら、どこまでが正当な要請で、どこからが過剰な介入なのか、慎重な線引きが必要です。
「個人」と「家族」のバランス感覚
個人の尊厳をベースに家族を支えるのか、家族という単位を先に据えて個人に義務を課すのか。どちらの立て付けを強めるかで、社会の雰囲気は大きく変わります。条文の言い回し一つで、制度のアクセルとブレーキの位置が入れ替わることがある――この視点を持っておくと、改正草案の読み解きが一段とクリアになります。
25条:生存権――「健康で文化的な最低限度の生活」
25条1項は、広く知られたフレーズ「健康で文化的な最低限度の生活」を掲げます。この文言は、あえて抽象的に書かれています。理由はシンプルで、時代が進めば「最低限度」の中身も動くから。衣食住だけでなく、情報通信、医療・教育へのアクセス、地域の生活基盤など、文化的水準の向上に合わせてラインも更新されるべきだ、という考え方です。
理念規定としての1項と、具体化のルート
25条1項は、直ちに個人に給付を請求する具体的権利を与えるというより、国の責務を宣言する性格が強い条文です。そこで、生活保護法や各種福祉立法、社会保障制度といった下位法によって内容が具体化されていきます。イメージとしては、憲法が羅針盤、法律が実務の地図。ただし、極端に低い基準や明白に不合理な運用があれば、違憲審査というブレーキが働き得る点も押さえておきたいところです。
生活保護と外国人――実務の「ねじれ」を読み解く
生活保護は制度上は日本国民を対象とすることを前提に設計されてきましたが、実務面では、人道上の配慮や行政通知により、外国人に準じた保護が行われてきた経緯があります。ここには、補足性の原則(他に利用可能な資源があれば先に活用)、扶養調査の難しさ(扶養義務者が海外にいる可能性)、行政のリスク回避(訴訟・国際的批判・健康被害のリスク)など、複数の要因が重なって判断が複雑になっています。条文の原則/人道上の配慮/行政運用を切り分けて理解すると、ニュースの断片だけでは見えにくい全体像がつかめます。
25条2項:権利を支える「国の義務」
25条2項は、社会福祉・社会保障・公衆衛生の向上・増進に努める義務を国に課します。ここで初めて「何をしなさい」という具体的方向づけが条文に現れます。生活保護法、児童福祉法、老人福祉法、障害者総合支援法(社会福祉)、国民年金や医療保険(社会保障)、食品衛生や水道、感染症対策(公衆衛生)など、数多くの法律がこの2項に根を下ろして整備・改正されてきました。
基準と運用の「幅」をどうコントロールするか
どの水準まで支えるかは、財政や人口構造、社会の合意に強く影響されます。だからこそ、政治の選択が問われ、かつ、明白に不合理な運用には司法審査が働く――この二重の装置で、理念と現実のあいだの緊張をコントロールしていく設計になっています。
改正草案:25条の周辺に追加された条文(25条の2〜4)
改正草案では、25条の周辺にいくつかの新しい条文が提案される構成が見られます。良好な環境の保全、国外の国民の保護、犯罪被害者やその家族への配慮など、一見すると生活を支えるメニューが増えているように感じられます。大事なのは、どこまでが努力義務なのか、どの範囲まで介入できるのか、手続と補償が適正に担保されるのかという運用面の設計です。美しい言葉ほど、実務のディテールで実効性が左右されます。
環境保全と財産権・居住の自由の交差点
良好な環境づくりは望ましい目標ですが、公共事業や土地利用の現場で権限が広く使われると、財産権や居住の自由との衝突が起こりやすくなります。補償の適正、必要最小限性、透明な手続――ここを丁寧に設計しなければ、善意の旗印が過剰な制約の根拠になりかねません。
国外の国民保護と表現・取材の自由
国外在留者の保護は心強い一方、「緊急時」の定義や発動のプロセスがあいまいだと、取材の自由や情報流通の確保と衝突するおそれもあります。安全確保と知る権利のバランスをどこで取るのか、ここも運用の鍵どころです。
犯罪被害者・家族への配慮は実効性がカギ
犯罪被害者やその家族の保護は社会全体の課題ですが、条文が「配慮」にとどまると、実効性はその後の立法と運用に委ねられます。同時に、加害者の家族の人権配慮など、別の側面への目配りも必要です。どちらかだけを強めるのではなく、複数の権利・利益の調整をどう設計するかが問われます。
今回の見どころ:条文の「言い回し」が変える現実
今回の解説で一貫して意識しているのは、条文の小さな言い回しが、運用段階で大きな差を生むということです。「公共の福祉」の位置づけが変わると、資格制度や土地利用、移動の自由に関するルールの立て方が変わります。「何人も」と「国民」といった主語の違いは、対象範囲を狭める効果を持ちます。合意「のみ」が落ちれば、婚姻の成立条件に別の要素が差し込まれる余地が生まれます。こうした微妙な差が、十年単位で現実をゆっくりと動かしていく――それを地図のように俯瞰できるのが憲法学習の醍醐味です。
次回へのブリッジ:学びを「自分の暮らし」へ落とし込む
22条から25条は、教科書の中だけの話ではありません。引っ越しや転職、留学・移住の計画、大学で学ぶ内容や教え方、結婚・家族のかたち、そして困ったときに頼れる制度――すべてが今日・明日の選択と結びついています。条文を丸暗記するより、「なぜそう書いたのか」「どこでラインを引くべきか」を生活の目線で考えてみると、憲法がぐっと身近に感じられるはずです。
まとめ
今回の内容をぎゅっと振り返ると、次の通りです。22条1項は、居住・移転と職業選択という人生の根幹の自由を保障しつつ、現実に安全や秩序とせめぎ合う場面が多いからこそ「公共の福祉」との調整を正面から組み込んでいます。22条2項は外国への移住と国籍離脱に関する自由を掲げ、出ていく自由の枠組みを示しつつ、他法との連携で無国籍や入国可否の問題を扱います。23条は、研究・発表・教授の三層から学問の自由を支え、大学の自治によって間接的な萎縮を防ぐ設計。24条は、婚姻を当事者の合意と平等の原則に基づいて位置づけ、家制度からの反省を踏まえた制度の大転換を象徴します。25条は、生存権を理念として掲げ、下位法で具体化しつつ、極端な運用には違憲審査が働くという二重の構造で支えられています。
改正草案に目を向けると、言い回しのわずかな変更が、主語の射程や制限原理の強度、家族への公的関与の幅、環境や国外保護の名のもとに及ぶ権限の広がりなど、実務に大きな差を生みうることが見えてきます。大事なのは、条文だけで判断しないこと。ほかの条文に置かれた制限原理や、下位法の設計、手続と補償の適正、そして運用の現場を常にセットで思い描くことです。
次回も、条文の背後にある歴史的背景と、暮らしへの具体的なインパクトを、できるだけやさしい言葉で追っていきます。憲法を「自分の生活を考えるためのツール」として、これからも一緒に磨いていきましょう。
動画テキスト
キャラクター | セリフ |
ゆっくり魔理沙 | じゃあ憲法解説、
前回の続きで22条から解説していこうか。 |
ゆっくり霊夢 | 今回はどんな権利が知れるんだろう? |
ゆっくり魔理沙 | 今は人権のところだから権利の
話をしてるけど、、、 |
ゆっくり魔理沙 | まあ、前向きだからいっか。 |
ゆっくり魔理沙 | 22条1項は、居住・移転の自由と職業選択の自由に
ついて定められている。 |
ゆっくり霊夢 | それってそもそも当たり前なんじゃないの? |
ゆっくり魔理沙 | いや、 |
ゆっくり魔理沙 | 昔は身分や職業なんかで
住む場所も決められていた時代があったんだ。 |
ゆっくり魔理沙 | 例えば、農民は農村に住んで農業をしなければならず、 |
ゆっくり魔理沙 | 勝手に村を離れたり、農業をやめるということが
許されないといった風にな。 |
ゆっくり霊夢 | それはいやだな。 |
ゆっくり霊夢 | 都会に住んで、お昼時にはオフィス街で財布片手に
ランチ食べに行くようなキラキラOLしたいもん。 |
ゆっくり魔理沙 | 安心してくれ霊夢。 |
ゆっくり魔理沙 | 日本国憲法では個人の尊厳が重視されている。 |
ゆっくり魔理沙 | どこに住むのか、ということは、
個人の生き方にとって、重要な要素なので、 |
ゆっくり魔理沙 | 基本的人権として居住の自由が保障されているわけだ。 |
ゆっくり魔理沙 | 霊夢のように都会に住みたい人もいれば、
静かな田舎に住みたいという人もいるだろうし、 |
ゆっくり魔理沙 | さらに戸建てに住むか、マンションに住むか、
賃貸に住むか、持ち家に住むか、 |
ゆっくり魔理沙 | こういう1つ1つの選択の違いで、全然生き方が
変わってくるだろ? |
ゆっくり霊夢 | 確かに。 |
ゆっくり霊夢 | どれも、討論番組作れそうなくらい考え方が割れてる
テーマだもんね。 |
ゆっくり魔理沙 | そして、居住の自由を認めるなら、
もちろん移転の自由も認めていないと筋が通らない。 |
ゆっくり魔理沙 | 新たに住みたいところができた場合に、
移り住むことができないなら、 |
ゆっくり魔理沙 | 居住の自由も無意味になってしまうからな。 |
ゆっくり霊夢 | そりゃそうだ。 |
ゆっくり霊夢 | 住めるのに行けないじゃ何のための自由だよ? |
ゆっくり霊夢 | でもなるほど。 |
ゆっくり霊夢 | 居住の自由と移転の自由はセットで効果を
発揮する自由なんだね。 |
ゆっくり魔理沙 | その通り。 |
ゆっくり魔理沙 | そして、職業選択の自由も個人の生き方に
大きく関わる。 |
ゆっくり霊夢 | 農業とOLではまったく違った
生き方になるだろうしね。 |
ゆっくり魔理沙 | ちなみに、職業選択の自由は、 |
ゆっくり魔理沙 | 職業を選ぶだけじゃなくて、その選んだ
職業の仕事を実際にする自由の保障も含まれている、 |
ゆっくり魔理沙 | と判例でも言われてる。 |
ゆっくり霊夢 | じゃあOLじゃなくて、私やっぱり医者になる、
いや、弁護士でもいいかな。 |
ゆっくり魔理沙 | まあ、試験に受かれば? |
ゆっくり霊夢 | なんでよ?職業選択の自由は? |
ゆっくり魔理沙 | もちろんあるけど、公共の福祉による制限は受ける。 |
ゆっくり魔理沙 | 人体の知識もないお前が手術なんてしようものなら、
医療事故を量産してしまうだろ。 |
ゆっくり霊夢 | それは間違いなくそう。 |
ゆっくり魔理沙 | 自信もって言うな。 |
ゆっくり魔理沙 | 職業は経済的な活動で、他人の安全や安心をはじめ、
社会全体に影響を与えることになる。 |
ゆっくり魔理沙 | なので、判例では、職業の選択の自由は、思想・良心の
自由や表現の自由といった精神的自由と比べて、 |
ゆっくり魔理沙 | 国による規制の要請がつよいと指摘されている。 |
ゆっくり魔理沙 | さらに、22条1項にわざわざ
『公共の福祉に反しない限り』と入れたのは、 |
ゆっくり魔理沙 | 比較的規制の要請が強いことを強調する趣旨だとも
判例では考えられている。 |
ゆっくり霊夢 | まあ、仕方ないか。 |
ゆっくり魔理沙 | わかってもらえたようでなにより。 |
ゆっくり魔理沙 | さて、憲法22条の2項のほうは何が定めて
あるかというと、 |
ゆっくり魔理沙 | 何人も外国に移住したり、国籍を離脱する自由を
侵されないとしている。 |
ゆっくり霊夢 | 世界を又にかけた移転の自由ってわけね。 |
ゆっくり魔理沙 | 日本側ではそうだけど、行こうとする国の入国許可が
出ないと、もちろん無理だぜ。 |
ゆっくり魔理沙 | なので、この条文で定められているのは、
出国の自由といえるな。 |
ゆっくり魔理沙 | あと、国籍離脱の自由については、 |
ゆっくり魔理沙 | 無国籍になることは認めていないとされる。 |
ゆっくり魔理沙 | 国籍法でも『自己の志望によって外国の国籍を
取得したときは、日本の国籍を失う』としている。 |
ゆっくり霊夢 | 条文では自由は『侵されない』って
書いてあるのに? |
ゆっくり魔理沙 | もちろん、これらの自由も公共の福祉に
よる制限はある。 |
ゆっくり魔理沙 | 判例でもそのように言われているぜ。 |
ゆっくり霊夢 | さすがにそうよね。 |
ゆっくり魔理沙 | じゃあ、ここらで憲法改正草案では
どうなっているのか見ていこうか。 |
ゆっくり霊夢 | 1項は『公共の福祉に反しない限り』
が消えてる? |
ゆっくり魔理沙 | その通り。 |
ゆっくり霊夢 | でも、これって何を狙ってるんだろう? |
ゆっくり霊夢 | むしろ自由が増えて良さそうだけど。 |
ゆっくり魔理沙 | 確かに、制限がされにくくなるということで
自由は広がるが、 |
ゆっくり魔理沙 | なんでもありになって、無茶苦茶な世の中に
なってしまうかもしれない。 |
ゆっくり霊夢 | どういうこと? |
ゆっくり魔理沙 | 居住・移転の自由でいえば、 |
ゆっくり魔理沙 | 例えば、他人の土地が気に入ったからと勝手に家を
建てて住むのがオッケーになってしまうかもしれない。 |
ゆっくり霊夢 | いや、ダメでしょ。犯罪でしょ。
不法侵入かなんかじゃない? |
ゆっくり魔理沙 | 憲法のほうが法律より上なんだから、
むしろこの22条1項を盾に、 |
ゆっくり魔理沙 | 罰する法律のほうを憲法違反として
主張されかねない。 |
ゆっくり霊夢 | そんなバナナ。 |
ゆっくり魔理沙 | 職業選択の自由でいえば、霊夢がさっき知識もないのに
医者になりたいと言っていたみたいに、 |
ゆっくり魔理沙 | 職業に資格を必要とすること自体が、
職業選択の自由に反するとして、 |
ゆっくり魔理沙 | 憲法違反とされるような事態が
起こってしまう可能性がある。 |
ゆっくり霊夢 | 私のさっきの話は冗談だってば。 |
ゆっくり霊夢 | でも、さすがにそんなことには
実際ならないでしょ? |
ゆっくり魔理沙 | 実際そうなってみないと
もちろんわからないが、 |
ゆっくり魔理沙 | 『公共の福祉に反しない限り』という文言が
消えたことで、 |
ゆっくり魔理沙 | さっき挙げたような主張が通る可能性が
ゼロではなくなることは間違いない。 |
ゆっくり霊夢 | そっか。 |
ゆっくり霊夢 | 自由だったらなんでもいいって
わけでもないのね。 |
ゆっくり魔理沙 | そうそう。自由っていっても全部同じじゃないんだ。 |
ゆっくり魔理沙 | 前回伝えたような思想良心の自由や表現の自由のような
精神的な自由は、 |
ゆっくり魔理沙 | 人格の根っこにかかわるし、民主主義の土台だから
制限はすごく慎重にしないといけない。 |
ゆっくり魔理沙 | でも、居住・移転の自由や職業選択の自由みたいな
経済的な自由は、 |
ゆっくり魔理沙 | 精神的自由のような側面は小さい上に、 |
ゆっくり魔理沙 | 社会のルールを整えないと他人の権利を
侵害しやすいから、むしろ制限を必要とする場面も多い。 |
ゆっくり霊夢 | 確かに。 |
ゆっくり霊夢 | 制限がないと、命がいくつあっても
足りなくなるよ。 |
ゆっくり魔理沙 | じゃあ続いて、2項のほうは何か変わったかな? |
ゆっくり霊夢 | 主語が『何人も』から『国民』になってるのと、 |
ゆっくり霊夢 | 自由を『侵されない』から『有する』に
なってるね。 |
ゆっくり魔理沙 | 『有する』の部分は今まで何度も見た
パターンなので説明は省くけど、 |
ゆっくり魔理沙 | 主語が『国民』になっている部分は
気になるところだな。 |
ゆっくり魔理沙 | 可能性として考えられるのは、日本に来た外国人が
自由に日本を出られなくなる可能性だな。 |
ゆっくり霊夢 | どうしてそんなことするの? |
ゆっくり魔理沙 | もしかしたら、人口減少による労働力不足を
補うためだったのかもしれないな。 |
ゆっくり霊夢 | でも今は、そうやって日本に稼ぎに来た
技能実習生が失踪して不法滞在者になって、 |
ゆっくり霊夢 | 犯罪に手を染めるようなニュースを
最近は結構目にするよね? |
ゆっくり魔理沙 | それは、自民党にとっても誤算だったのかもしれない。 |
ゆっくり魔理沙 | ここからは、私の勝手な妄想になるんだけど、 |
ゆっくり魔理沙 | 自民党と経団連、一般社団法人日本経済団体連合会
は持ちつ持たれつでやってきた。 |
ゆっくり魔理沙 | 経団連が政治献金や選挙支援、 |
ゆっくり魔理沙 | 自民党は法人減税や規制緩和といった
具合に、 |
ゆっくり魔理沙 | お互いの利害が一致して
仲のいい関係だと思われる。 |
ゆっくり魔理沙 | そして、経団連は外国人労働者の受け入れを
促進する姿勢を見せている。 |
ゆっくり魔理沙 | おそらく『安い労働力』として経団連の企業の中で
ニーズが高かったんだろう。 |
ゆっくり魔理沙 | ただでさえ人材不足がよく言われてるしな。 |
ゆっくり魔理沙 | そして、自民党はそういう働きに来た外国人が
日本を出られなくなったら、 |
ゆっくり魔理沙 | 経団連のニーズに合う外国人が
確保しやすくなると考えたのかもしれない。 |
ゆっくり魔理沙 | あるいは、先のことはどうでもよくて、 |
ゆっくり魔理沙 | とにかく経団連の意向に沿った
動きをしようと考えていたのかもしれない。 |
ゆっくり霊夢 | そんなの、いくら働きに来てるからって、
無茶苦茶な扱いされたら逃げ出すのが当然じゃない? |
ゆっくり魔理沙 | 知り合いのベトナム人に聞いた話なんだけど、 |
ゆっくり魔理沙 | そもそも、日本に働きにくるために、エージェントに
高いお金を払って日本に来るパターンが多いらしい。 |
ゆっくり魔理沙 | で、日本で適切な対応をしてくれる
企業に就職できたらいいけど、 |
ゆっくり魔理沙 | さっき言ったみたいな安い労働力としてしか
みなしてなくて、 |
ゆっくり魔理沙 | 無茶な働き方を要求される場合もあるようだ。 |
ゆっくり魔理沙 | それに耐えきれず逃げ出す場合もあるけど、 |
ゆっくり魔理沙 | お金がないから国に帰れず、 |
ゆっくり魔理沙 | やむを得ず不法滞在者になって、 |
ゆっくり魔理沙 | 生きるために犯罪でもなんでもして
暮らさざるをえないんじゃないかと。 |
ゆっくり霊夢 | ひどすぎる。 |
ゆっくり魔理沙 | 私が話を聞いた知り合いのベトナム人は
運よくそんなことにはなってないから、 |
ゆっくり魔理沙 | 実態はどうか体験したわけではないけど、 |
ゆっくり魔理沙 | そういう背景があるんじゃないかと
話してくれたな。 |
ゆっくり魔理沙 | もちろん、私は話を聞いたのは
1人だけなので、 |
ゆっくり魔理沙 | どこまで本当かはなんともいえない。 |
ゆっくり魔理沙 | だけど、もし本当だったら、 |
ゆっくり魔理沙 | 憲法改正してないにもかかわらず、
実質自民党の思い通りにはなっているようだな。 |
ゆっくり霊夢 | 不法滞在の外国人を増やす結果にも
なってるけどね。 |
ゆっくり魔理沙 | じゃ憲法に戻って23条いってみよう。 |
ゆっくり魔理沙 | 憲法23条は、 |
ゆっくり魔理沙 | 『学問の自由は、これを保障する』と定めている。 |
ゆっくり霊夢 | う~ん、シンプル。 |
ゆっくり魔理沙 | だけど、学問の自由を保障することは国民を守る上では
大切なことなんだぜ。 |
ゆっくり魔理沙 | 大日本帝国憲法では、ちゃんと明文で
学問の自由が保障されていなかった。 |
ゆっくり魔理沙 | そして、政府に都合の悪い思想や教育は、
治安維持法などで厳しく取り締まられていたんだ。 |
ゆっくり魔理沙 | そうやって、国に都合のいいことだけが国民に
吹き込まれるようになり、結果戦争にまで至った。 |
ゆっくり魔理沙 | 23条は、そうした背景もふまえて
作られたものだともいえる。 |
ゆっくり霊夢 | 以前の失敗を反省したんだね。 |
ゆっくり魔理沙 | そういうこと。 |
ゆっくり魔理沙 | 学問の自由が保障している具体的な内容として、3つ
挙げられている。 |
ゆっくり魔理沙 | それが、学問研究の自由、研究成果発表の自由、
教授の自由だ。 |
ゆっくり魔理沙 | 学問研究の自由は、何をどのように研究するか自由に
決められることをいう。 |
ゆっくり霊夢 | 私も、どうすれば魔理沙が
私に優しくなるか研究しようかな。 |
ゆっくり魔理沙 | いや、優しいだろ。 |
ゆっくり魔理沙 | ってそれは置いておいて、 |
ゆっくり魔理沙 | 研究は自由とはいえども、『人としてどうなの?』って
ことを研究したり、そういうやり方を伴う場合は |
ゆっくり魔理沙 | 制限される場合もある。 |
ゆっくり霊夢 | 例えば? |
ゆっくり魔理沙 | 人体実験したりとか、ヒトの遺伝子操作なんかを研究
したりとか。 |
ゆっくり霊夢 | なるほど、野放しにするとヤバいのは、私でもわかるわ。 |
ゆっくり魔理沙 | で、研究はその成果を発表できてこそ価値があるので、
研究成果の発表が保障されていると考えられる。 |
ゆっくり霊夢 | 自分ひとりで完結してたら自己満足で
終わっちゃうしね。 |
ゆっくり魔理沙 | 人の成果を元にして、新たな研究が進むこともあるしな。 |
ゆっくり魔理沙 | 法律の論文とか見てみろ。 |
ゆっくり魔理沙 | 短めのものでも、ものすごい数の論文
が引用されてたりするぜ。 |
ゆっくり霊夢 | いや、私は遠慮しときます。 |
ゆっくり魔理沙 | そして、教授の自由は大学などの教育機関において、
自らの考えに基づき、 |
ゆっくり魔理沙 | 自由に講義・教育できる自由だ。 |
ゆっくり霊夢 | 自分の出版本の印税を得るために、教科書として使って
授業しても? |
ゆっくり魔理沙 | もちろん自由だろ。 |
ゆっくり魔理沙 | あるあるみたいで、 |
ゆっくり魔理沙 | マネが前に思い出し嘆きしてたことあったわ。 |
ゆっくり魔理沙 | ただし、教授の自由は、小中高の先生には
一定の制限がある。 |
ゆっくり魔理沙 | ちゃんと教えるべきことは教えてくれないとな。 |
ゆっくり霊夢 | 九九を学ぶような段階で、
連立方程式教えられても困るしね。 |
ゆっくり魔理沙 | それはそうなんだけど、 |
ゆっくり魔理沙 | 大学は学問研究・真理探究の中心機関
であるのに対して、 |
ゆっくり魔理沙 | 小中高は、考えるための土台の知識を得る、
あるいは人格形成をする場所だ。 |
ゆっくり魔理沙 | だから、きちんと決められた内容を
教える必要性があるわけ。 |
ゆっくり霊夢 | 大学は大人の場で、それまでは
大人になるための準備の場所ってことね。 |
ゆっくり魔理沙 | それに、 |
ゆっくり魔理沙 | 後に出てくる、憲法26条の教育を受ける権利を侵害する
可能性もあるだろうしな。 |
ゆっくり霊夢 | そういう権利があるのかあ。 |
ゆっくり魔理沙 | ちなみに、今言った学問の自由を守るために、
『大学の自治』が認められている。 |
ゆっくり霊夢 | 大学の自治? |
ゆっくり魔理沙 | 大学の自治とは、 |
ゆっくり魔理沙 | 大学が学問研究・教育を自主的に行うために、
外部からの不当な干渉を排除できる権限のことだ。 |
ゆっくり魔理沙 | 大学の自治は、東大ポポロ事件の判例においても
述べられているぜ。 |
ゆっくり霊夢 | どういうこと? |
ゆっくり魔理沙 | 例えば、国の気に入らないことを研究している教授が
いるとして、 |
ゆっくり魔理沙 | 国が大学の人事にケチつけて、
その教授をクビにしようものなら、 |
ゆっくり魔理沙 | そういう研究をしようとする人が
いなくなってしまうだろ。 |
ゆっくり霊夢 | クビになってしまうのは嫌だもんね。 |
ゆっくり魔理沙 | だから、そうならないように、 |
ゆっくり魔理沙 | 国は大学の人事権に介入できず、
人事は大学の自主的判断によって決められ、 |
ゆっくり魔理沙 | また、大学の施設についてや、学生の管理についても、
ある程度自主的に秩序維持できるようにしよう、 |
ゆっくり魔理沙 | というのが大学の自治だ。 |
ゆっくり霊夢 | なるほど。 |
ゆっくり霊夢 | 学問の自由を直接制限するのは難しいけど、 |
ゆっくり霊夢 | 大学の人事とかにケチつけて
間接的に制限しようとするの防いで、 |
ゆっくり霊夢 | ちゃんと学問の自由を守ろうと
するのが大学の自治なのね。 |
ゆっくり魔理沙 | そうそう。 |
ゆっくり魔理沙 | 教授をクビにしておいて、 |
ゆっくり魔理沙 | 『学問の内容には口出してないじゃん』という
主張を良しとしてしまったら、 |
ゆっくり魔理沙 | 学問の自由なんて簡単に
ふいにできてしまうからな。 |
ゆっくり魔理沙 | ただ、大学の自治が認められると言っても、
大学が治外法権になるってわけじゃなくて、 |
ゆっくり魔理沙 | 公共の福祉による制限はもちろんあるし、 |
ゆっくり魔理沙 | 大学の自治はそもそも学問の自由を
守るものだから、 |
ゆっくり魔理沙 | 学問の自由と関係ないなら、 |
ゆっくり魔理沙 | たとえ干渉といわれそうな行為であっても、
学問の自由や大学の自治を侵すものではない、 |
ゆっくり魔理沙 | とされる可能性がある。 |
ゆっくり霊夢 | 『干渉と言われそうな行為』?例えば? |
ゆっくり魔理沙 | 警察官が大学に立ち入ることとかな。 |
ゆっくり魔理沙 | 東大ポポロ事件判決の補足意見では、単に情報収取の目的
で大学に入ることは大学の自治を侵すとしている。 |
ゆっくり霊夢 | 大学って警察は入っちゃダメなのか。 |
ゆっくり魔理沙 | 何事もなければ、な。 |
ゆっくり魔理沙 | 東大ポポロ事件では、警察官が大学内で
行われた学問とは関係ない政治的内容の演劇に、 |
ゆっくり魔理沙 | 一般客と同じように入場券を買って
入っていたので、 |
ゆっくり魔理沙 | 券を買った時点で入場は許されているし、
演劇も公開の集会とみなされ、 |
ゆっくり魔理沙 | 学問の自由や大学の自治を
侵すものではないと結論づけられた。 |
ゆっくり霊夢 | 大学って自由な雰囲気があるけど、
大学の自治も関係してそうだね。 |
ゆっくり魔理沙 | それはわからないけど、 |
ゆっくり魔理沙 | わりと学食に一般の人が食べにきてたり、 |
ゆっくり魔理沙 | 構内を散歩してたりってことは
あるみたいだぜ。 |
ゆっくり魔理沙 | じゃ、学問の自由はこのあたりにして、
次の条文に進もう。 |
ゆっくり魔理沙 | 憲法24条では、結婚とか家族についての
ことが定められているな。 |
ゆっくり魔理沙 | 1項についてみてみると、 |
ゆっくり魔理沙 | 『婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、
夫婦が同等の権利を有することを基本として、 |
ゆっくり魔理沙 | 相互の協力により、維持されなければならない。』
となっている。 |
ゆっくり霊夢 | え?結婚って当事者2人のことなんだから、 |
ゆっくり霊夢 | 2人の『合意のみ』で成立するのって
当たり前じゃないの? |
ゆっくり魔理沙 | 前にも言ったけど、 |
ゆっくり魔理沙 | 大日本帝国憲法時代の法律では、『家』を重視するため、
『戸主』が強い権限を持っていた。 |
ゆっくり魔理沙 | そして、結婚するためには、戸主の同意が必要と
されていたんだ。 |
ゆっくり霊夢 | そこまで権力持ってたんだ。 |
ゆっくり魔理沙 | 戦後、日本国憲法になり、民法も改正されることで、 |
ゆっくり魔理沙 | 当事者2人の合意のみによって
成立するようになったんだ。 |
ゆっくり霊夢 | これも戦前の反省から生まれた条文なんだね。 |
ゆっくり魔理沙 | 『夫婦が同等の権利を有する』としているのも、
男尊女卑的だった以前をふまえての反省だな。 |
ゆっくり魔理沙 | ちなみに、24条1項の『両性』は男女のことだと
基本的には解釈されているが、 |
ゆっくり魔理沙 | 同性婚まで禁止するもの、とは読み切れないようで、 |
ゆっくり魔理沙 | 地裁などの判決の傾向では、同性婚を認めないのは
憲法14条の法の下の平等に反するなど、 |
ゆっくり魔理沙 | 同性婚を認めようという傾向は
うかがえるな。 |
ゆっくり霊夢 | 今の時代で問題なってるものね。 |
ゆっくり霊夢 | いつか正式に同性婚が
できるようになるのかな。 |
ゆっくり魔理沙 | どうだろうな。 |
ゆっくり魔理沙 | 続いて、24条2項は、挙げられているもろもろのことに
ついて、 |
ゆっくり魔理沙 | 個人の尊厳と両性の本質的平等を踏まえて法律を
定めなければならないとしている。 |
ゆっくり霊夢 | そりゃ家制度がメインだった
民法は変えないといけなかったね。 |
ゆっくり魔理沙 | それだけじゃなく、最近でも民法が憲法違反となって
改正されたぜ。 |
ゆっくり霊夢 | そうなの? |
ゆっくり魔理沙 | ああ。 |
ゆっくり魔理沙 | 平成25年には、法律上の結婚をしていない
親から子がもらえる相続分が、 |
ゆっくり魔理沙 | 結婚をしている親の子の半分となっていたことに
最高裁の違憲判決が出たし、 |
ゆっくり魔理沙 | 平成27年には、女性の再婚禁止期間が長すぎるので、
長すぎる部分は違憲という判決も出た。 |
ゆっくり魔理沙 | そして、これらを定めていた条文は改正された。 |
ゆっくり霊夢 | そうやって憲法は機能してるんだねえ。 |
ゆっくり魔理沙 | ただ、今も話題になっている、夫婦がどちらか一方の氏を
名乗るとする民法750条については合憲とされた。 |
ゆっくり霊夢 | 選択的夫婦別姓にしようとか、するなとか最近話題に
なってたね。 |
ゆっくり霊夢 | でも、夫婦同姓規定はどうして合憲になったの? |
ゆっくり霊夢 | 今の流れでいくと、割と違憲になりそうなのに。 |
ゆっくり魔理沙 | まあ、いろいろ理由は言ってるんだけど、 |
ゆっくり魔理沙 | めちゃくちゃざっくりいうと、 |
ゆっくり魔理沙 | 夫婦どちらの氏にするかは、夫婦の協議によって
自由に決めるわけだし、 |
ゆっくり魔理沙 | 夫婦同姓のほうが、子供にとっても都合がいい。 |
ゆっくり魔理沙 | だから、男女で不平等もないし、 |
ゆっくり魔理沙 | それに加えて氏を変えた方は、通称として、結婚前の氏を
使用することまで許されないわけでもない。 |
ゆっくり魔理沙 | だから、男女で不平等でもないし、大きな問題ないから
合憲、とした。 |
ゆっくり霊夢 | じゃあ、選択的夫婦別姓はダメってこと? |
ゆっくり魔理沙 | いや、この判決はあくまで、夫婦同氏が憲法違反と
いうほど合理性がないとはいえない、としただけで、 |
ゆっくり魔理沙 | 選択的夫婦別姓について否定するもの
ではないから、 |
ゆっくり魔理沙 | 詳しくは国会で議論して法律で決めてね。 |
ゆっくり魔理沙 | というのが判決の最後のほうに書いてある。 |
ゆっくり魔理沙 | ちなみに、判決文には、反対意見や補足意見も比較的
多めに加えられている。 |
ゆっくり魔理沙 | 夫婦の氏をどうするかは、裁判官でもいろんな意見が出る
ほど考え方が分かれるくらいだし、 |
ゆっくり魔理沙 | 慎重な議論が必要なところだと思う。 |
ゆっくり魔理沙 | 個人的には、そんなに焦ってどうの
こうのしなければならないことでもないと思う。 |
ゆっくり霊夢 | 確かに、もっと目の前の生活が楽になるような
減税とかやってほしー。 |
ゆっくり霊夢 | 友達と話してても、『生活がきついなー』って話には
なるけど、 |
ゆっくり霊夢 | 『選択的夫婦別姓が~』なんて話になることないもんね。 |
ゆっくり魔理沙 | それはさておき、 |
ゆっくり霊夢 | 置かれた。 |
ゆっくり魔理沙 | 24条は憲法改正草案において、
大きく変更されている。 |
ゆっくり霊夢 | どうせ24条1項の『両性の合意のみ』の『のみ』
が消されたりしてるんでしょ? |
ゆっくり魔理沙 | 当たり。 |
ゆっくり霊夢 | やった。当たった。 |
ゆっくり霊夢 | ってやっぱり嬉しくないな。 |
ゆっくり霊夢 | これはつまり前の憲法のときみたいに
当事者二人以外の同意が必要になってくるってこと? |
ゆっくり魔理沙 | その可能性もあるし、 |
ゆっくり魔理沙 | 基本は当事者二人の合意によるけど、 |
ゆっくり魔理沙 | それ以外に誰かに強制的に結婚させられる
可能性も出てくるってことだ。 |
ゆっくり霊夢 | なにそれ? |
ゆっくり魔理沙 | 例えば、国が少子化対策かわからないけど
なんらかの理由をつけて、 |
ゆっくり魔理沙 | 『何歳以上で独身なら、
そのような人同士で結婚しなければならない』 |
ゆっくり魔理沙 | みたいに法律で強制させられる可能性も
ありうると思う。 |
ゆっくり霊夢 | そんなことが許されていいの? |
ゆっくり魔理沙 | 結婚を強制する可能性を見据えてか、 |
ゆっくり魔理沙 | 憲法改正草案の24条3項からは、
『配偶者の選択』の文言が削除されているんだ。 |
ゆっくり霊夢 | ほんとだ。 |
ゆっくり霊夢 | それに、並べられている言葉がところどころ
変わってる。 |
ゆっくり魔理沙 | 『住居の選定』という文言も削除されているので、
住む場所も自由に決められないだろうな。 |
ゆっくり霊夢 | でも、憲法改正草案の22条1項では、
居住・移転の自由があるって書いてなかった? |
ゆっくり魔理沙 | 確かに書いてあるが、 |
ゆっくり魔理沙 | もちろん12条の『公益及び公の秩序』
という制限がついてまわるぜ。 |
ゆっくり霊夢 | これじゃ住む場所も仕事も
勝手に決められる時代に逆戻りじゃない? |
ゆっくり魔理沙 | まさにその通りだと思うぜ。 |
ゆっくり魔理沙 | 憲法改正草案24条3項では、さらに『家族、扶養、後見』
そして『親族』という文言が加えられている。 |
ゆっくり魔理沙 | ここから見えてくる狙いが、 |
ゆっくり魔理沙 | 家族の在り方に国が介入し、 |
ゆっくり魔理沙 | 家族の範囲をどんどん広げて、
扶養義務を負わせることにあると思われる。 |
ゆっくり霊夢 | なんですと? |
ゆっくり魔理沙 | 現憲法では、24条は夫婦の話がメインだったはずなのに、 |
ゆっくり魔理沙 | 憲法改正草案では家族全体の話にすり替わっている。 |
ゆっくり魔理沙 | これは例えば、困っている家族がいたら、 |
ゆっくり魔理沙 | その人の『個人の尊厳』を守るために
扶養しなければならない、じゃないと罰則を与える。 |
ゆっくり魔理沙 | という法律が憲法草案を根拠に
正当化されるかもしれない。 |
ゆっくり霊夢 | いやいや、だったら国が保護すれば
いいんじゃないの? |
ゆっくり魔理沙 | 憲法改正草案では、そうさせないように、
実は先手が打ってある。 |
ゆっくり魔理沙 | 24条1項だ。 |
ゆっくり霊夢 | そう言われてみれば、確かに1項分
ずれてるね。 |
ゆっくり霊夢 | 憲法改正草案の24条1項には
何が書かれてるっていうのよ? |
ゆっくり魔理沙 | 家族が互いに助け合わないといけないという
内容になっているんだ。 |
ゆっくり魔理沙 | つまり、家族が互いに助け合わないことは
憲法違反ということになるな。 |
ゆっくり霊夢 | そりゃ家族で助け合えたほうがいいけど、 |
ゆっくり霊夢 | それを強制するのは違うでしょ。 |
ゆっくり霊夢 | ここまで聞いてると、国の負担をできるだけ
減らすための方法として、 |
ゆっくり霊夢 | 家族を利用しているように思えてならないよ。 |
ゆっくり霊夢 | それに、家族を基礎的な単位にするって
どういうこと? |
ゆっくり魔理沙 | これについては自民党のQ&Aに説明が
あるので見てみよう。 |
ゆっくり霊夢 | 国が家族の形に介入する気はないだって? |
ゆっくり魔理沙 | 1項だけだとそういえなくもないかも
しれないけど、 |
ゆっくり魔理沙 | 2項、3項も合わせてみると、
介入する気マンマンだよな。 |
ゆっくり霊夢 | 『個人と家族を対比して考えようとするものではない』
ってどういう意味? |
ゆっくり魔理沙 | 個人より家族を重視するという
ことではない、ということだと思う。 |
ゆっくり霊夢 | でも、憲法改正草案13条では
『人として尊重される』とされてて、 |
ゆっくり霊夢 | 『個人』ではなかったよね。 |
ゆっくり魔理沙 | ああ。 |
ゆっくり魔理沙 | 以前の動画でも言ったが、
一人一人の『個』は軽く見られる可能性がある。 |
ゆっくり霊夢 | 素人感覚だけど、
個人を重視しているなら、 |
ゆっくり霊夢 | ちゃんと『個人』を尊重する
という文言は残すはずだし、 |
ゆっくり霊夢 | 家族が社会の『基礎的単位』
なんて言い方はしないよね? |
ゆっくり魔理沙 | そうだな。 |
ゆっくり魔理沙 | 個人ではなく、家族が社会の最小単位で
あるという風に理解しても不思議じゃないよな。 |
ゆっくり霊夢 | ただ、世界人権宣言でも同じ文言が
使われているのが気になるんだけど。 |
ゆっくり魔理沙 | 確かに、世界人権宣言16条3項では
似たような文言になっているんだけど、 |
ゆっくり魔理沙 | 実際の条文では『集団単位』とされていて、 |
ゆっくり魔理沙 | 自民党の言い分は大事な部分を
隠した主張になっているんだ。 |
ゆっくり霊夢 | ほんとだ。これだと全然意味が違ってくるよ。 |
ゆっくり霊夢 | 家族は集団としての単位ってことだもんね。 |
ゆっくり魔理沙 | それに、少し上を見ると、 |
ゆっくり魔理沙 | 婚姻は当事者の合意のみで成立するとなっているし、 |
ゆっくり魔理沙 | そもそも1条で『すべての人間は、生まれながら
にして自由』となっており、 |
ゆっくり魔理沙 | 世界人権宣言は個人を重視した
内容であるといえる。 |
ゆっくり霊夢 | 結局、自民党の説明は
説明になっていないってことなのね。 |
ゆっくり魔理沙 | ちょっと難しい言葉でそれっぽい説明を
しとけば、 |
ゆっくり魔理沙 | 多くの国民は調べもしないし、
なんとなく納得するだろ、 |
ゆっくり魔理沙 | というちょっと小ばかにしてる
節さえ感じるな。 |
ゆっくり霊夢 | 確かに、『鑑みて』とか『訓示規定』
とか普段使わないような言葉が使われてるもんね。 |
ゆっくり魔理沙 | ちなみに、個人的に腹が立つのは、 |
ゆっくり魔理沙 | 国は国民を『人』としてしか尊重しないが、 |
ゆっくり魔理沙 | 国民に対しては『個人の尊厳』を重視させて
家族内で扶養させようとしている点だ。 |
ゆっくり霊夢 | さっきのQ&Aの説明といい、
ちょっと姑息が過ぎるわね。 |
ゆっくり魔理沙 | では続いて25条に進もう。 |
ゆっくり魔理沙 | 25条1項は、『すべて国民は、健康で文化的な
最低限度の生活を営む権利を有する。』 |
ゆっくり魔理沙 | とあり、 |
ゆっくり魔理沙 | いわゆる生存権を定めた条文とされている。 |
ゆっくり霊夢 | この条文ってもしかして生活保護と関わるんじゃないの? |
ゆっくり魔理沙 | おお、正解だ。 |
ゆっくり魔理沙 | 確かに、生活保護法1条において、『日本国憲法
第二十五条に規定する理念に基き』とあり、 |
ゆっくり魔理沙 | 25条を受けて定められたのがわかる。 |
ゆっくり霊夢 | ちなみに25条1項の『すべて国民』は
日本国民だけのはずだよね? |
ゆっくり霊夢 | 生活保護は外国人も受給してるってニュースで見るけど。 |
ゆっくり魔理沙 | いいところに目を付けたな。 |
ゆっくり魔理沙 | 25条の『国民』は霊夢のいう通り
日本国民に限るとされるのが通説的見解だし、 |
ゆっくり魔理沙 | 生活保護法1条の『国民』も
日本国民を指しているとされている。 |
ゆっくり魔理沙 | 憲法25条のほうは明確な判例はないが、 |
ゆっくり魔理沙 | 生活保護法のほうは
判例でも明言されているぜ。 |
ゆっくり霊夢 | じゃあ、外国人は生活保護が受けられないんじゃ? |
ゆっくり魔理沙 | 本来ならそうだ。 |
ゆっくり霊夢 | じゃあなんで生活保護を受ける外国人がいるの? |
ゆっくり魔理沙 | それはこの判例を読み進めると
わかるんだけど、 |
ゆっくり魔理沙 | 昭和29年に厚生省が各都道府県知事宛に出した、 |
ゆっくり魔理沙 | 『生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置
について』という通知があるからだ。 |
ゆっくり魔理沙 | この通知では、『当分の間、生活に困窮する外国人に
対しては一般国民に対する生活保護の決定実施の |
ゆっくり魔理沙 | 取扱に準じて』『必要と認める保護を行うこと。』
としている。 |
ゆっくり霊夢 | 『当分の間』ってどのくらいの間よ? |
ゆっくり魔理沙 | それはわからないけど、現時点で75年以上
になっている。 |
ゆっくり霊夢 | 長すぎい。 |
ゆっくり霊夢 | 私の思ってる『当分の間』じゃない。 |
ゆっくり魔理沙 | 期間のことはさておき、 |
ゆっくり魔理沙 | 判例では、外国人は厚生省の通知というあくまで行政上
の措置により生活保護を受けられているにすぎず、 |
ゆっくり魔理沙 | 生活保護法に基づく受給権はないから、 |
ゆっくり魔理沙 | 受給権のない外国人による生活保護申請を
拒否しても問題ないとしたんだ。 |
ゆっくり霊夢 | じゃあ、拒否したらいいじゃない? |
ゆっくり霊夢 | どこの自治体もそんなポンポン生活保護出せるほど余裕
ないでしょ? |
ゆっくり魔理沙 | 外国人に生活保護が出やすいのは、
おそらく大きく3つほど理由があると思う。 |
ゆっくり魔理沙 | 一つ目の理由が、扶養調査が難しい点だ。 |
ゆっくり霊夢 | 扶養調査? |
ゆっくり魔理沙 | そもそも生活保護は、あくまで最終手段で、 |
ゆっくり魔理沙 | 他に利用できるものがあるなら、まずはそちらを
優先しようという『補足性』が原則になっていて、 |
ゆっくり魔理沙 | その利用できるものとして、扶養義務者の扶養も
含まれているんだ。 |
ゆっくり霊夢 | まずは親兄弟親戚に頼れってことか。 |
ゆっくり魔理沙 | そうだな。 |
ゆっくり魔理沙 | そのため、保護の申請時に扶養に関する
調査をするわけだけど、 |
ゆっくり魔理沙 | 戸籍もあって、日本に家族がいる可能性が高い
日本人と比べて、 |
ゆっくり魔理沙 | 扶養義務者が外国にいる可能性が高く、
調査もしづらい外国人は、 |
ゆっくり魔理沙 | 扶養を期待できないとされる可能性が
高くなるのが当然だろ? |
ゆっくり霊夢 | 確かに。 |
ゆっくり魔理沙 | そして二つ目の理由が、 |
ゆっくり魔理沙 | 行政のリスク回避だな。 |
ゆっくり霊夢 | リスク? |
ゆっくり魔理沙 | 例えば、実際に裁判になっているように、
申請者や人権団体、弁護士から訴訟されるリスク、 |
ゆっくり魔理沙 | メディアや世論から『人権侵害』と
批判されるリスク、 |
ゆっくり魔理沙 | また、日本は国際人権規約に加入しており、 |
ゆっくり魔理沙 | 相当な生活水準を維持や生活条件の不断の改善に
ついて、すべての者に権利を認めていて、 |
ゆっくり魔理沙 | その権利を実現するために
適当な措置をとらないといけない。 |
ゆっくり魔理沙 | そのため、外国人だからと生活保護を認めないと、
国際的な批判にさらされるリスクもある。 |
ゆっくり魔理沙 | 生活保護を認めなかったり、認めるまで
時間がかかったりして、 |
ゆっくり魔理沙 | 申請者の健康を害してしまったり、
亡くなられたりなんかしたら、 |
ゆっくり魔理沙 | なおさら行政に責任追求の目が
向けられることになる。 |
ゆっくり霊夢 | 思ったよりいろいろあるなあ。 |
ゆっくり魔理沙 | そして、三つ目の理由が、権利ではなく
行政の裁量であることが挙げられる。 |
ゆっくり霊夢 | どういうこと? |
ゆっくり霊夢 | 権利じゃないんだよね? |
ゆっくり霊夢 | だったら、権利であるほうが
保護が出やすいような気がするけど? |
ゆっくり魔理沙 | そう思うよな。 |
ゆっくり魔理沙 | 確かに、日本人の場合は、権利だから、条件さえ
満たせば支給されることになるし、 |
ゆっくり魔理沙 | 条件を満たしていないのに支給して
しまったとしたら、 |
ゆっくり魔理沙 | 不正支給だとして批判の対象に
なってしまう。 |
ゆっくり魔理沙 | 一方、外国人の場合は、権利ではなく
行政の裁量、つまり行政のさじ加減で決められる。 |
ゆっくり魔理沙 | なので、保護の条件を厳密に
満たしていなかったとしても、 |
ゆっくり魔理沙 | さっき言ったようなリスク回避をするために
生活保護を支給する、という判断がありうるし、 |
ゆっくり魔理沙 | 裁量が認められている以上、
それ自体が不正というわけではない。 |
ゆっくり霊夢 | そういうことだったのね。 |
ゆっくり霊夢 | 『権利』が強いって思ってたけど、 |
ゆっくり霊夢 | 生活保護においては、 |
ゆっくり霊夢 | 権利でないからこそ支給される
という逆転現象が起きてしまっているのね。 |
ゆっくり魔理沙 | そういうことだ。 |
ゆっくり魔理沙 | さっき出した判例の原告も、
最高裁の判決が出る3年くらい前には、 |
ゆっくり魔理沙 | 行政の裁量によって、
生活保護の申請が認められたらしい。 |
ゆっくり霊夢 | 日本人より外国人の生活保護のほうが
認められやすいってなんかおかしいよ。 |
ゆっくり魔理沙 | 今の状態は、例の通知により、
『国がそうしたいからそうなった』状況だ。 |
ゆっくり魔理沙 | だから、現状を変えるなら、国が方針を変えなければ
ならないと思う。 |
ゆっくり霊夢 | そのためにも選挙は大事だね。 |
ゆっくり魔理沙 | 話を憲法に戻して、 |
ゆっくり魔理沙 | 25条1項の続きで、『健康で文化的な最低限度の生活を
営む権利』があるとするが、 |
ゆっくり魔理沙 | この『健康で文化的な最低限度の生活』
ってどんな生活なんだと思う? |
ゆっくり霊夢 | 『健康』っていうくらいだから、衣食住は揃ってて、 |
ゆっくり霊夢 | 『文化的』だから、まあ携帯電話くらいは
あってもいい? |
ゆっくり魔理沙 | あえて携帯電話を持たない人もいると思うけど、
その人は文化的な生活ができていないのか? |
ゆっくり霊夢 | そ、そんなことないと思うけど。 |
ゆっくり魔理沙 | 何をもって『健康で文化的な最低限の生活』とするのか
は、人によって違う。 |
ゆっくり霊夢 | 言われてみればあいまいだね。 |
ゆっくり霊夢 | ただ、食べて寝るだけじゃなくて、なんというか、人間
らしく生きる?みたいなニュアンスは感じるよ。 |
ゆっくり魔理沙 | 霊夢が悩むように、この文言はその内容が
あいまいなんだ。 |
ゆっくり魔理沙 | 判例でも、『その具体的内容は、文化の発達、国民経済の
進展に伴つて向上するのはもとより、 |
ゆっくり魔理沙 | 多数の不確定的要素を綜合考量して
はじめて決定できるものである。』として、 |
ゆっくり魔理沙 | ケースバイケースで決めていくしかないと言っている。 |
ゆっくり霊夢 | まあ、そうだろうね。 |
ゆっくり霊夢 | じゃあ、健康で文化的な最低限度の生活をしていない
と思う人が憲法違反を訴えて、 |
ゆっくり霊夢 | その裁判で判断されるってこと? |
ゆっくり魔理沙 | いや、それは違う。 |
ゆっくり魔理沙 | 実は、判例は25条1項について、 |
ゆっくり魔理沙 | 『すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み
得るように国政を運営すべきことを国の責務として |
ゆっくり魔理沙 | 宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して
具体的権利を賦与したものではない』と考えている。 |
ゆっくり魔理沙 | つまり、国の努力すべきこと定めたにすぎず、25条1項を
直接の根拠として訴えることはできないんだ。 |
ゆっくり霊夢 | え?でも25条1項では『権利を有する』って。 |
ゆっくり魔理沙 | 確かに、違和感あるよな。 |
ゆっくり魔理沙 | ただ、判例はそれにも答えてくれていて、具体的権利
としては、25条の趣旨を実現するために制定された |
ゆっくり魔理沙 | 生活保護法によって、はじめて与えられている
と言っているんだ。 |
ゆっくり魔理沙 | だから、訴えるとしたら生活保護法違反を
根拠に訴えることになる。 |
ゆっくり霊夢 | ちゃんと訴えることができてよかったあ。 |
ゆっくり魔理沙 | ただし、健康で文化的な最低限度の生活については、
さっき言ったようにあいまいだし、 |
ゆっくり魔理沙 | 時代などのによって変化するため、 |
ゆっくり魔理沙 | 今でいう厚生労働大臣の裁量に
委ねられている。 |
ゆっくり魔理沙 | そして、めちゃくちゃ低い基準を設定するなど、
めちゃくちゃな裁量をしない限り、 |
ゆっくり魔理沙 | 政治責任が問われることはあっても、
違法かどうかの問題にはならない、 |
ゆっくり魔理沙 | と判例で言われている。 |
ゆっくり霊夢 | ということは、法律を決める国が『健康で文化的な
最低限度の生活』を決めるってこと? |
ゆっくり魔理沙 | そういうことになるな。 |
ゆっくり魔理沙 | ただ、ここで知っておきたいのは、 |
ゆっくり魔理沙 | さっきは25条を根拠に訴えることはできない
って言ったけど、 |
ゆっくり魔理沙 | めちゃくちゃな裁量をした場合、 |
ゆっくり魔理沙 | 憲法25条違反として
裁判の対象になるってことだ。 |
ゆっくり霊夢 | 裁量があるとはいっても、
なんでも許されるってわけじゃないのね。 |
ゆっくり霊夢 | ちょっと安心。 |
ゆっくり魔理沙 | そして、憲法25条2項では、1項で言われている権利を
実現しなければならない義務が、 |
ゆっくり魔理沙 | 国に負わされている。 |
ゆっくり霊夢 | そりゃ『権利あります』と言われても、
国が動いてくれないとどうしようもないもんね。 |
ゆっくり魔理沙 | そうだな。 |
ゆっくり魔理沙 | ただ、堀木訴訟の判例においては、
この25条の内容の解釈について整理されていて、 |
ゆっくり魔理沙 | 25条1項でも、国民が健康で文化的な最低限度の生活
を送れるように国政運営することを |
ゆっくり魔理沙 | 国の責務として宣言したものであるとしている。 |
ゆっくり霊夢 | そうなの? |
ゆっくり霊夢 | じゃあ別に2項なくてもよくなかった? |
ゆっくり霊夢 | どうして2項があるの? |
ゆっくり魔理沙 | 1項だけだと、判例では『国の責務がある』とは
解釈してるものの、 |
ゆっくり魔理沙 | 条文を素直に読めば、権利があると
しているだけなので、 |
ゆっくり魔理沙 | 『はいはい、権利がありますね』と認めるだけで
国が何もしなかったとしても、 |
ゆっくり魔理沙 | 形としては条文を守ったことになって
しまう可能性がある。 |
ゆっくり霊夢 | 『権利認めてます』といえば、
国の責務を果たしたことになっちゃうかもなのか。 |
ゆっくり魔理沙 | そこで、2項で『社会福祉、社会保障及び
公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない』 |
ゆっくり魔理沙 | と具体的に『これしろ』と条文に入れておくことで、 |
ゆっくり魔理沙 | 国が何もしなかったら憲法違反になる
義務を課す、 |
ゆっくり魔理沙 | つまり、1項の権利を実現するために
2項で明確な義務を課すという構造になったわけだな。 |
ゆっくり霊夢 | なるほどねえ。 |
ゆっくり魔理沙 | ここでも、1項のときと同じように、 |
ゆっくり魔理沙 | 25条2項を元にどのような立法をしていくか
については、国の裁量に委ねるけれども、 |
ゆっくり魔理沙 | 明らかに裁量の範囲を超えたりした場合は、
憲法違反を審査するよとしている。 |
ゆっくり霊夢 | 最後の一線は守ってくれるのね。 |
ゆっくり魔理沙 | じゃあ、ここで25条2項を元につくられた
法律をちょっとだけ紹介するな。 |
ゆっくり魔理沙 | 『社会福祉』は生活に困ってる人や弱者へ
支援することだ。 |
ゆっくり魔理沙 | さっき出てきた生活保護法もそうだし、 |
ゆっくり魔理沙 | 児童福祉法や老人福祉法、 |
ゆっくり魔理沙 | 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に
支援するための法律なんかが挙げられるな。 |
ゆっくり霊夢 | 困ったときに助けてくれるわけね。 |
ゆっくり魔理沙 | 『社会保障』は、病気とか何かあったときのために
社会全体でリスクを分担する仕組みだな。 |
ゆっくり魔理沙 | 国民年金法とか国民健康保険法
なんかが挙げられる。 |
ゆっくり霊夢 | 私は年金や国民健康保険の支払いで
むしろ生活が脅かされてるけどね。 |
ゆっくり魔理沙 | 建前としては、みんなで備えるために払う
わけだから、 |
ゆっくり魔理沙 | 仕方ないと言われれば仕方ない
部分もある。 |
ゆっくり魔理沙 | 『公衆衛生』は、国民全体の健康を守る
ための環境を整えることだ。 |
ゆっくり魔理沙 | 食品衛生法や水道法、 |
ゆっくり魔理沙 | 感染症の予防及び感染症の患者に対する
医療に関する法律もそうだな。 |
ゆっくり霊夢 | コロナが2類とか5類とか
言ってたやつね。 |
ゆっくり魔理沙 | じゃあこの25条は憲法改正草案で
どういう風になっているかみてみよう。 |
ゆっくり霊夢 | 憲法で国に負わせている義務が
なくなるとか? |
ゆっくり魔理沙 | さすがにそこまでじゃない。 |
ゆっくり魔理沙 | 意外にも条文はほとんど変更ないぜ。 |
ゆっくり霊夢 | ほんとだ。 |
ゆっくり魔理沙 | ただ、もちろん今まで言ってきたように
『公益及び公の秩序』による制限はありうるし、 |
ゆっくり魔理沙 | 2項では『すべての生活部面』が
『国民生活のあらゆる側面』に変わっている。 |
ゆっくり霊夢 | 『全部』とはいってない、って
言い訳が立ちやすいわけか。 |
ゆっくり魔理沙 | そうだな。 |
ゆっくり魔理沙 | だから、国の責務が小さくなる
だろうことは予想できるな。 |
ゆっくり霊夢 | それでも、今まで見てきてるから、
もう驚くほどではないかな。 |
ゆっくり魔理沙 | そりゃここで終わってくれるならな。 |
ゆっくり霊夢 | え? |
ゆっくり魔理沙 | 実は、憲法改正草案では、
25条の2、3、4と3つの条文が追加されている。 |
ゆっくり魔理沙 | 25条の2は、国民と協力して良好な環境
を保全するように努めなければならないとしている。 |
ゆっくり霊夢 | 『国民と協力』して? |
ゆっくり魔理沙 | 霊夢の恐れているように、 |
ゆっくり魔理沙 | 良好な環境の保全を大義名分に
国が好き勝手やってくる可能性が高いな。 |
ゆっくり魔理沙 | 例えば、新しく道路をひきたいからって、 |
ゆっくり魔理沙 | 道路予定地の持ち主たちは、 |
ゆっくり魔理沙 | 補償もなく強制的に土地を
国に譲渡せざるをえなくなるかもしれない。 |
ゆっくり霊夢 | それじゃあ土地は基本的に国のものとしている
中国とかと変わらなくなるんじゃ。 |
ゆっくり魔理沙 | 実際にこの条文が実現したら、
そういうことなんだろうな。 |
ゆっくり魔理沙 | 25条の3は、国外にいる国民を
緊急時に保護するとしている。 |
ゆっくり霊夢 | それは頼もしくない? |
ゆっくり魔理沙 | 確かに、ありがたいように思えるけど、 |
ゆっくり魔理沙 | ちょっとうがった見方をすれば、 |
ゆっくり魔理沙 | 国外で取材している日本人ジャーナリストを、 |
ゆっくり魔理沙 | 『緊急自体』という名目で身柄を確保したり、
日本に連れ戻したりができるようにしたともとれる。 |
ゆっくり霊夢 | そんなことして何になるのよ。 |
ゆっくり魔理沙 | 国民に国外の情報を入りにくくする、 |
ゆっくり魔理沙 | つまり、国民の知る権利を妨害する
ことができるようになる。 |
ゆっくり魔理沙 | それに、記者の取材の自由も制限
されることになるな。 |
ゆっくり霊夢 | 国外の情報を
シャットアウトする狙いがあるのか。 |
ゆっくり魔理沙 | 22条で外国に移住する自由も
制限される可能性があるような書き方になっているし、 |
ゆっくり魔理沙 | 『公益及び公の秩序』で移転の自由も
制限することはたやすいだろうから、 |
ゆっくり魔理沙 | ジャーナリストが海外に行くことすらも、
事前に防ぐことができる。 |
ゆっくり魔理沙 | 国外の情報はネット頼みになる
だろうな。 |
ゆっくり霊夢 | ネットの情報を受け取るのも制限するように
どこかでなってそうだな。 |
ゆっくり魔理沙 | 25条の4は、犯罪被害者やその家族を
守るような条文になっている。 |
ゆっくり霊夢 | 確かに、犯罪被害者やその家族って
守られてないなあって思うときあるよ。 |
ゆっくり霊夢 | ニュースとかで加害者のほうは名前が出ないのに
被害者のほうだけ名前が出るとかってあるよね。 |
ゆっくり魔理沙 | そうだな。 |
ゆっくり魔理沙 | 特に、加害者が未成年の場合は、 |
ゆっくり魔理沙 | 改正を重ねて厳しくなってきたとはいえ、 |
ゆっくり魔理沙 | 家裁までは報道が規制されるしな。 |
ゆっくり霊夢 | だったら25条の4は良い条文じゃない? |
ゆっくり魔理沙 | うーん。 |
ゆっくり魔理沙 | そう思うには気になるところがある。 |
ゆっくり魔理沙 | ひとつは犯罪加害者の家族の人権は
気にしなくていいのかということ。 |
ゆっくり魔理沙 | たまたま家族が犯罪者になったために、
人生を狂わされた人って多いと思う。 |
ゆっくり霊夢 | 身内が犯罪者だっただけで、
本人は何も悪いことしてないのにね。 |
ゆっくり魔理沙 | それに、条文の主役である被害者や被害者家族に
ついても、 |
ゆっくり魔理沙 | 人権や処遇に『配慮』するだけで、 |
ゆっくり魔理沙 | 具体的に法律などで守らなければ
ならないとしたわけではない。 |
ゆっくり霊夢 | 確かに。 |
ゆっくり霊夢 | もっと本気で守る気があるなら、
それくらいしても良さそうなのにね。 |
ゆっくり魔理沙 | 私にはどうも、やってる感を出すために
定めた条文という気がしてならない。 |
ゆっくり霊夢 | そもそも憲法改正草案からは
積極的に人権を守ろう |
ゆっくり霊夢 | という気持ちは感じられないし、 |
ゆっくり霊夢 | 条文をつくることで配慮してる感だそう
としているのは否定できないね。 |
ゆっくり魔理沙 | とまあ、今回はこのへんにしておくか。 |
ゆっくり霊夢 | 外国人の生活保護が出やすいのは、 |
ゆっくり霊夢 | 最近の政権の方針
みたいに思ってたけど、 |
ゆっくり霊夢 | かなり昔からそうなる原因が
存在したことに驚いたわ。 |
ゆっくり魔理沙 | 調べてみないとわからないことって多いよな。 |
ゆっくり魔理沙 | 次回以降もしっかり解説していくので
楽しみに待っててくれよな。 |
ゆっくり霊夢 | 最後までご視聴ありがとうございました。 |
ゆっくり魔理沙 | それではまた次回! |
ゆっくり霊夢 | それではまた次回! |
編集後記
結局、前回の動画から1か月くらいかかっちゃいました。
もともと台本で作っていた言い回しなんかが納得できなかったり、判例を読み直しているうちに、自分の理解が間違っていたり抜けていることに気づいたりと、
作っているうちに結構な修正をしてしまうからです。
その分、内容としては濃いものができあがっていると、自分では思います(笑)
相変わらず、憲法関連の動画は伸び悩んでますが、誰が言うかも大事なんだろうなと思います。
自分みたいな素人が、しかもゆっくりを使って解説したところで信ぴょう性がないというか、「軽く」見られるのかもしれません。
ですが、専門家たちはもっと細かいところを精査していくわけで、界隈の人たちには常識なことは、特に説明もされず当然の顔をして論文などに書かれていることも多い。
素人だからこそ、そういう専門用語的なものもかみ砕いて伝えられる部分があるんじゃないかと思ってます。
そろそろ台本できあがっている部分もわずかになってきてるので、台本の作成に今後追われるようになるかもしれません。
そうなったらもっと時間がかかってしまうかも(泣)
ただでさえ貧乏暇なしなのに(笑)

サムネイルは生活保護の部分をクローズアップしました。
今回は「なぜ外国人の生活保護が通りやすいのか?」
という自分が前々から思っていた疑問に答えられる内容になっており、
調べながら自分でも納得してしまいました。
「権利だからよし」
とするのも、結局実際運用されてみないとわからないものですね。
人権部分も内容がかさむところはだいたい通りすぎたと思うので、少しはスピードアップしたいところです。